類聚方広義・第二木曜会  2015・9・10

拾遺方
麻黄連軺赤小豆湯 四逆散 射干麻黄湯 桂枝芍薬知母湯
百五十四頁 表
標注                                       類聚方







連軺は、即ち連翹なり。
疥癬内陥し、一身瘙痒、発熱し、喘咳腫満する者は、反鼻を加えば、奇効有り。生梓白皮は採用易からず、今権に梓葉、或いは桑白皮を以って、之に代う。
右九味、水六升清酒六升を以って、和し煮て五升を取る。滓を去り、分温五服す。水七勺清酒七勺、煮て六勺を取る。
手足厥寒、脈細にして絶えんと欲す者は、当に当帰四逆湯之主どる。若し其の人内に久寒有るは、



麻黄連軺赤小豆湯
麻黄 連軺 生姜 各ニ両 杏仁 四十個 
各二分 赤小豆 一升 二銭 大棗 十二枚 三分 甘草 一両 一分 生梓白皮 一升 五分 以上八味、潦水一斗を以って、先ず麻黄を煮て、再沸し、

百五十四頁 表 解説
標注                                            類聚方
連軺(レンヨウ・レンショウ)
瘙痒(ソウヨウ)=かさぶたが出来てかゆい
反鼻(ハンビ)=まむしのこと
生梓白皮(ショウシハクヒ)梓白皮(シハクヒ)=キササゲの根皮や樹皮
権(カリ)に=副詞として使うと、かりに、さしあたり、しばらく
梓葉(シヨウ)=トウダイグサ科 アカメガシワ
桑白皮(ソウハクヒ)=クワの樹皮の真皮
潦水(ロウスイ)=たまり水・雨水

百五十四頁 
標注                                       類聚方




或いは以下の五症、皆本方の治する所にして、固より加味を須いず。之を病者に験すに、自ずから了然とす。
湯と為し用うも反って佳し。水一合五勺を以って、煮て六勺を取る。
上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取り、分温三服す。水二合を以って、煮て六勺を取る。半日に服し尽くす。
傷寒、オ熱裏に在り、身必ず黄を発す、

四逆散
甘草 枳実 柴胡 芍薬 
各七分
右四味、各十分、擣き篩い、白湯に和し、方寸ヒを服す。日に三服す。後の加減法に、欬する者に五味子乾姜各五分を加う。併せ下利を主どる。悸する者は桂枝五分を加う。小便不利する者に、茯苓五分を加う。腹中痛む者に、附子一枚を加う。

百五十四頁 裏 解説
標注                                            類聚方
須(モチ)い=必要


百五十五頁 
標注                                       類聚方
痢疾、累日下利止まず、胸脇苦満、心下痞塞、腹中結実して痛み、裏急後重する者を治す。

此の症真武湯と、誤認し易し。又た協熱利を治すに、桂枝人参湯と、表裏の別有り。宜しく精診処措すべし。
十三枚、疑うらくは三枚の誤りならん。干の字は十の字に似たり。遂に誤りて一十と剰すのみ。
久咳止まず、或いは産後喘咳し、頚項に痰歴を生じ、累累として貫珠の如き者を治す。細辛五味子を去り、
泄利下重の者は、先ず水五升を以って、薤白三升を煮る。煮て三升を取り、滓を去り、散三方寸ヒを以って、湯中に内れ、煮て一升半を取り、分温再服す。
少陰病、四逆、其の人或いは欬し、或いは小便不利、或いは腹中痛み、或いは泄利下重の者、

射干麻黄湯
射干 十三枚 一に三両に作る 
三分 麻黄 生姜 各四両 四分 細辛 紫菀 款冬花 各三両 三分 五味子 半升 五分 大棗 七枚 二分 半夏 

百五十五頁 表 解説
標注                                            類聚方
剰(ジョウ)す=よけいなさま、アマす
痰歴(タンレキ)=瘰癧の一種
貫珠(カンジュ)=ひもに通して連ねた玉、真珠

百五十五頁 裏
標注                                       類聚方
射干を倍し、皂角子を加えて、効有り。南呂丸を兼用す。

水鶏聲とは、痰と気と、相觸るの聲にて、喉中に在りて、連連と絶えざるを謂うなり。蘇頌の曰く、即今、水鶏、是なり。陶弘景の曰く、鼃は蝦蟇の一類にて、小形にして善く鳴くを鼃と為すと。

風毒腫痛、増寒壮熱、渇して脈数、膿を成さんと欲す者を治す。○通風、走注し、骨節疼痛、手足攣痛する者を治す。ズイ賓丸を兼用す。
痘瘡、貫膿十分ならず、或いは期を過ぎて
半升 六分
右九味、水一斗二升を以って、先ず麻黄を煮て一両沸し、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取り、分温三服す。水二合四勺を以って、煮て六勺を取る。
欬して上気し、喉中水鶏の聲、

桂枝芍薬知母湯
桂枝 知母 防風 各四両 
四分 芍薬 三両 三分 甘草 麻黄 各ニ両 附子 二枚 各二分 生姜 朮 各五両 五分

百五十五頁 裏 解説
標注                                            類聚方
皂角子(ソウカクシ)=マメ科サイカチの種子
南呂丸(ナンロガン)=滾痰丸(コンタンガン)=甘遂・大黄・黄ゴン・青蒙石
蘇頌(ソショウ)=1061年(北宋)図経本草を著す、天文学者
鼃(ア)=?
即今(ソッコン)=目下、現在、ただいま
是(ゼ)なり=正しい
蝦蟇(ガマ)=ガマガエル
増寒壮熱(ゾウカンソウネツ)=寒気が増し熱が出てくる
ズイ賓丸(ズイヒンガン)=平水丸=呉茱萸・芒消・芫花(フジモドキの花蕾)・商陸・甘遂の糊丸


百五十六頁 表
標注                                       類聚方
結痂せず、増寒身熱、一所疼痛、脈数の者は、余毒癰を成さんと欲するなり。此の方に宜し。若し膿巳に成る者は、早に鈹針にて割開すべし。伯州散を兼用す。
尫は、オウに作る。又たオウに作る。按ずるに、檀弓の注に、尫は、脊病の人と。
右九味、水七升を以って、煮て二升を取り、七合を温服す。日に三服す。水二合を以って、煮て六勺を取る。
諸肢節疼痛し、身體尫羸、脚腫れ脱するが如く、頭眩短気、温温として吐せんと欲す、

当帰建中湯


百五十六頁 表 解説
標注                                            類聚方
結痂(ケッカ)=かさぶた状
早(ツト)に=早く
伯州散(ハクシュウサン)=反鼻・津蟹・鹿角を黒焼きにしたもの
檀弓(ダングウ)=戦国時代・魯の人・礼記の編名となる

反鼻(ハンビ)=五八霜
マムシ
薬用には全体を蒸して姿焼きにしたもの、或いはマムシの内蔵を除いて乾燥したもの
効能:強壮・滋養


射干(ヤカン)
アヤメ科 ヒオウギ
効能:清熱解毒・去痰・鎮咳


蝦蟇(ガマ)=蟾蜍(センジョ)=蟾酥(センソ)
ヒキガエル・シナヒキガエルの皮膚腺から分泌される乳液を乾燥加工したもの
効能:強心作用や局所麻酔作用(鎮痛)



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