類聚方広義・第二木曜会  2014・12・11

已椒藶黄丸 葶藶大棗瀉肺湯 十棗湯

百四十頁 裏
標注                                       類聚方
謹んで按ずるに、此の章は、仲景氏の辭気に非ず。方意も亦た明らかならず。疑うらくは仲景の方に非ず。外臺、古今録験を引いて、而して傷寒論を引かずと。亦た以って証すべけん。然れども賦質脆薄の人、或いは久病にて羸痩、及び老人にて血液枯燥する者、此の方を以って、緩緩に転泄するも亦た佳し。
麻子仁 二升 四十銭 芍薬 枳実 各半斤 厚朴 一尺 各十六銭 大黄 一斤 三十二銭 杏仁 一升 二十四銭 
右六味、末と為し、煉蜜にて丸と為すに、桐子大とす。十丸を飲服す。
日に三服す。漸加するは知るを以って度と為せ。
白湯を以って一銭を服す。
「趺陽の脈
浮にして、浮は則ち胃気強く、濇は則ち小便数、浮と濇相博ち、」大便則ち難き、「其の脈は約と為す。」


已椒藶黄丸
腹満、口舌乾燥、二便澀滞する者を治す。

百四十頁 裏 解説
標注                                            類聚方
辭気(ジキ)=ことば
賦質脆薄(フシツゼイハク)=生まれもって体の弱い人
漸加(ゼンカ)=次第に量を増す・加える
濇(ショク)=しぶる・ひっかかる

百四十一頁 
標注                                       類聚方
按ずるに、稍増の上に、疑うらくは不知の二字を脱す。

金匱に曰く、其の人素盛んなるも今痩せ、水の腸閒を走り、瀝瀝たる聲有り。之を痰飲と謂う。按ずるに、脈經、千金、倶に淡飲に作る。是なり。

葶藶に、苦の二種有り。苦きを良しと為す。炒りて用う。油気を発すを以って、度と為す。本草綱目附方に、搗の字の下に、未蜜の二字有り。従うべし。
防己 椒目 葶藶 大黄 各一両 二銭
右四味、之を末とし、密にて丸めること梧子大の如く、「食に先んじて、」一丸を飲服す。白湯を以って一銭を服す。日に三服す。稍増すに「口中津液有りて、渇す者は、芒消半両を加う。」
腹満し、口舌乾燥、「此れ腸間に水気有り。」

葶藶大棗瀉肺湯
浮腫咳逆し、喘鳴迫塞、胸満強急の者を治す。
葶藶を搗きて丸めるに弾丸大の如し 
五分 大棗 十二枚 三銭

百四十一頁 表 解説
標注                                            類聚方
瀝瀝(レキレキ)=したたる音の形容
甜(テン)=うまい、あまい
椒目(ショクモク)=サンショウの種
梧子(ゴシ)=梧桐子のことか

百四十一頁 裏
標注                                       類聚方
肺廱云云の二症に、此の方を用いる者は、其の膿の未だ成らざるに乗じ、而して之を奪う者なり。若し発熱悪寒、煩渇等の症有る者は、当に越婢加半夏湯、麻杏甘石湯、大青龍湯等を撰用すべし。兼ねて十棗湯を服し、時に紫円白散等を以って、之を攻め治を得る。

此の方、外臺に朱雀湯と名づく。久病にして、癖飲停痰消えず、
右先に水三升を以って、棗を煮て二升をを取る。棗を去り葶藶を内れ、煮て一升を取り、頓服す。水一合八勺を以って、先ず大棗を煮て、一合二勺を取り、大棗を去り、葶藶を内れ、煮て六勺を取る。
「肺廱、」喘し臥するを得られず、○「肺廱、」胸満脹、一身面目浮腫し、鼻塞して清涕出で、香臭酸辛を聞かず、咳逆上気し、喘鳴迫塞、○「支飲、」息するを得られず、

十棗湯
病胸腹に在りて掣痛する者を治す。
芫花 甘遂 大戟

百四十一頁 裏 解説
標注                                            類聚方
芫花(ゲンカ)=ジンチョウゲ科 フジモドキの花蕾
甘遂(カンズイ)=カンズイ=ナツトウダイ(日本)
大戟(タイゲキ)=タカトウダイ

百四十二頁 
標注                                       類聚方
胸膈上に在りて、液液とし、時に頭痛、若しくは眼睛攣り、身體手足十指の甲盡く黄なるを療す。又た脇下支満し、飲みて輒ち脇下に引き痛むを治す。羸は、玉篇に曰く、弱なり、劣なりと。

支飲咳嗽、胸脇掣痛、及び肩背手脚走痛する者を治す。○通風、支體走注、手足微腫する者には、甘草附子湯を与え、此の方を兼用すれば、掎埆の功有り。丸と為し用うも亦た佳し。

太陽中風、下利嘔逆云云、是れ素宿飲有るの人に、間ま若の症有り。其の効
右三味、等分にして、各別に擣きて散と為し、水一升半を以って、先ず大棗の肥えるもの十枚を煮て、八合を取り、滓を去り薬末を内れ、「強人は一銭ヒを服し、羸人は半銭を服す。」之を温服し、平旦に服す。水一合を以って、先ず大棗三銭を煮て、六勺を取り、滓を去り薬末一銭を内れ、頓服す。若し下ること少なく、病除かれざる者は、明日更に服すに、半銭を加う。快下利を得た後、糜粥にて自ずから養う。
「太陽中風、」下利嘔逆、「表解す者、」及ち之を攻むべし。其の人チュウチュウと汗出で、発作時に有り、頭痛、心下痞硬満し

百四十二頁 表 解説
標注                                            類聚方
液液(エキエキ)=湿ったような、溶けるような
眼睛(ガンセイ)=ひとみ、まなこ
輒(スナワ)ち=すぐに
羸(ルイ)=弱い・痩せた・やつれた
掣痛(セイツウ)=引っ張られるような痛み
走注(ソウチュウ)=
掎埆(キカク)の功=思いどうりになる、掎は鹿の後ろ足を持つ、埆は角を持つ
羸人(ルイジン)=痩せた人、やつれた人
平旦(ヘイタン)=朝方
糜粥(ビジュク)=かゆ

チュウチュウ=汗が絶え間なく出る形容字

百四十二頁 裏
標注                                       類聚方
響くが如し。玉函に、短気の下、汗出の二字無し。
水脇下に在りて、咳唾引痛する者、之を懸飲と謂う。

脇下に引きて痛み、乾嘔短気し、汗出で悪寒せざる者、「此れ表解し裏未だ和せざるなり、」○病「懸飲」者、○「咳家、其の脈弦は水有ると為す、」○夫れ「支飲家、」、欬煩胸中痛む者、「卒かに死なず、一百日或いは一歳に至る、」
百四十二頁 裏 解説
標注                                            類聚方
卒(ニワ)か=突然

甘遂 カンズイ
トウダイグサ科 カンズイの根を使用
効能:通便、逐水の効能があるが毒性が強い。浸出性肋膜炎の胸水、肝硬変の腹水、腎炎の浮腫などに使うことがある。
激しい瀉下作用や利尿作用があるため注意が必要。

中葯大辞典より

甘遂=カンズイを日本ではナツトウダイに当てる↓


甘遂=カンズイとしてナツトウダイの根を使う↓


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