薬王堂気まぐれ通信使bT55  2010・1・5
Yakuoudo Capricious Communications Satellite

明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い申し上げます。

昨年末、ヒメイタビの実を2個見つけました
かなり高い場所にありましたが枯れた竹を利用して採取することに成功しました。
家に持ち帰り割ってみます。


簡単に実の中を観察するつもりでしたが、この植物の生態は簡単でないことに気がつきます。

クワ科(Moraceae) イチジク属(Ficus) 雌雄異株 (稀に雌雄同株)

日本に自生するイチジク属でつる性のものは3つありました。

オオイタビ

イタビカズラ

ヒメイタビ

これらはイチジク(無花実)の実と同じく花が花のうという塊の中に咲くため隠頭花序(イチジク型花序)のグループとされています。
オオイタビとヒメイタビの花のうを比較してみました。
雄しべと雌しべが単一で咲き寄生バチ(イチジクコバチ類)と共生関係にあると言われます。
イチジクコバチ類は各植物に特定されたコバチが共生するらしい!
今回、ヒメイタビを割ってみて観察したコバチをヒメイタビコバチと断定し話を進めてみましょう。

何気なく割ったヒメイタビ、冷蔵庫に二日ほど入れていてもう一度観察するとなんだか黒いものが見えます。
老眼になりましたので近くが見えません。
それでも黒いものが少し動いたことに興味を覚えます。
小さな針を使い物体をほじくりだしてみます。


物体は硬い植物性の殻に包まれてポロリと出てきました。
この殻が虫えい花と呼ばれるカプセルだと後で気がつきます。
実はヒメイタビの雄株に出来る雄花のうであって中に虫えい花と雄花がある!
その虫えい花の中に丸まった黒いコバチ(ヒメイタビコバチ)が入っていたというわけです。
イチジク属 ヒメイタビの仮説(自説!)を図式化してみましたので載せてみましょう。



自説なので間違いがあるかもしれませんがネットで教えてもらったことや朝日百科・植物の世界(8巻8−141〜144)を参考に画いてみました。

そこにはこんな記述がありました。

イチジク Ficus caricaは、アラビア半島南部が原産地とされる落葉小高木で、高さ5メートルになる。雄株と雌株があり、日本に導入されているイチジクはすべて雌株で、受粉しなくても花嚢が熟す品種だが、ヨーロッパで栽培される品種のなかには、雄株から受粉を必要とするものがある。雌株は雌花だけを花嚢内に咲かせるが、雄株は雄花と雌花の両方を咲かせる。雄株の花嚢内に咲く雌花は、虫えい花と呼ばれ、普通は種子にならないが、イチジクの花粉を運ぶ唯一の昆虫であるイチジクコバチの幼虫の餌となる。花嚢の先端には数多くの鱗片でおおわれた小さな穴があり、虫えい花が開花しているときは鱗片が少しゆるむ。このとき、イチジクコバチの雌は花嚢内部に潜り込み、送粉と同時に虫えい花の花柱の先端から産卵管を差し込んで、子房の中に産卵する。一匹の幼虫は1個の虫えい花の子房を食べて蛹(さなぎ)にあり、羽化後に花のうの中で交尾を行い、雌だけが花のうの外に出ていく。このとき、花のうの中では雄花が開花しており、花粉がイチジクコバチの雌の体について次の花嚢へと運ばれる。以下云云・・・ (朝日百科・植物の世界から引用)

なんと・・・複雑です。

割れた虫えい花のカプセルからは羽のあるヒメイタビコバチが出てきました。


虫えい花のカプセルから羽のあるコバチが出現!


蛍光灯下で温まるにしたがって身体が伸びてきました。
部分を拡大してみましょう。
デジカメで撮影できる最大アップでも載せてみます。


蛍光灯の光の温度に動きが出てくる



羽がある!
前肢体側が膨らんでいる
複眼が光って触角が結構長い!
尻部には刺のようなものがない(雄か?)!
そんなことが分かります。

乳液の出る花のうを見ていますと虫えい花の一つに幼虫のようなものが見えます。
これも拡大してみます。
イモムシのような幼虫に見えます。


幼虫もいれば,すでに蛹から成虫に羽化したものまで虫えい花の中にはいるというわけです。
雄花のうの雄花(雄しべ)は未だ成熟はしてなく開口部は鱗片でしっかり閉ざされていました。
虫のいない虫えい花のカプセル内はねっとりとした乳白色の蜂蜜のようなものも見えます。
一つの雄花のうにある虫えい花の数は約200個、数えてみました。

まだまだこの植物の不思議はあるでしょうが私が観察し想像した箇所をネットで公表してみました。
何かお気づきの点がありましたらお知らせくださいね。
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