類聚方広義・第二木曜会  2014・4・10


木防己湯 木防已去石膏加茯苓芒消湯 防己茯苓湯 防己黄耆湯


百三十頁 表
標注                                       類聚方
水病喘満、心下痞堅、上気して渇す者を治す。陥胸丸、或いはズイ賓丸を兼用す。喘満の症無き者は、効少なし。学者(タメ)せ。

金匱に曰く、欬逆倚息、短気して臥するを得られず。其の形腫るが如し、之を支飲と謂う。
黧は、犁黎、レイ皆通用す。正字通に曰く、黧、黄黒色なり。此の條の黧黒は、面部黄黒、浮垢
木防已湯
水病、喘満、心下痞堅、煩渇して上衝の者を治す。
木防已 三両 
六分 石膏 鶏子大 一銭六分 桂枝 ニ両 四分 人参 四両 八分
右四味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温再服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。
膈間「支飲」、其の人喘満し、心下痞堅、面色黧黒、其の脈沈緊、之を得て数十日、医之を吐下するに癒えず、木

百三十頁 表 解説
標注                                            類聚方
陥胸丸(カンキョウガン)=大黄8・甘遂・消石5の糊丸
ズイ賓丸(ズイヒンガン)=平水丸=呉茱萸・芒消・芫花(フジモドキの花蕾)・商陸・甘遂の糊丸

験(タメ)せ=こころみる、ためす

百三十頁 裏
標注                                       類聚方
有りて、色澤無きを謂うなり。
虚者は、虚軟なり。実者は、堅実なり。義は下に見ゆ。


脚気にて、一身面目浮腫、心下石硬、喘満気急、咽燥口渇、二便不利、胸動甚だしき者を治す。鐵砂練、陥胸丸、ズイ賓丸等を兼用す。
防己湯之を主どる。虚す者は即ち愈ゆ。実す者は三日復発す。復与え癒えざる者は、木防已湯去石膏加茯苓芒消湯宜しく之を主どる。
為則按ずるに、当に煩渇の證有るべし。

木防已去石膏加茯苓芒消湯
木防已湯證にして、煩渇せず、小便不利、痞堅甚だしき者を治す。
木防已湯方内に於いて、石膏を去り、茯苓三両、芒消三合を加う。

百三十頁 裏 解説
標注                                            類聚方


百三十一頁 表
標注                                       類聚方
この症、木防已湯用い、痞堅和して、心下虚軟の者は、喘満全治し、復再発せず。若し心下堅実にて、依然解せざる者は、是れ病根の未だ除かざるなり。故に喘満一旦退いたと雖も、日せずして復発す。芒消茯苓を加え、以って其の堅塁を破り、水道を決すれば、則ち病の根柢は全て解散し、諸症脱然として去るや。又按ずるに、枳朮湯に曰く、心下堅、大なること盤の如く云云、其の症状、此の條と略同じ。方後に曰く、腹 防己 六分 桂枝 四分 人参 茯苓 各八分 芒消 一銭二分
右五味、水六升を以って、煮て二升を取り、滓を去り、芒消を内れ、再び微煎し、分温し再服す。
水一八勺を以って、四味を煮、六勺を取る。芒消を内れ、消せしめて服すに微利せば則ち癒ゆ。
膈間「支飲」、其の人喘満し、心下し、心下痞堅、面色黧黒、其の脈沈緊、之を得て数十日、医之を吐下するに癒えず、木防己湯之を主どる。虚す者は即ち愈ゆ。実す者は三日復発す。復

百三十一頁 表 解説
標注                                            類聚方
堅塁(ケンルイ)=堅いとりで、原因となる病巣、病根
根柢(コンテイ)=根底、病気のねもと、土台

百三十一頁 裏
標注                                       類聚方
、即ち当に散ずべし。耎と軟は同じ。柔なり。此の條虚す者は即ち愈うと、其の意全く同じ。以って此の條の虚の字は、虚軟の義と為すに見るべし。

宜しく症に随い朮附を加う。



聶聶動、ジュン動と略同じ。皆水気の為す所にして、茯苓の主治なり。
与え癒えざる者は、
為則按ずるに、当に心下悸の證有るべし。

防己茯苓湯
四肢聶聶動、水気皮膚に在りて、上衝する者を治す。
防己 黄耆 桂枝 各三両 
六分 茯苓 六両 一銭二分 甘草 ニ両 四分
右五味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温し三服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。

