薬王堂気まぐれ通信使��317　　2005･9･23 Yakuoudo Capricious Communications Satellite

秋分の日、広島県と薬剤師会が主催し広島漢方研究会が協力する『薬草に親しむ会』に出席しました。
何しにか？って･･･
そんなに能力は無いんですが広島漢方研究会理事長の肩書きをもらっていますので説明する先生方の末席に並ばせてもらいます。
広大医学部の大学関係者や教員、元教員の方々と私を含め八組の班で構成されます。
場所は三原市・佛通寺(ぶっつうじ)です。
この寺は1400年頃に建てられた臨済宗の禅寺だそうです。
この地を支配した小早川氏の勢力で一時、大きくなりました。
今は旺盛を極めた往時の面影はありませんが、多くの信者が訪れるお寺です。
しかし今でも道程は狭く入り組んでいて、かつて多くの修行僧で賑わった場所だったとは考えられません。
本坊前の参道は綺麗に掃除されていました。

参道↑

道から本坊に通じる木製の橋には屋根がついています。
このような屋根付き橋が二本架かっていました。
橋を渡って山門をくぐり本殿に進みますと正面に『宝堂』という古い二階建ての建物に突き当たります。
寺の周りに人の営みが行われたであろう痕跡が残っていました。

先ずヒガンバナが多いこと、
ヒガンバナは諸説があって分かりにくい植物です。
講師の先生によると最近この植物は減っているそうです。
それは最近の稲作整備によりヒガンバナの植わっていた畦が少なくなった為だと言われています。
根をすり潰して毒性のある上澄みを除き沈殿したデンプンだけを飢饉時に食したらしいとも言われます。
まさか佛通寺で飢饉植物として使われたとは考えられませんが、この地で民間的に使われるヒガンバナの医療法によるものかも知れません。
それはヒガンバナの根をすり潰して足裏に貼り膝や下半身の浮腫みを取ることが出来るからです。
完璧な治療効果は認められませんがそこそこに効果がありますので今でも利用されています。
但し指紋の無い皮膚に当てますと水膨れを起こしますので注意してください。
そうそう、ヒガンバナの染色体は3倍体で子孫の出来ない株だそうです。
それでも一万本に一本くらいの割で種の出来るものがあるそうです。
かつて万年青年が持参したヒガンバナの種を撮影させてもらったことがあります。
これも発芽率がめっぽう悪いと聞きました。

それとサンショウが川のそばに植わっていたこと！
よく見ますと棘のないアサクラザンショウの株でした。
これは僧侶の食膳に添えられたものと考えられます。
サンショウは棘が互生するイヌザンショウ、棘の対生するサンショウ、それに変異で棘が無くなったアサクラザンショウがあります。
ミカン科の植物の特徴として果皮に油室が見えます。
葉にもこの油室があり、お寿司に乗せるときには葉を手のひらで強くたたいて香気を出します。
この果皮を山椒といい、少し熱で炒って作用を弱めてから薬用にします。
作用は消化器官の蠕動をよくすること、漢方薬では薬用人参や生姜を蒸したものと一緒に大建中湯に配剤されます。
画像の黒い実のようなものは椒目(しょくもく)と言いまして別の用途で薬用にされることがあります。

その他に境内の近くに大きなムクノキの樹があったこと！
ここにあるのは自然のなせる業と言えばそれまでですが寺社では金物の掃除が頻繁に行われます。
香炉だとか天蓋の一部だとか鐘だとか、金属で出来た部分をさびないように磨くことは修行の一つでもあったはずです。
このムクノキは現代の紙やすりで言えば千番以上の砥の代わりをしてきました。
昔の僧はムクノキの葉を使って掃除をしたことでしょう。
ムクノキとは剥くの樹でもあるのです。
適当な金属が無かったのですが我が家で真鋳と銅の表面を磨いてみました。
そうそう、ムクノキの樹肌とエノキの樹肌とを画像で比較してみましょう。
ムクノキは縦にすじ模様が入っていますがエノキはゾウの肌のようになります。


そのほかにも色々な植物が見られました。
イヌマキに着生するアオネカズラ
谷間に咲くカリガネソウなどは目を引きましたね。
皆様も一度、佛通寺を訪れてみてください。

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