類聚方広義・第二木曜会  2015・1・8

桔梗白散 走馬湯 

百四十二頁 裏
標注                                       類聚方
響くが如し。玉函に、短気の下、汗出の二字無し。
水脇下に在りて、咳唾引痛する者、之を懸飲と謂う。




此の方、特だ肺廱を治すのみならず、所謂幽廱胃脘廱、及び胸膈中に頑痰有りて、胸背攣痛を作す者、咳家にて、膠痰纏繞し、咽喉利せず、気息に臭気有る者、皆効有り。
卒中風馬脾風、痰潮息迫し、牙關緊閉し、薬汁入らざる
脇下に引きて痛み、乾嘔短気し、汗出で悪寒せざる者、「此れ表解し裏未だ和せざるなり、」○病「懸飲」者、○「咳家、其の脈弦は水有ると為す、」○夫れ「支飲家、」、欬煩胸中痛む者、「卒かに死なず、一百日或いは一歳に至る、」

桔梗白散
毒の胸中に在り濁唾臭膿を吐す者を治す。
桔梗 貝母 三分 
一銭五分 巴豆 一分 五分
右三味、散と為す。「強人は半銭ヒを服す。羸者は之を減ず。」
白湯を以って半銭を送下す。病膈上に在る者は、膿血を吐す。膈下の者は、瀉

百四十二頁 裏 解説
標注                                            類聚方
幽廱(ユウヨウ)=奥深い肺廱、なかなか治らない化膿性疾患
胃脘廱(イカンヨウ)=胃潰瘍のひどい状態
纏繞(テンジョウ)=まといつく、ねばりつく
卒中風(ソッチュウフウ)=急に意識障害が起こる病
馬脾風(バヒフウ)=咽喉ジフテリイ
牙關(ガカン)=あご関節部
卒(ニワ)か=突然

百四十三頁 
標注                                       類聚方
者は、一字を取りて鼻中に吹き、痰涎を吐せば、咽喉立ちどころに通ず。
肺廱に、此の方を用うるは、当に其の咳逆喘急、胸中隠痛、黄痰息臭の時に在りて、断然之を投じ、以って鬱毒を掃蕩し、根柢を断除すべし。若し猶豫して決せず、持重して日をうすれば、毒気浸淫、胸背徹痛膿穢湧溢、極臭鼻を撲ち、蒸熱柴痩し、脈細数に至りて、臍を噛むも及ばざるなり。医は小心にならざるべからず。又た放膽ならざるべからず。に此れを以ってなり。
出す。「若し下ること多く止まずば、冷水一盃を飲めば則ち定む。」
「病陽に在り、当に汗を以って之を解すべし。」反って冷水をソンし、若しくは之に灌ぎ、其の熱ゴウを被り、去るを得られず、更に益々煩し、肉上粟起、意うに水を飲まんと欲し、反って渇せざる者、文蛤散を服す。若し差えざる者は、五苓散を与う。「寒実結胸、」熱證無き者は、三物小陥胸湯を与う。白散も亦た服すべし。
○欬して胸満し、振寒脈数、咽乾するも渇せず。時に濁唾腥臭を出す。久久に膿を吐し、米粥の如き者、「肺廱と為す。」

百四十三頁 表 解説
標注                                            類聚方
一字(ヒトモジ)=ネギ、細いネギ、ひともじ
隠痛(オンツウ)=潜んだ痛み
掃蕩(ソウトウ)=綺麗にする
根柢(コンテイ)=根底、根の部分、原因
猶豫(ユウヨ)=ぐずぐずする
持重(ジチョウ)=慎重に、軽率に行わない
曠(ムナシ)=むなしくする、無駄に過ごす
浸淫(シンイン)=しみ込む
徹痛(テッツウ)=突き通すような痛み
膿穢(ノウワイ)=けがれた膿
湧溢(ユウイツ)=わきあふれる
撲(ウ)ち=うつ
柴痩(サイソウ)=柴のようにやせ衰える
臍噛(ゼイサイ)=ほぞ(臍)を噛む=後悔する
小心(ショウシン)=用心深く慎重に
放膽(ホウタン)=思い切って大胆に行う
良(マコト)

彌(ビ)=いよいよ

百四十三頁 裏
標注                                       類聚方
此の方、備急円と、其の用大抵相似る。唯だ病の(於けるに)胸咽に専らの者、此の方に宜し。○卒中風、急驚風、脚気冲心、痘瘡内陥、疥癬内攻、乾霍乱、諸般の卒病、其の勢い険急にして、胸咽に逼りて息するを得ざる者は、皆此の方に宜し。
○綿は、綿布なり。○按ずるに、外臺の走馬湯に云う。卒かに諸疝を得て、少腹及び陰中、相引き絞痛し、自汗出で死せんと欲するを療すと。此れを寒疝と名づけ、亦た陰疝と名づく。其の症殆ど諸烏附剤の症と、相似る。然れども悪寒、手足不仁、逆冷等の症無し。是れ其の別なり。宜しく其の症候を審らかにし以って之を施すべし。
肘后方に曰く。飛尸は、皮膚を遊走し、臓腑を洞穿し、発す毎に刺痛、変作常無しと。病源候論に曰く、飛尸は、発するに由漸無し、忽然と而至と。飛走の急疾の若しを、所謂飛尸と謂う。其の状は心腹刺痛し、気息喘急、脹満し心胸に上衝する者、是れなり。
○鬼撃病は、卒然と人に著くに、刀刺状の如く、胸脇腹内切痛し、
為則按ずるに、結毒有りて濁唾し膿を吐す者之を主どる。

走馬湯
胸腹に毒有り。或いは心痛。或いは腹痛する者を治す。
巴豆 二枚 杏仁 二枚
右二味、綿を以ってし、槌にて碎かしめ、熱湯二合にて、し白汁を取りて、之を飲む。当に下るべし。老は少し之を量す。「通じて飛尸、鬼撃病を治す。」中悪、心痛腹脹、大便不通、

百四十三頁 裏 解説
標注                                            類聚方
諸疝(ショセン)=痛みのある病、心臓部や胸が痛む、下腹が痛む、脱腸など
肘后方(チュウゴホウ)=正式には肘后備急方、葛洪著、葛洪は西暦283~34年、江蘇の人で神仙家
飛尸(ヒシ)=かまいたち、突然皮膚から出血する病
洞穿(ドウセン)=貫通しうがつ
由漸(ユゼン)=ゆっくりとする
而至(シイ)=至る
著(ツ)く=付く
抑按(ヨクアン)=がまんする

纏(テン)=まとう
捻(ジョウ)=ひねる

百四十四頁 
標注                                       類聚方
すべからず。或いは吐血、鼻血、下血し一に鬼排と名づく。
○肘后方に曰く、中悪は、道間門外に之を得る。人をして心腹刺痛し、気心胸を衝き、胸脹せしむ。治せずして人を害すと。肘后、病源の諸家の説は、蓋し此の如し。然れども学者当に見症に従事して、以って方を處し、病因病名に拘拘すこと勿れ。



百四十四頁 表 解説
標注                                            類聚方
一(イチ)に=ひとつに
道間(ドウカン)=道の空間
處(ショ)し=所し
拘拘(クク)=こだわる、拘泥

巴豆  トウダイグサ科
成分:クロトン油
効能:瀉下作用(皮膚刺激性があり発癌性も指摘される)


貝母  ユリ科 アミガサユリやホソバナコバイモなどの根(鱗茎部)
効能:化痰・止咳、咳嗽や咽痛に使用
アミガサユリ↓ 淅貝母(鱗茎部)


ホソバナコバイモ() 川貝母


川貝母


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