百三十一頁 裏 解説
標注                                            類聚方
耎(ゼン)=軟らかい
聶聶(ジョウジョウ)=ささやく、小声で話す

百三十二頁 表
標注                                       類聚方
小補韻會に曰く、聶は、動く貌。素問平人気象論に曰く、厭厭聶聶、莢落つるが如くと。又難経十五難に曰く、厭厭聶聶、でるが如しと。
防己茯苓湯は、専ら肌表に水有る者を主どる。此の方は表裏に水有る者を治する。故に防己黄耆、皆防己茯苓湯より多し。
風毒腫附骨疽穿踝疽稠膿巳にすも、稀膿止まず、或いは痛み、或いは痛まず、身体痩削、或いは浮腫の見(現)る者を治す。若し悪寒、或いは下利寝汗の者は、更に附子を加う
「皮水を病と為し、」四肢腫れ、水気皮膚中に在り、四肢聶聶と動ず者、

防己黄耆湯
水病、身重く、汗出で悪風し、小便不利の者を治す。
防己 四両 
六分 黄耆 五両 七分五厘 甘草 ニ両 三分 朮 生姜 各三両 大棗 十二枚 各四分五厘
右六味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温し三服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。

百三十二頁 表 解説
標注                                            類聚方
小補韻會(ショウホインカイ)=辞書の名前
厭厭(エンエン)=安らかで静かなこと、草木が茂ること
楡(ユ)=ニレ
循=ナ・でる
風毒腫(フウドクシュ)=流行性の腫れる病・転移性膿腫
附骨疽(フコッソ)=骨が化膿する病・結核・カリエス
穿踝疽(センカソ)=足のくるぶしが痛み孔より膿が出る病
稠膿(チョウノウ)=濃い膿
歇(ケツ)=つきる・やめる
稀膿(キノウ)=うすい膿
痩削(ソウソョウ)=痩せて細くなる

百三十二頁 裏
標注                                       類聚方
を佳しと為す。伯州、応鐘、七宝等を兼用す。凡そ附骨疽、久しく治せず、或いは治して復発す者は、毒の根蔕除かざるを以ってなり。若しくは此の者、宜しく瘡口を開し、抉剔し以って病根を除盡すべし。治せざる者無し。


「風湿、」脈浮、身重く、汗出で悪風する者、風湿は一つに風水に作る。
○「風水、脈浮は裏に在ると為す。」其の人或いは頭汗出で、表に他病無し、病者但下重く、腰従り以上、和すと為す。腰以下は当に腫れて陰に及び、以って屈伸し難きべし。
為則按ずるに、金匱要略の、分量煎法は古に非ず。今外臺秘要に従う。

枳朮湯
心下堅満、小便不利の者を治す。
枳実 七枚 
二銭一分 朮 ニ両 六分

百三十二頁 裏 解説
標注                                            類聚方
劀(カツ)
抉剔(ケツテキ)=えぐりさる
除盡(ジョジン)=除きつくす

木防己 (アオツヅラフジ)・日本
ツヅラフジ科
鎮痛、利尿、抗炎症作用
中薬大辞典では木防己の一つとしてアオツヅラフジ(根)としていますが大塚敬節先生はアオツヅラフジの茎を木防己湯に使用していました。
ところが3人に一人位、服後吐き気を伴う人がいてオオツヅラフジの茎を使用するようになります。
昭和48年くらい、私が大塚医院に勤めていた頃です。

アオツヅラフジ

漢防己 (オオツヅラフジ)・日本
ツヅラフジ科
中国ではオオツヅラフジを防己に当てていません。漢防己とは日本での呼称でオオツヅラフジを当てています。
民間でも関節痛や筋肉痛に用いられています。服用しても特に副作用も無く安心して用いられます。
漢方製薬メーカーの木防己湯はオオツヅラフジの茎を使用しています。

オオツヅラフジ


漢防己の生薬(オオツヅラフジ)

黄耆
マメ科
利尿、強壮、降圧、末梢血管拡張作用

キバナオウギと思われる黄耆の生薬

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