類聚方広義・第二木曜会 2014・9・11
桂枝茯苓丸
百三十六頁 裏
標注 類聚方
産後、悪露尽きざれば、則ち諸患錯出し、其の窮まりは救う可べからざるに至る。故に其の治は瘀血を逐うを以って、至要と為す。此の方に宜し。 又妊娠臨盆に之を用うれば、催生に尤も効有り。 ○経水不調、時時頭痛、腹中拘攣、或いは手足グン痺する者を治す。或いは経期に至る毎に、頭重眩運、腹中腰脚コウ痛の者、産後巳に数十日を過ぎ、它に異症無く、但だ時時臍を廻り遶りて刺痛し、或いは痛み腰腿に延く者、経閉し上衝頭痛、眼中に翳を生じ、赤脈縦横、疼痛羞明、腹中拘攣する者、又妊婦、顛仆し子腹中にて死し、下血止まず、少腹攣痛する者は、 |
桂枝茯苓丸 経水に変有り、或いは胎動き、拘攣上衝、心下悸す者を治す。 桂枝 茯苓 牡丹皮 桃仁 芍薬 各当分 右五味、之を末し、煉蜜に和し、丸すること兎屎大の如くす。毎日食前に一丸を服す。知らずんば加え三丸に至る。蜜丸白湯を以って一銭を服す。 婦人宿(もと)より「癥病」有り、経を絶つに未だ三月に及ばざるに、漏下を得て止まず、胎動き臍上に在る者は、「癥痼妊娠を害すと為す。六月にして動く者は、前三月経水利する時の胎なり。下血の者は、後断ちての |
眩運=眩暈=めまい 翳(エイ)=かげ・ひかげ 顛仆(テンボク・テンプ)=顛倒・ひっくり返ること |
兎屎大=兎の糞の大きさ 知らずんば=効果が無ければ 癥病(チョウビョウ)=腹に結塊のある病 漏下(ロウゲ)=子宮出血 |
之を用うれば胎即下る。又た血淋、腸風、下血、撰用するに皆効有り。以上の諸症に、大黄を加え煎服すを佳と為す。 ○此の章は文義明らかならず。程林の曰く、当に闕文有るべしと。按ずるに、六月自り時胎に至る十二字を刪去すれば、則ち其の義稍通ず。後断ちは当に断ちて後と作すべし。舊本は衃の字誤りて不血の二字と作す。今之を正す。衃は、玉篇に曰く、凝血なりと。衃の字は、素問五臓生成論に見ゆ。此の條の其の症に随うべき者は、妊娠を害すに止む。則ち六月以下、本より委曲にて辨を費やすに足らざるなり。○史扁鵲傳に曰く、五臓癥結を見ると。玉篇に曰く、癥は、腹の結病なりと。蓋し腹中に凝結の毒有り、之を按ずるに手に応じ、徴知すべきを謂う。○此の方に、大黄を倍加し、散と為し、兼用方と為す。或いは単用と為せば、其の功は丸に勝る。 妊婦顚躓し、胎動き心を沖き、腹痛腰股に引き、或いは胎の萎縮状なるを覚え、或いは血下り止まざる者は、此の方を用うべし。胎殞ざれば則ち安し。若し |
三月衃なり。血止まざる所以の者は、其の癥去らざるが故なり。当に其の癥を下すべし。」 為則按ずるに、当に衝逆心下悸の證有るべし。又曰く、是れ唯だ婦人の病を治すのみの方にあらざるなり。 芎帰膠艾湯 漏下、腹中痛、及び吐血下血する者を治す。 |
闕文(ケツブン)=かけた文章 刪去(サンキョ)=けずり去る 衃(ハイ)=赤黒色の淤血、または胚に同じ 委曲(イキョク)=遠回しに言う 顚躓(テンチ)=つまずいてひっくりかえる 沖(ツ)く=上に突き抜ける 殞(イン・オチ)る=死ぬ |