1月10日、講義内容    勝谷英夫先生

 あけましておめでとうございます。ことしもよろしくおねがいします。
この冬は、ノロウイルスが流行っています。漢方的にはどのような処方を出すかといいますと、「五苓散」とか「人参湯」が主な処方です。
 そこで、今日はいざという時のために「人参湯」を作り、その主薬の人参について勉強しましょう。
 ノロウイルスによる急性胃腸炎だけでなく、その他の急性胃腸炎や、嘔吐下痢症にも使います。
ウイルスをやっつけるという感じではなく、傷ついた胃腸の機能を回復させる感じではないかと思います。
処方の構成は、人参、白朮、甘草、乾姜の4種類です。簡単な組み合わせですが、切れ味の鋭い、早く良く効く薬です。
 白朮=水分代謝の促進によって、からだの水分のバランスを整えます。
 甘草=ここでの意味は、急迫症状を和らげることだと思います。
 乾姜=ショウガを蒸して作ったものですが、からだを温めます。
 そして人参です。

朝鮮人参(直参)


これは↑直参(ちょくさん)というものです。6年物のいい人参です。
なぜ6年物かといいますと、人参の頭の節が6個あります。年数はこの節の数で分かります。
1年ごとに節が増えていきます。ほかに曲参、紅参(こうじん、こうさん)、ヒゲ人参が、いわゆる朝鮮人参で同じなかまです。

ヒゲ人参 又は 毛人参

ヒゲ人参↑は人参のヒゲ根、あるいは1年物などの、間引いたものです。血圧の高い時にどうしても使いたいときに使用します。
 紅参は人参を蒸してこのようにしたものですが、こうすることにより、虫に強くなり、傷みにくいのです。
そこで主に台湾、東南アジアで使います。
 人参の働きとしては、消化吸収機能が悪いときで、胃のあたりが痞える、食欲が無い、下痢、嘔吐の症状に効きます。
また、元気を補う、回復力を高める、血糖値を下げるなどほかにもたくさんあります。
人参の学名、パナックスジンセングというのは、万病に効くという意味です。
  江戸時代に漢方薬も盛んになり、消費量も多くなりました。非常に高価な朝鮮人参はなかなか庶民には手に入らない物でした。
その頃から日本でも植物学が重要視され、日本にも
同じ物が無いだろうかと探した結果、見つかったのが竹節人参(ちくせつにんじん)↓です。

竹節人参

このニンジンは1年ごとに節を延ばしていきますが、その形が竹の節に似ているので竹節人参といいます。
先ほどの朝鮮人参よりも、去痰、鎮咳作用は優れています。
そこで風邪の回復期に使う小柴胡湯にはこの竹節人参を使います。
 もう一つニンジンの仲間として有名なのが、田三七人参(デンサンシチニンジン)↓です。

田三七人参


 このニンジンは使い方が少し違い、止血、消腫、鎮痛、消炎作用があります。
ベトナム戦争のとき、中国の雲南省から大量に入り、傷ついた兵隊を治したので一躍有名になりました。
その他、最近では強心作用が見出され、冠状動脈疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧、コレステロール過多などの生活習慣病に使ったり、慢性肝炎、肝硬変に使ったりします。
片仔廣(へんしこう)という薬は有名です。
今後特に有名になると思いますので覚えておいてください。
ということで今回はこれくらいにします。
中国新聞文化教室・広島県の薬草