類聚方広義・第二木曜会  2014・6・12

桂枝生姜枳実湯 橘皮枳実生姜湯 橘皮湯 橘皮竹茹湯 茯苓飲 



百三十四頁 表
標注                                       類聚方
蔕、必ず歯根に著く。故に其の歯を抜去するに非ざれば、決して全治を得られざるなり。後に此の方を与えば、必ず効有り。兼用に伯州散。時に梅肉を以って之を下す。
○産後悪露壅滞し、小腹癰、臀癰等を発し、腹拘満して痛み、大便泄利、心下痞塞、飲食を欲せずして、嘔有り、咳有る者も、亦此の方に宜し。伯州散を兼用す。
○咽喉結毒、腐爛疼痛、頚項に結核を生ず者は、宜しくエン鼠丸を兼用するべし。エン鼠丸を用うれば即ち咽喉更に腐爛するが如く、而して後漸漸と平に復し、結核随って消却す。
右三味、杵きて散と為し、鶏子黄一枚を取り、薬散を以って鶏黄と相等しくし、揉和し相得せしめ、飲和し之を服す。薬末一銭を以って、鶏黄一枚に和し、白湯にて送下す。日に一服す。
為則按ずるに、瘡廱有りて、胸腹拘満の者之を主どる。


桂枝生姜枳実湯
胸満上衝、或いは嘔す者を治す。
桂枝 生姜 各三両 
七分五厘 枳実 五枚 一銭二分五厘
右三味、水六升を以って、煮て三升を取り、分温三服す。
水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。

百三十四頁 表 解説
標注                                            類聚方
著(ツ)く=付着する、固定される
エン鼠(エンソ)=もぐら、鼠はねずみのこと

百三十四頁 裏
標注                                       類聚方
諸逆は気逆、嘔逆、吐逆、噦逆等を謂う。
心懸痛疝癖にて痰を兼ねる者、多く此の症有り。蛔症も亦彷髴する者有り。宜しく弁別すべし。按ずるに素問玉機眞蔵論に曰く、心懸は病餓するが如しと。王註の曰く、心中虚し、饑餓の病の如しと。至眞要大論に曰く、饑して食を欲せず云云、心懸するが如しと。霊樞経脈篇に曰く、心懸するが如し、饑す病の若しと。師伝篇に曰く、胃中熱すれば則ち消穀し、人をして懸心し善饑せしむ。此の證にして痛み有る者、即ち心懸痛なりと。外臺に、心下懸痛と作す。

外臺に、橘皮半斤、枳実
心中痞、諸逆、心懸痛。
為則按ずるに、当に嘔の證有るべし。又按ずるに、痞の下に満の字脱すや。

橘皮枳実生姜湯
胸痺、心下痞満、嘔噦の者を治す。
橘皮 一斤 
一銭二分 枳実 三両 六分 生姜 半斤 一銭二分
右三味、水五升を以って、煮て二升を取り、分温再服す。
水一合五勺を以って、煮て六勺を取る。

百三十四頁 裏 解説
標注                                            類聚方
心懸痛(シンケンツウ)=胸部に及ぶ痛み、ひっかかるような痛み
疝癖(センヘキ)=長く治らない痛み、癖になった痛み
橘皮(キッピ)=柑橘類、成熟果皮。

百三十五頁 表
標注                                       類聚方
四枚と作す。今之に従う。
○千金に、胸痺、胸中愊愊満が如く、噎塞習習痒の如し喉中渋燥唾沫を治すと作す。按ずるに、病源候論に、噎塞の下に、不利の二字有り。是なり。脈経に曰く、實脈大にして長微弦、指に応じ愊愊然と、注に、愊愊堅實の貌と、又外臺、甘草瀉心湯方後に云う、兼ねるに下利止まず、心中愊愊、堅して嘔、腸中鳴る者を療すと。按ずるに、愊愊は、塡塞の義なり。
「胸痺、」胸中気塞、短気、茯苓杏仁甘草湯之を主どる。橘皮枳実生姜湯も亦之を主どる。
為則按ずるに、当に嘔の證有るべし。

