類聚方広義・第二木曜会 2014・4・10
木防己湯 木防已去石膏加茯苓芒消湯 防己茯苓湯 防己黄耆湯
水病喘満、心下痞堅、上気して渇す者を治す。陥胸丸、或いはズイ賓丸を兼用す。喘満の症無き者は、効少なし。学者験(タメ)せ。 金匱に曰く、欬逆倚息、短気して臥するを得られず。其の形腫るが如し、之を支飲と謂う。 黧は、犁黎、レイ皆通用す。正字通に曰く、黧、黄黒色なり。此の條の黧黒は、面部黄黒、浮垢 |
木防已湯 水病、喘満、心下痞堅、煩渇して上衝の者を治す。 木防已 三両 六分 石膏 鶏子大 一銭六分 桂枝 ニ両 四分 人参 四両 八分 右四味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温再服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。 膈間「支飲」、其の人喘満し、心下痞堅、面色黧黒、其の脈沈緊、之を得て数十日、医之を吐下するに癒えず、木 |
陥胸丸(カンキョウガン)=大黄8・甘遂・消石5の糊丸 ズイ賓丸(ズイヒンガン)=平水丸=呉茱萸・芒消・芫花(フジモドキの花蕾)・商陸・甘遂の糊丸 験(タメ)せ=こころみる、ためす |
有りて、色澤無きを謂うなり。 虚者は、虚軟なり。実者は、堅実なり。義は下に見ゆ。 脚気にて、一身面目浮腫、心下石硬、喘満気急、咽燥口渇、二便不利、胸動甚だしき者を治す。鐵砂練、陥胸丸、ズイ賓丸等を兼用す。 |
防己湯之を主どる。虚す者は即ち愈ゆ。実す者は三日復発す。復与え癒えざる者は、木防已湯去石膏加茯苓芒消湯宜しく之を主どる。 為則按ずるに、当に煩渇の證有るべし。 木防已去石膏加茯苓芒消湯 木防已湯證にして、煩渇せず、小便不利、痞堅甚だしき者を治す。 木防已湯方内に於いて、石膏を去り、茯苓三両、芒消三合を加う。 |
この症、木防已湯用い、痞堅和して、心下虚軟の者は、喘満全治し、復再発せず。若し心下堅実にて、依然解せざる者は、是れ病根の未だ除かざるなり。故に喘満一旦退いたと雖も、日せずして復発す。芒消茯苓を加え、以って其の堅塁を破り、水道を決すれば、則ち病の根柢は全て解散し、諸症脱然として去るや。又按ずるに、枳朮湯に曰く、心下堅、大なること盤の如く云云、其の症状、此の條と略同じ。方後に曰く、腹 | 防己 六分 桂枝 四分 人参 茯苓 各八分 芒消 一銭二分 右五味、水六升を以って、煮て二升を取り、滓を去り、芒消を内れ、再び微煎し、分温し再服す。水一八勺を以って、四味を煮、六勺を取る。芒消を内れ、消せしめて服すに微利せば則ち癒ゆ。 膈間「支飲」、其の人喘満し、心下し、心下痞堅、面色黧黒、其の脈沈緊、之を得て数十日、医之を吐下するに癒えず、木防己湯之を主どる。虚す者は即ち愈ゆ。実す者は三日復発す。復 |
堅塁(ケンルイ)=堅いとりで、原因となる病巣、病根 根柢(コンテイ)=根底、病気のねもと、土台 |
中耎、即ち当に散ずべし。耎と軟は同じ。柔なり。此の條虚す者は即ち愈うと、其の意全く同じ。以って此の條の虚の字は、虚軟の義と為すに見るべし。 宜しく症に随い朮附を加う。 聶聶動、ジュン動と略同じ。皆水気の為す所にして、茯苓の主治なり。 |
与え癒えざる者は、 為則按ずるに、当に心下悸の證有るべし。 防己茯苓湯 四肢聶聶動、水気皮膚に在りて、上衝する者を治す。 防己 黄耆 桂枝 各三両 六分 茯苓 六両 一銭二分 甘草 ニ両 四分 右五味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温し三服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。 |
耎(ゼン)=軟らかい 聶聶(ジョウジョウ)=ささやく、小声で話す |
小補韻會に曰く、聶は、動く貌。素問平人気象論に曰く、厭厭聶聶、楡莢落つるが如くと。又難経十五難に曰く、厭厭聶聶、楡葉循でるが如しと。 防己茯苓湯は、専ら肌表に水有る者を主どる。此の方は表裏に水有る者を治する。故に防己黄耆、皆防己茯苓湯より多し。 風毒腫、附骨疽、穿踝疽、稠膿巳に歇すも、稀膿止まず、或いは痛み、或いは痛まず、身体痩削、或いは浮腫の見(現)る者を治す。若し悪寒、或いは下利寝汗の者は、更に附子を加う |
「皮水を病と為し、」四肢腫れ、水気皮膚中に在り、四肢聶聶と動ず者、 防己黄耆湯 水病、身重く、汗出で悪風し、小便不利の者を治す。 防己 四両 六分 黄耆 五両 七分五厘 甘草 ニ両 三分 朮 生姜 各三両 大棗 十二枚 各四分五厘 右六味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温し三服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。 |
小補韻會(ショウホインカイ)=辞書の名前 厭厭(エンエン)=安らかで静かなこと、草木が茂ること 楡(ユ)=ニレ 循=ナ・でる 風毒腫(フウドクシュ)=流行性の腫れる病・転移性膿腫 附骨疽(フコッソ)=骨が化膿する病・結核・カリエス 穿踝疽(センカソ)=足のくるぶしが痛み孔より膿が出る病 稠膿(チョウノウ)=濃い膿 歇(ケツ)=つきる・やめる 稀膿(キノウ)=うすい膿 痩削(ソウソョウ)=痩せて細くなる |
を佳しと為す。伯州、応鐘、七宝等を兼用す。凡そ附骨疽、久しく治せず、或いは治して復発す者は、毒の根蔕除かざるを以ってなり。若しくは此の者、宜しく瘡口を劀開し、抉剔し以って病根を除盡すべし。治せざる者無し。 |
「風湿、」脈浮、身重く、汗出で悪風する者、風湿は一つに風水に作る。 ○「風水、脈浮は裏に在ると為す。」其の人或いは頭汗出で、表に他病無し、病者但下重く、腰従り以上、和すと為す。腰以下は当に腫れて陰に及び、以って屈伸し難きべし。 為則按ずるに、金匱要略の、分量煎法は古に非ず。今外臺秘要に従う。 枳朮湯 心下堅満、小便不利の者を治す。 枳実 七枚 二銭一分 朮 ニ両 六分 |
劀(カツ) 抉剔(ケツテキ)=えぐりさる 除盡(ジョジン)=除きつくす |