薬王堂気まぐれ通信使№724  2014-12-5
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11月23日から24日にかけて私が理事長をつとめる社団法人・日本漢方交流会の全国総会が京都で行われました
日本漢方交流会とは薬剤師を中心とした漢方研究団体で年に一度、全国大会を行いますが今年は47回目、会場を京都薬科大学として京都大会を開催しました。
概略を説明しますと開局薬剤師は薬局製剤という医薬品を製造し販売することが可能です。
薬局を開設し、医薬品製造許可及び医薬品販売許可を取得すれば決められた医薬品を製造販売することが出来ます。
薬局製剤とは消毒薬として使われるマーキュロクローム液や便秘薬・解熱鎮痛薬・各種軟膏類など、及び漢方薬212処方を含む394種類の医薬品を指します。
私は若い頃(小学生頃より)から漢方薬を医療活動に役立てたいと思ってきました。
日本漢方交流会は薬剤師だけでなく医師や登録販売者、鍼灸師といった薬系漢方家により会長・副理事長・理事長など330人の会員で構成されています。
今回の京都大会、400名以上の参加者が集い会場は入りきれないほどの盛況振りでした。
テーマは「薬局製剤212処方の運用について」でした。
漢方薬に健康保険が適用されるようになって35年、今では85パーセント以上の医師が漢方薬(エキス漢方)を処方する時代にもなりました。
薬剤師が扱う漢方薬(薬局製剤)は歴史は古いのですが健康保険の適用は無く実費支払のために利用される方はそれほど多くは無いのが現状です。
薬剤師は法律で認められている漢方212処方をいかに上手に使うか!また、漢方薬に組み込まれた生薬をいかに有効なものにするか!
漢方薬は口に入るものですから食事と同じですので出来るだけ品質のよいもの、農薬や産地などの問題をクリアした信用できる品物を使わないといけません。
詳しくは説明は出来ませんが注意を払いながら薬局業務をこなしているという毎日です。

京都大会では私も理事長として発表してきました。

大会が開催される前にホテルから清水寺に行くことにします。
午前9時というのに清水寺までの道路(五条通)は渋滞していました。
何とかタクシーで参道入り口まで到着、足早に歩きます。
辺りの紅葉は真っ盛り!いい時に来たようです。


しかしながら山門近くの三重塔は修理中本堂は解体修理中でネットがかけられ見ることも出来ず清水の舞台から飛び降りたようなショックを受けます。
外国人が多い!
早々に引き返し参道を下ります
お土産屋の傍のガラスケース内に目が移ります。
紙の説明書きがあって「盆石‐景」とあります。


盆石!・・
知人に確か盆石をされていた方がいたような・・・
それに「盆景」という言葉も聞いたことがある!さらに「盤景」という言葉も・・・
気になり先日、知人のお宅にお邪魔することにしました。
以前、玄関に立派な盆石を飾られていたのを思い出したからです。
京都で見た盆石にも細川流と有りましたが知人のされている盆石も細川流と聞いています。
茶道や華道とおなじく古来からの伝統文化で流派があるようです。
手ほどきを紹介してくださいましたので紹介してみましょう。
先ず盆石とは・・?
室町時代から続く伝統芸術、黒い漆塗りの盆の上に自然石を置き白砂をまいて自然の風景をかもし出す絵画のようなもの、と解釈しました。
表現方法はさまざまで自然石も色や形がさまざまですが綿密に組まれた法則性もあり魅力的な要素が有るようです。
例えば滝から落ちる水しぶきを表現しようとすると!
荒波にうねる波しぶき
清流の川面を表現するのも!
その両端を鳥の羽を使って強調したり!
林の木立はこのように!
山を描いて空との際立ちを現すにも鳥の「羽根」を用いるとか!
川面に帆掛け舟を配してよりリアルに!
小物もいろいろな種類があるようです。
白い砂は金平糖状の「あられ」から順番に小さくなった八種類のものが用意されています。
砂の材質は石灰岩のようです。
不純物を含まない炭酸カルシウム(石灰石~大理石~方解石=CaCO3)を使用しているようでした。
描く道具も様々で「箒=ほうき」と呼ばれるものは模様を描くのに使われるようです。
羽も色々有りますが特に白鳥の羽を主に使うそうです。
白砂を撒く時に使う匙類
小さな砂を満遍なく散らすのに用いられる丸匙
余った白砂をかき集める砂取り
そのほかにも線を引く為の「霞板」、
ガーゼで作る布巾や箸といった小物類など用途にそくした道具がそろっています
使った白砂を大きさごとに分別する「砂だんす」は練習をした後片付けに便利にと作られています。
日本が誇る伝統縮景芸術でした。
今では海外でもすばらしさが評価され、お弟子さんが広がっていると聞きました。
帰り際、奥様の作品を拝見しました。
「冬の岩手一本桜」と題された作品、


冬の岩手一本桜


「鳴門の渦潮」と題された瀬戸内海の風景、


細川流盆石家元の貴重な作品も飾られています。
表現方法は自由で最近では色砂も盛んに使用されているそうです。
是非、このすばらしい伝統芸術を後世に伝承してゆきたいものです。
玄関を出ると寒月が雲に霞んでいました。

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