薬王堂気まぐれ通信使№725  2014-12-14
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12月14日の朝、広島市の宇品地区に行ってみます。
ここにはツチトリモチがあります。


広島県ではここにしか生育しないツチトリモチ科の植物ですが遺伝子からの分析によるAPG分類体系では科名分類未確定の双子葉植物とされています。
日本で見られるツチトリモチの種類に、ツチトリモチ・キレイツチトリモチ・ミヤマツチトリモチ・ヤクシマツチトリモチ・リュウキュウツチトリモチがありますが雌雄異株で単為生殖をするツチトリモチは変り種と言えるでしょう。
つまり雌株しか確認されていない珍しい植物です。
広島県の絶滅危惧種Ⅱ類にあたり、ネットで発表することは専門家からの批判を受けることとなるでしょう。
種を守ることの重要性を知らない訳では有りませんが貴重な植物を知る事で守られることもあると考え記述してみます。
海岸に近い山中では数箇所で自生が確認できます。
丁度、カラオケ用の赤いマイクに似ています。
年末に5センチ大の赤い花塊(雌花序)をのぞかせます。


ハイノキ科のクロキなどの根に寄生します。
根茎は肥大し2ミリほどの表皮を剥がしてたたくと粘りの有る鳥もちを作ることが出来ます。
足蹴されたツチトリモチが一つ転がっていましたので持ち帰り観察しました。
赤いマイクの部分、花序を切ってみましょう
赤い部分は棍体(コンタイ)と呼ばれる細胞の塊りが表面を覆っています。
棍体の下には黄色の部分があってそこが花(雌花)のあるところ。
その下には水分を含んだスポンジ状の部分があります。
雌花の雌しべ(柱頭)と思われる部分を拡大してみました。


中国ではこの植物を「葛蕈=カツジン・カツシン・中薬大辞典」として薬用植物としています。
何時の時代からあったのでしょうか?
明の時代、西暦1515年に李時珍が本草綱目を著します。
その中(巻二十八菜部)に「葛花菜」とあるのがツチトリモチらしい。
こう記述されています

葛花菜 綱目   
〔釋名〕葛乳・〔時珍曰〕諸名山皆有之。惟太和山采取・云乃葛之精華也。秋霜浮空。如芝菌涌生地上。其色赤脃・蓋蕈類也。
〔気味〕苦甘・無毒。
〔主治〕醒酒。治酒積。時珍。○太和志。


葛花菜とはツチトリモチ 本草綱目
釋名という本には葛乳とある。
李時珍はこう言う、諸々の名山にはツチトリモチが有る。ただ太和(人の名前=太和志)が言うには山で採取したものを、葛(クズ)の精華(花)と言う。秋の霜の頃に空に浮くように、芝(きのこの一種)の菌のように地上に涌いて生じる。其の色は赤く脃(はかない)です。蓋し蕈(菌類・きのこ)の種類でしょう。
気味(気質と味)苦く甘い。毒は無い。
主治(効能効果)は酔いをさます。酒による害を治す。李時珍も太和志も同じ意見です。

というような解釈になるかな!
近くにはイズセンリョウが実をつけ海岸にはセトノジギクが花を咲かせていました。

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