類聚方広義・第二木曜会 2015・6・11
未試十八方
栢葉湯 黄土湯 鶏屎白散 蜘蛛散 当帰芍薬散 帰母苦参丸 狼牙湯 小児疳虫侵蝕歯方百五十頁 表
陶弘景の曰く、某草一把は、ニ両を正と為す。 李時珍の曰く、馬屎を通と曰う。牛屎を洞と曰う。猪屎を零と曰う。皆其の名の諱なり。 馬通汁、今童便に代う。千金に、阿膠ニ両を加う。吐血内崩上気し、面色土の如し。 咳血乾嘔し、煩熱腹痛、脈微にして力無き者を治す。又た能く衄血を止める。 千金に附子地黄無し。乾姜有り。○竃中の黄土は、薬舗に鬻ぐ所は、偽雑多し。自ずから采貯すべし。 |
實なり。 栢葉湯 栢葉 乾姜 各三両 七分五厘 艾 三把 一銭五分 右三味、水五升を以って、馬通汁一升を取り、合わせ煮て一升を取る。分温再服す。水一合五勺、童便三勺を取り、煮て六勺を取る。 吐血止まざる者、 黄土湯 甘草 乾地黄 朮 附子 阿膠 黄芩 各三両 四分 竃中の黄土半斤 一銭 |
陶弘景(トウコウケイ)=西暦500年頃、神農本草経を再編、本草経集注を著す 李時珍(リジチン)=西暦1578年、本草綱目を著す 諱(イミナ)=本来は死者の生前の名前を避けて付けられた名のこと 偽雑(ギザツ)=にせもの、うたがわしいもの 采貯(サイチョ)=とりて貯め置く |
栢葉(ハクヨウ)=コノテガシワの葉 馬通汁(バツウジュウ)=馬糞を絞った汁 竃中(ソウチュウ)=かまどの内側 |
吐血下血し、久久に止まず、心下痞し、身熱悪寒、面青く體痩せ、脈弱舌色刷白、或いは腹痛下利、或いは微腫する者を治す。 臓毒、痔疾、膿血止まず、腹痛濡瀉、小便不利、面色痿黄、日漸と羸し、或いは微腫する者を治す。 転筋とは、四支勁直。腹中筋脈緊急の者、速効有り。蜜丸と為すも亦た佳し。烏附剤や、建中湯等の症と、誤認すべからず。 |
右七味、水八升を以って、煮て三升を取る。分温二服す。水一合六勺を以って、煮て六勺を取る。 下血、先便後血、此れは遠血なり。黄土湯之を主どる。亦た吐血衄血を主どる。 鶏屎白散 鶏屎白 右一味、散と為し、方寸ヒを取り、水六合を以って和し、温服す。」 転筋の病為る、其の人臂脚直し、脈は上下に行き、微し弦す。転筋の腹に入る者は、 |
濡瀉(ジュシャ)=水様性の下利 日漸(ヒゼン)=日に日に、だんだんと、しだいに 勁直(ケイチョク)=強く引き攣れる |
鶏屎白(ケイシハク)=鶏の糞の白い部分 臂脚(ヒキャク)=臂は肘のこと、脚は両足 |
此の方殊効有り。然れども瞑眩甚だし。宜しく斟酌して用うべし。蜘蛛は、黒色に黄斑文の有る者、是れなり。 妊娠、産后、下痢腹痛、小便不利、腰脚麻痺し力無し、或いは眼目赤痛する者、若し下利止まず、悪寒する者は、附子を加う。若し下痢せず、大便秘す者は、大黄を加う。○婦人経断し、巳に三四月、之を診るに、腹中攣急、胎の手に応ぜず、或いは腹中コウ痛するは、血瘕に類す。妊否を決め難き者有り。此の方加大黄を用うれば、則ち二便快く |
蜘蛛散 蜘蛛十四枚 桂枝 半両 一銭 右二味、散と為し、八分一ヒを取り、飲和服す。日に再服す。蜜丸も亦た可、 陰狐疝気の者、偏じて大小有り。時時上下す、 当帰芍薬散 当帰 三両 二分五厘 芍薬 一斤 一銭四分 茯苓 朮 各四両 三分五厘 沢瀉 半斤 七分 芎藭 半斤 一に三両に作る 二分五厘 右六味、杵きて散と為し、方寸ヒを取る。酒に和し日に三服す。 |
殊効(シュコウ)=特に良く効く 経断(ケイダン)=生理が止まって、妊娠の可能性がある 血瘕(ケツカ)=古血が固まったもの |
蜘蛛(チシュ)=くも 陰狐疝気(インコセンキ)=鼠径部ヘルニアで痛みのある状態・脱腸 |
利す。十日を過ぎずして、腹中鬆輭、若し妊娠の者、胎気速やかに張る。又た懐妊して巳に累月、胎萎縮し長ぜず、腹中拘急する者も、亦た此の方に宜し。○婦人血気痛、小便不利するは、此の方に宜しき者有り。○眼目赤痛の症、其の人心下に支飲有り、頭眩涕涙、腹拘攣する者も、又た此の方に宜し。○脱肛、腫痛し水出で止まざる者に、奇効有り。 | 婦人懐妊、腹中コウ痛、○婦人腹中の諸疾痛、 帰母苦参丸 当帰 貝母 苦参 各四両 八銭 右三味、之を末とし、煉蜜に丸し小豆大の如し。三丸を飲服す。加うに十丸に至る。 妊娠、小便難、飲食故の如し、 狼牙湯 狼牙 ニ両 四銭 右一味、水四升を以って、煮て半升を取り、綿を以って筋を纏い、繭の如くす、湯を浸し陰中を瀝すに、日に四遍、 |
鬆輭(ソウナン)=やわらかい、しこりのない | 狼牙(ロウゲ)=ミツモトソウ、日本ではキンミズヒキで代用 纏(マト)い=とりかこむ・巻きつく 繭(マユ)=蚕のまゆ 瀝(レキ)=しずくがたれる、したたる |
少陰脈滑にして数の者、陰中に即ち瘡を生じ、陰中蝕し瘡爛する者、 小児疳虫蝕歯方 雄黄 葶藶 右二味、之を末とし、臘月猪脂を取り鎔かし、槐枝を以って綿にて頭を裏ち四五枚、薬を點し之を烙く、 |
雄黄(ユウオウ)=硫化ヒ素 葶藶(テイレキ)=イヌナズナまたはグンバイナズナの種子 臘月(ロウゲツ)=陰暦12月 鎔(ヨウ)=とかす 裏(ウ)ち=衣服の裏地として縫い合わす 點(テン)=つける、一滴をつける 烙(ヤ)く=やく、あぶる |