薬王堂気まぐれ通信使bT65   2010・3・18
Yakuoudo Capricious Communications Satellite

寒さのピークもようやく過ぎたようです。
私は仕事が終わると公園を1時間ほど歩くことがあります。
アセビある場所まで来ると甘い香りがしてきました。
白い花が浮き上がります。

アセビ  ツツジ科  アセビ属

漢名を馬酔木(ばすいぼく)と書きます。
馬や牛が葉を食べると酔ったようにふらつくことからの名前です。
実際、牛や馬、シカなどは食べないようです。
ただ山採りの飼料にアセビの葉が混じり食べてしまうことはあったようです。
有毒なアセビトキシンが含まれて中毒しますと嘔吐・下痢・痙攣・麻痺がおこり、ひどくなると呼吸ができなくなるようです。

昭和54年の今頃、東京から帰り最初に描いたのがアセビの画でした。
しばらく絵筆から離れていて自然に目を向け始めたきっかけがこの画でした。
あれから30年・・・若い時のほうが感性が豊かでしたね。

アセビの花をじっくり見てみましょう。
花は下向きに咲いていますので筒状の内部はわかりません。
下から覗いてみましょう。


合弁花の花冠の先には直系3ミリほどの穴が開いています。
虫がここから入り込んで受粉を助けているのでしょう。
大きさから入れる虫は限られます。
雌しべの先に当る緑色の柱頭が光っています。
その奥には花粉をつけた雄しべが見えます。
花粉を包む葯の背方向には赤い刺のようなものがたくさん見えました。
花の構造を見てみるために花冠(合弁花部位)をやぶって中を覗いてみました


上から柱頭、
それを支える花柱、
そして葯のある雄しべが見えます。
葯を割るように中から白い花粉が見えました。
大きな葯の塊が5個、
その下に挟まれたような葯が5個あるようです。
合計10個の葯があるようです。
葯は2つの半葯が合わさって成り立っています。
それぞれの半葯から一本の刺状突起が伸びています。
雄しべは10本ですから刺状突起は合計20本あるわけです。
刺状突起は虫の侵入に合わせ振動し、花粉の納まっている葯室を開裂し、花粉が侵入者に付着しやすいよう仕組まれているようです。
合弁花は5枚の花びらが接合して形成されているのでしょう、萼片が5枚あります。
花冠の底にキラリと光るのは蜜でしょう。
この蜜を求めて花の奥へ侵入した虫は半葯から伸びる突起に触れ身体にたくさんの花粉を付けることになります。
蜜を吸って次の花に移動した時に花粉を別の花の雌しべ柱頭に付けて受粉を手助けするという・・・誰が考えたのでしょうか?
我々の祖先が現れるずっと前から昆虫と顕花植物との共生関係は有ったようです。

※花の構造用語は「石川の植物」さんのHPから引用させてもらいました。
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