薬王堂気まぐれ通信使№768  2017-4-29
Yakuoudo Capricious Communications Satellite

4月29日のゴールデンウイーク初日、みくまりの森サポートクラブに依頼され「みくまり峡の植物」と題して講演をしてきました。
みくまりの森サポートクラブとは府中町を流れる榎川の源流域に位置する水分峡(みくまりきょう)をきれいにしよう!と活動するボランティアのグループです。
今回は創設10周年を祝う総会での記念行事として町の施設=福寿館でお話をさせていただきました。



水分峡にはずいぶん昔から行っていた記憶があります。
今から60年前は水分神社に到着するまで竹藪をかき分けて進むような状態でした。
その後、神社の下にある広場に焼き肉屋が開店し多くの人が出入りするようになります。
物珍しさもあり何度か行った記憶があります。
25年くらい前に焼き肉屋は閉店し空地は墓地となって今に至っています。
10年前に水分峡の荒れた状態を憂い有志が集まりボランティア活動を始められたそうです。
道を整備し、枯れ木を除き、林の清掃、植林の枝打ちや管理といった地道な活動をした結果、今では誰もが楽しめる憩いの場となっています。
サポートクラブで活動されてきた皆様には感謝しなければなりません。

ということで私の出来ることは水分峡にある植物の説明ですが、あまりにも多いために「薬草」に関連する植物に絞ってお話しすることにしました。



サポートクラブ総会が終了し宮原会長岡野副町長の挨拶に続き午前11時過ぎから私の話となりました。
まずはよく見られるアケビに関して・・
アケビは茎を木通(モクツウ)として漢方薬の原料にします。
水分峡で見られるアケビの種類は3種類、小葉の五枚あるアケビ、小葉が3枚で緩い鋸歯のあるミツバアケビ、冬でも葉が落ちないムベの三種類です。
いずれも薬用にしますが細い茎ながら枝木に絡まり5~6m上まで水分を運び生育することから利尿剤として利用されていること、
続けてイヌザンショウ、イノコズチ、オオバコと升順に話を進めました。
水分峡で見られる珍しい植物としてサンヨウアオイがあることを話します。


サンヨウアオイ


ウマノスズクサ科のこの植物は細辛(ウスバサイシン)の代用薬として土細辛という名で扱わたことがあります。
サンヨウアオイはギフチョウの食草でもありかつてはこの一帯、ギフチョウの繁殖地であったことを話します。
この種類の花は地面すれすれに咲くために目立たないこと、サンヨウアオイはオシベが6本あること、ガク筒はくびれて花は下向きに咲くこと、生育域を広げるのに時間がかかることなどを話します。
クズは根を葛根として薬用にしていること、葛根湯の構成生薬であることなどを話します。
スイカズラは黄色と白色の花があるため金銀花として利用されていること、
ドクダミは皆さんもよく知るところの毒出しの民間薬として利用されていること、
ネムノキは合歓樹と呼ばれ花や樹皮が鎮静の目的で用いられること、
ヤマノイモは山薬として八味丸に用いられるけれど現実は栽培されたナガイモが用いられていること、
ヤブニッケイはニッケイ(肉桂・桂皮)に近いクスノキ科の樹木でシナモンの香りがすること、
ヨモギは有名な薬草で艾葉として止血を目的に利用されることなどを話しました。
講演前に水分峡の管理人の許可を得て採集しておきましたので実際に手に取っていただきながら聴いていただきました。
その他にも今花がきれいなヤマフジのことを話します。
房の短いヤマフジは右巻きで房の長いノダフジは左巻きのことを話します。
右巻きと左巻きはどのように判断するのかということを問います。
植物界で有名な牧野富太郎先生はヤマフジを左巻きと定義されています。
しかし現在、ヤマフジは右巻き、右巻きとは国際基準でネジ釘のらせん状の形態をさします。


右巻き螺旋


皆さん、ドライバーの回転方向を想像されて理解していただけたようです。
水分峡には府中町の町の花、ヤブツバキが花盛りです。
またオシベが五本のヤマツツジ(コバノミツバツツジはオシベが10本)が今が盛りと咲いています。
その他にもエゴノキ(魚毒として利用)、赤い実がきれいなアオハダ、新芽の美味しいコシアブラ、新芽をカッポンと呼んで子供が食べるイタドリ、キャンプ場ちかくにあるアケボノソウ、茎が中空で白い花がこれから咲くウツギ、葉にある粘液のついた突起で虫を捕るモウセンゴケ、じょうぼめしと呼んで米飯のかさ増しに使ったリョウブ、江戸時代に淋病や性病の薬としてもてはやされたサルトリイバラ、秋には真っ赤な実をつけるタマミズキなど様々な植物があります。
5~6年前にモリアオガエルの卵塊があることに気が付きました。
アセビの枝にもありましたがかなり高い松の木の枝先にも産み付けられていました。


松の枝先に産み付けられたモリアオガエルの卵塊(2012年6月21日)


下の水たまりではイモリモリアオガエルのオタマジャクシが落ちてくるのを待ち構えています。
水源から流れ出る水は水分峡を通り扇状地を形成した下流域に出て榎川を本流として瀬戸内海に注ぎます。
昔の榎川は整備されていませんでしたが流域にはいろいろな生物の生息域でもありました。
オオサンショウウオ、大きなスッポンウナギナマズイシガメクサガメジムグリシマヘビ(黒化型)トカゲの仲間、最近では外来のヌートリアが住処を作っています。
蝶や昆虫ではキチョウヒメウラジロジャノメオオムラサキトモエガハンミョウマイマイカブリセンチコガネムカデマユタテアカネなどなど・・
大型動物ではシカイノシシが住んでいます。
河川を整備するのもいいことですが昔から生育してきた生き物たちの聖域でもありますからのり面や川底を平坦なコンクリにしないほうがいいと思います。
自然環境を十分に考慮した豊かな町であり続けるように役場の方々の協力を得ながら後世に伝承できれば幸いです。
最後に佐藤町長の挨拶で締めくくり懇親会へと移りました。


町長・副町長がそろい懇親会に入ります!


関係者の皆様、本日は十周年記念総会おめでとうございます。
お手伝いいただいた府中町役場関係者皆様ありがとうございました
※オオサンショウウオは千代田町、モリアオガエルは佐伯町で撮影した画像を使用しました。その他はすべて水分峡で撮影した私の画像を使用しています。
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