橘皮湯
胸中痺、嘔噦の者を治す。
橘皮 四両 
一銭 生姜 半斤 二銭
右二味、水七升を以って、煮て三升を取り、一升を温服す。水一合四勺を以って、煮て六勺を取る。「咽を下れば即ち癒ゆ、」
乾嘔噦、若しくは手足厥する者、

百三十五頁 表 解説
標注                                            類聚方
愊愊(フクフク)=人の心、ふさぐ、こもる?
塡塞(テンソク)=ふさぐ
噎塞(イツソク)=息がしにくいしゃっくり
習習(シュウシュウ)=盛んなさま

百三十五頁 裏
標注                                       類聚方
此の方、薬量水率相当たらず。且つ他薬の分量甚だ多し。人参は僅か一両、長沙の方中には絶えて此の如き者有らざらん。疑うに錯誤有らん。按ずるに、朱コウの活人書に、半夏有り。
小児哯乳、及び百日咳、此の方に半夏を加え、極めて効有り。腹症に随い、紫円、南呂丸を兼用す。
○三因方の曰く、咳逆、嘔、胃中虚冷、一噦毎に、八九聲相連なるに至り、気収まりて回せず、人を驚かすに至るを治すと。
橘皮竹茹湯
胸中痺、噦逆の者を治す。
橘皮 二斤 一に二升に作る 
一銭六分 竹茹 二升 四分 大棗 三十枚 三分八厘 生姜 半斤 四分 甘草 五両 二分五厘 人参 一両 五厘
右六味、水一斗を以って、煮て三升を取り、一升を温服す。
水二合を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。
噦逆の者、

茯苓飲
心下痞硬して悸し、小便不利、胸満

百三十五頁 裏 解説

哯乳(ケンニュウ)=飲んだ乳を吐きもどすこと
噦(エツ・カイ)=シャックリ
噦逆(エツギャク)=シャックリ

百三十六頁 表
標注                                       類聚方
胃反呑酸嘈囃等、心下痞硬、小便不利、或いは心胸痛む者を治す。又毎朝悪心し、苦酸水、或いは淡沫を吐すに、南呂丸陥胸丸等を兼用す。
老人、常に淡飲に苦しみ、心下痞満、飲食消えず、下利易き者を治す。
又、小児乳食化せず、吐下止まず、併せ百日咳、心下痞満、咳逆甚だしき者を治す。倶に半夏を加へば、殊に効有り。若し癖塊有り、或いは大便難なる者は、紫円を兼用す。
し自ずから宿水を吐す者を治す。
茯苓 人参 朮 各三両 
六分 枳実 ニ両 四分 橘皮 二両半 五分 生姜 四両 八分
右六味、水六升を以って、煮て一升八合を取り、分温三服す。
水二合を以って、煮て六勺を取る。人の八九里を行くが如く之を進む。
心胸中に停痰宿水有り。自ずから出水を吐し、後に心胸間に虚気満し、食す能わず、痰気を消し、飲食せしむ。
為則按ずるに、当に心下痞硬の證有るべし。

百三十六頁 表 解説
標注                                            類聚方
胃反(イホン)=食べたものを吐く
呑酸(ドンサン)=酸味のある胃液が口に逆流すること・胃酸過多
嘈囃(ソウザツ)=むねやけ、胃がひりひりしたり痛みを感じ酸水がこみ上げる

八九里=一里は500メートルとし約5キロ、人が歩くと約1時間と少し

竹茹
イネ科 ハチク(淡竹)の茎の中間層部分
効能:清熱、化痰、除煩の効果があり肺の熱を去って痰を除く。その他、動悸、不眠にも使用する。


茯苓
サルノコシカケ科 マツホドの菌核
効能:利尿、抗腫瘍、血糖降下、血液凝固抑制作用などがある。その他、精神安定や胃腸の働きを強める作用がある。


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