中国新聞文化センター・健康講座 広島県の薬用植物と漢方

平成18年9月13日・水曜日 午後6時半からの講義内容

講師:勝谷英夫先生
講師: 吉本悟先生

↑ 9月13日(水)は3月〜9月の最後の講義でした。
そこで、勝谷と吉本先生と半分ずつ受け持ちました。


勝谷英夫先生!

メハジキことヤクモソウ(益母草)
 庭になぜかメハジキ(シソ科)↑が咲いていました。
漢方名は益母草(ヤクモソウ)です。字が示すように母親のためになる生薬です。
つまり、女性のいろいろな症状を改善します。
冷え症、生理不順、などに使うほか、産前産後の民間薬としても使います。
朝鮮半島では産後の体力回復と血をきれいにするために、併せてワカメスープとチヌ(クロダイ)の汁を飲むと聞きました。
時々朝鮮の人が益母草(ヤクモソウ)を「イモチョ」と言って買いに来ます。
 漢方薬の処方としてはきゅう帰調血飲の中に入っています。
この処方は産後の諸症状(貧血、神経症、乳汁不足等)に使います。
産後の薬で有名なものには十全大補湯というものがあります。
産後の養生は大変大切ですから、これから可能性のある○○さんはしっかり覚えておいて下さい。


ヘクソカズラ
 次はヤイトバナ(アカネ科)↑
 花は白い筒状で、先が赤くなっています。お灸に似ているのでこの名前があります。
葉っぱを少しもんでみて下さい。くさいでしょう。
そこで別名が「ヘクソカズラ」といいます。
 蚊とか、いろいろな害虫に刺されたとき、この葉っぱをもんでつけてください。
くさいですが、腫れとか、痒みとかに良く効きます。小さいビンに焼酎、ホワイトリカーを入れて、このヘクソカズラの葉っぱを漬けておくと、いざというときに使えます。

ツリガネニンジン
キキョウ科のツリガネニンジン↑も咲いていましたので持ってきました。
根を沙参(シャジン)と言いまして咳止めに使います。

吉本悟先生

は〜い!勝谷先生とバトンタッチします。
今夜は身近な植物を説明しましょう。
近くでこんな実がなっていました。
何でしょうかね?

生徒A:ナツメでしょう!

大正解!
そうなんです。この実はクロウメモドキ科のナツメです。
白いうちでもいいんですがもう少し経ちますと実が赤く熟してきますのでそのときに採集します。
ホワイトリカー一杯に半分ほどナツメの実を入れまして一月間、漬け込みますと飲めるようになります。
どんな作用があるかといいますと先ず興奮した精神を鎮めてくれます。
皆さんは生で食してみてください。
甘くてリンゴの様な味がしますでしょう。
中国ではナツメの実を利用した色々なお菓子があります。
黒く漬けた黒棗、赤味を残した紅棗など加工の仕方で名前を分けています。
日本にも昔に中国から種が移入されました。
中国ほどナツメを利用する文化がありませんでした。
おそらく薬として運ばれたのだと思われます。

大棗(中国産の薬用ナツメ)を乾燥したものと中に入っている種核

日露戦争の終結を伝えるものとして水師営の会見という歌があるのを知っていますか?
ロシアと戦った野木大将は旅順を攻略しますがその時の将軍がステッセルでした。
その歌の中に「〜・・・庭に一本ナツメの木、弾丸跡もいちじるし〜♪・・・」という歌詞があります。
中国では民家の庭にナツメの木を植える習慣があったんですね!
そんなわけでナツメは日常で頻繁に用いられました。
沈静・味を調整する・滋養に使います。
ナツメの原種にサネブトナツメという種類があります。
原種ですから果肉は少なく子孫を残そうとする種子がたくさん出来ます。
今、私たちが見ます普通のナツメは果肉を利用しようと人の手がかかっていますので種子が実100個に2〜3個しか出来ません。
サネブトナツメの実はほぼ100%結実しますから種子を集めて薬として利用できます。
この実を酸棗仁(さんそうにん)と言いまして精神を鎮める目的に使います。
不眠症・イライラ・興奮などに使います。

薬に使うナツメ(大棗)を切ってみました。
ここにあります種子(大棗仁)は100個の実から3つくらいしか取れません。

大棗を輪切りにしたものと、種核中から出てくる棗仁

ついでにサネブトナツメの種子(酸棗仁)↓も載せてみましょう。

サネブトナツメから取れる酸棗仁・睡眠効果があります。

(注=パワーポイントの資料画像は全て気まぐれ広島人が作成したものです!)
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