平成19年4月25日 

吉本先生の話し

皆さん、こんばんわ!
私は今朝、仕事をする前に今夜の植物を探しに行ってきました。
芸備線を上りまして白木山を越え檜山まで行きました。

白木町・檜山あたりの早朝 向こうは白木山

先ず目に付きましたのはリンドウです。
今の時期に咲く小さな野生のリンドウはハルリンドウとフデリンドウがあります。
今日お見せするのはフデリンドウです。
早朝の日が昇らないときには蕾の状態でしたが一株だけ資料にと持ち帰りコケに巻いておきましたら見事な花を咲かせてくれました。
活きているんですね!
あらためて植物のエネルギーを見せ付けられたような気がしました。

フデリンドウの花

リンドウは西洋東洋を問わず昔から薬に用いられてきました。
特に根は苦味が強く胃腸薬として用いられました。
成分的にはゲンチオピクリン・スウェルチアマリン・ゲンチシン酸と呼ばれ根茎に多く含まれています。
胃液分泌作用・腸管運動促進・抗炎症作用などが知られています。
病気では脳炎・眼の病気・黄疸・下痢・痙攣・皮膚炎に用いられます。
漢方の中医学では特に下半身の湿熱と肝胆の実火を取り去る目的で用いられます。
膀胱炎・膣炎・性病・陰部の痒み・インキンタムシなどに使われてきました。
それにしても綺麗な花です。
このフデリンドウはまだ根がありますので持ち帰って観察してみてください。
日が当たると青い綺麗な花を咲かせてくれますよ!


ヒガンマムシグサがたくさんありました。
これには雄の株と雌の株とがあります。

ヒガンマムシグサの雌雄の株・仏炎苞を開いたもの 雌株の子房下に虫が死んでいる

一つの株には花に当たる仏炎苞(ふつえんほう)が出来ます。
容が仏さんの後ろに飾られる炎のような苞が出来ることから名づけられました。
この苞の中に花粉のある軸と子房の出来る軸とがあります。
雄の苞から小さな虫にしかわからないような臭いが出されます。
臭いに誘われて小さな虫が苞の中に入り込みますが苞は筒状になっていて一度底に落ち込んだら容易に出ることが出来ません。
花粉をつけた虫は雄の仏炎苞の底に空いた小さな穴からやっと脱出することが出来ます。
そして今度は雌の仏炎苞の臭いに誘われて入り込むことになります。
ところが雌の仏炎苞では底にあるはずの小さな穴がふさがれています。
虫は出口を探して苞の中で動き回りますがその時に子房の柱頭に花粉をつける仕組みになっています。
ほとんどの虫はヒガンマムシグサの思惑にはまりまして苞の中で死んでしまいます。
持って来ました苞の中にも虫の死骸があると思います。
サトイモ科の花にはこんな仕掛けがあるんですね。
今までにカラスビシャクをお見せしたことがありますがやはり同じ構造をしています。
コンニャクやサトイモ、ミズバショウ、ザゼンソウなども同じです。
ヒガンマムシグサの特徴は仏炎苞と土から出る茎の中間辺りから葉ケ柄が出ていると言われます。
マムシグサ・テンナンショウ・ウラシマソウなどの仲間の根を乾燥させて天南星(てんなんしょう)として薬用に用いられます。
根にはコイニンという有毒成分や蓚酸カルシウムが多く含まれ粘膜に強い刺激を与えます。
ですから薬用で用いるときには熱処理をしたものや熱と動物胆で処理したものを使います。
漢方では湿毒を排除し痰を押し出す薬として用いられます。
咳・不眠・精神不安・痙攣など体の中の湿気が原因で起こる症状を改善する漢方薬です。

セイヨウタンポポ
畑の側にタンポポがありました。
ガクの形からセイヨウタンポポだと分かりますね。
若い葉はサラダにして食べる事が出来ます。
根は乾燥して煎じ、乳を出す薬として用いられてきました。
或いは抗菌作用がありますので乳腺炎のときに服用されました。
ヨーロッパでは健胃薬として用いられます。
私もお乳の出が悪い母親に当帰と香附子などと一緒に煎じる蒲公英湯(ほこうえいとう)をさしあげる事があります。

タラノキの新芽=タラノメ


最後にタラノメがありましたのでお見せしましょう。
皆さん、食べれるので見つけると直ぐに採ってしまいますね。
多くのタラノキの新芽は折られて弱った樹が目立ちます。
一度折られればその横から小さな新芽を数本出すのですが心無い人はその芽さえ採ってしまいます。
立枯れたタラノキが多くありますね。
タラノメを食べないと生きていけない時代ではないのですからもっと自然を大切にしてもらいたいものです。
タラノキの茎にはするどい刺があります。
しかし根の周りには刺が無く肥大した樹皮があり、それをタラコンピ(タラ根皮)として薬にします。
特に糖尿病に有効だとされます。
中国ではリウマチや通風に民間薬として用いられてきました。
また胃炎・高血圧・腎臓病・神経痛・強壮薬などによかったという報告もあります。
ウコギ科の植物ですがウコギ科にはその他にも薬用植物が目立ちます。
草本で薬用人参もウコギ科です。
ウコギそのものも薬用に使われてきました。
基本的には葉は五枚に分かれますがタカノツメのように三枚のもの、ヤツデのような七〜八枚に分かれているものもあります。
コシアブラは五枚に葉が分かれていますが若い芽はバカノメなどと呼ばれ、タラノメよりも美味しいとされます。

今晩はこれくらいにしておきましょう。

戻る