薬王堂気まぐれ通信使№744   2015・11・8~11・15
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今月の22日・23日に日本漢方交流会学術総会広島大会が開催されます。
今年で48回目、広島では5回目の全国大会です。
22日の正午から1時間20分、私は市民公開講座を担当することになりました。
会場は広島市中区霞の広大医学部(広島大学病院)校内にある広仁会館です。
市民公開講座は無料ですので興味のある方は参加ください。

ということで当日に紹介する薬用植物を採集に行ってきました。


備後 西城


8日は雨の中、庄原を経由して西城~比婆山周辺へと向かいます。


ご苦労なことです。
特に珍しいものもありませんでしたが紅葉が綺麗でした。
この辺りにはトチバニンジンが多く自生しています。
一株だけいただきました。
根を慎重に掘ります。


トチバニンジン(竹節人参)の根


というのもトチバニンジンの根は竹の節のようになった露頭部の下に貯蔵根があるからです。
トチバニンジン(Panax japonicus)はウコギ科の植物で薬用人参(Panax ginseng)と非常に近い植物です。
竹の節のようになった露頭部は薬用人参よりも肥大しているために竹節人参(チクセツニンジン)とも呼ばれています。

薬用人参の根の肥大した部分とよく似た形態がトチバニンジンにもあります。
丸い感じで竹節部から独立したように付属(貯蔵根部↑)しています。
古人はこの部分を珠(玉)部として珍重していたと聞きます。
西暦1500年当時、中国・朝鮮においても薬用人参(朝鮮人参)は深山に自生する数少ない薬草でした。
江戸時代に入り薬用人参は日本にも輸入されますが大陸でも希少なものだっただけにその量はごく僅かだったようです。
明の医師=何欽吉(カキンキツ)が日本に来(1646年)て九州の山中で薬用人参によく似たトチバニンジンを見つけます。
それ以降、トチバニンジンは竹節人参(竹参・土参)として広く使用されるようになりました。
特に京都で医業をした吉益東洞(1702~1773)は頻用します。
その後、生の薬用人参が持ち込まれ幕府の重要薬物として種から栽培されたことから御種人参と呼ばれるようになります。
ルイヨウショウマの実がなっていました。

15日は快晴でした。
廿日市から宮島周辺にかけてカギカズラが自生しています。
アカネ科の植物です。


カギカズラの鈎部


宮島では繁茂していますが国立公園ですので採集は出来ません。
杉木立に覆いかぶさるように蔓を伸ばします。
枝先を数本頂いてきました。
漢方薬では釣藤(チョウトウ)・鈎藤(コウトウ)・釣藤鈎(チョウトウコウ)として七物降下湯・抑肝散・釣藤散といった処方に組み込まれています。
肝気の高ぶりを下ろす薬草として高血圧や認知症に用いられます。
鈎(カギ)部は葉の変形したものですが対生する葉の付け根に一本・二本・一本・~と交互に並びます。
カギを利用して他の植物に絡みつき上昇するようです。

市民公開講座で話すつもりのセンブリウスバサイシン(春撮影)はもう枯れてありませんでした。
せっかく鷹ノ巣山(922m)頂上まで車を走らせましたが残念でした。
福田でムベの実を採取します。


ムベの実


高いところになっていたのでやっとこれだけ・・・
ムベは他のアケビの仲間より甘味が強く美味しいです。

今回の話には出てきませんがクコ(枸杞)やサネカズラ(南五味子)、アオツヅラフジ(木防己)の実が付いています。
市民公開講座のパンフレットを作成しましたので紹介します。
参加者には当日、無料で配布されます。
市民公開講座は私がお話しますので是非参加ください。

講演時間: 11月22日(日曜日)  正午12時~1時20分まで   広島大学医学部校内・広仁会館

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