薬王堂気まぐれ通信使bT21  2009・4・19
Yakuoudo Capricious Communications Satellite

19日の日曜日、広島市の宇品地区に行ってみます。
ここにはサトイモ科・テンナンショウ属のウラシマソウに似た植物があります。
正式名の判別が難しい植物ですが自分なりに考証してみました。
先ず全体の様子を紹介してみましょう。



葉は丁度、鳥が羽を広げたような形から鳥趾(し)状とか鳥足状と表現する図鑑があります。
ここで観察されたテンナンショウ属植物の各名称を確認してみましょう。

花にあたる部分は仏炎苞という器官の中にあります。
形(舷部)が仏さんの後背にある仏炎に似ている事からこの名前が付けられたようです。
また付属体の先が細くなって糸のようになる事から浦島太郎の釣竿から伸びる釣り糸に見立てウラシマソウの名前を付けられた!のでしょう。
その仏炎苞を見てみます。

上の二つの仏炎苞を見て何か気がつくことはありませんか?
私は二つ並んだ仏炎苞に違いを見つけました。
それは苞の着付方に右前左前があることでした。
洋服では男性は右前、女性は左前の閉じ方ですがこの植物にもその違いがあるようです。
また正式な植物名が分かりませんでした。
近縁植物の特徴を図鑑で調べてみました。

平凡社・日本の野生植物にはこう書いてあります。

ヒメウラシマソウ

舷部の内面にT字形の白斑がある。

ウラシマソウ

舷部に白斑は無い。付属体下部のふくれた部分は平滑で、ふつう紫褐色。

ナンゴクウラシマソウ

舷部に白斑は無い。付属体下部のふくれた部分に密にしわがあり、淡黄色。

保育社・原色日本植物図鑑では、


ヒメウラシマソウ

仏炎苞・・内面に白色のT字状の白斑がある。

ウラシマソウ

花群の上は太くなり、その上は苞とともに曲がり、それから先は半巻して直立し・・・

ナンゴクウラシマソウ

花群の上は太くなり、その上部は苞につれて前方に曲がるが、そのあたりは皺がが多く、・・・

西日本新聞社・九州の野の花では、

ナンゴクウラシマソウ

花筒内の付属体下部(普通淡黄白色)の太い部分に小じわがあり、時に角状の突起がつく。

中国新聞社・広島県植物誌では、

ナンゴクウラシマソウ

花序の付属体のしわが弱く、ウラシマソウに近い。

ウラシマソウ

花序の付属体の基部は平滑である。広島県には少ない。

その他の図鑑も見ましたが概ね同じ、

という事で、ここの個体の特徴は、

@、舷部に白斑があるものがある。

A、付属体下部のふくれた部分は平滑でしわがない。


普通、この辺りのものはナンゴクウラシマソウと呼称されています。
しかし一大特色であるしわ!が全くありません。
付属体下部の縦しわがその特徴とする説も、初期には見られず役目を終えて直立してきた付属体下部には縦しわが現れ決定的ではありません。

広島県植物誌の「ウラシマソウに近いナンゴクウラシマソウ!」なのか?それとも白斑のあるヒメウラシマソウがここに在るのか?結果は分からず仕舞いです。
でも問題意識を持ったということが大切なんでしょうね。
その花の姿を少し見てみましょう。

この植物は雌雄異株ですがここでは断然、雄花が多く見れました
雌花は見つけることが出来ませんでした。
雌株を見つけるには仏炎苞を一つづつ開かなければいけないからです。
まだ受粉の最中ですから力ずくで開裂するのはよくないことです。
何時かまた雌雄花の比率を調べてみましょう。
それでもそっと中を覗いてみました(くせかな?)
興味深いことですが雄花ある仏炎苞最下部には小さな穴が空いているということ!

これは雄花に引かれて仏炎苞に飛び込んだ虫(キノコバエと言われています)が花粉を付けて下の穴から這い出るためのものと言われています。
雌花ではこの孔が小さく虫が這い出ることが出来ないそうです。
花粉を付けた虫が雌花のある仏炎苞に入ると下の出口が狭いので中で暴れ、柱頭に花粉を受粉させやすくなっているらしい・・・
おそろしや!仏炎苞のたくらみがあるんですね!
もしかして右前、左前の着方にも昆虫を意識した罠が有るのかもしれません。
では何故、ウラシマソウの仲間には糸のような付属体があるのでしょうか?

この糸はくねくねしながら結局、地上に接していたり近くの植物に触れています。
糸の上を這う虫を見ました。
蟻でした。
受粉を助ける虫はキノコバエと書かれていますがウラシマソウに限って蟻も受粉に係わっているように思えます。
昆虫を狙ってクモが糸状付属体に身を潜めていました。
糸状付属体の無いマムシグサの仏炎苞では時々クモが糸を張っている事があります。

瀬戸内海は春、波静かな内海に親子連れがいました。
小さな貝や海草を採取していましたね〜!
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