類聚方広義・第二木曜会 2014・11・13
蜜煎導 大猪膽汁 麻子仁丸
以って此の方及び兎餘糧湯等を用うれば、猶門に鑰して盗を養うがごとし。其の変寧んぞ測るべけんや。学者之を思え。 傷寒、熱気熾盛、汗出多く、小便自利、津液枯竭、肛中乾燥し、鞕便にて通ずを得られざる者、及び諸病にて大便不通、嘔吐し薬汁入らざる者、老人にて血液枯燥し、大便秘閉、小腹満痛の者、共に此の方に宜し。蜜一合、之を温め、喞筒以って肛中に射入するを、捷径と為す。 雖鞕の上に、玉函には、大便の二字有り。是なり。 外臺秘要、土瓜根方に、 |
蜜煎導 肛中乾燥し、大便通ぜざる者を治す。七合 右一味、銅器中に内れ、微火にて之を煎り、稍凝りて飴状に似れば、之を擾し焦著せしむる勿るべし。丸めるべきを俟ち、手を併せ捻りて挺を作り、頭を鋭くせしめ、大きさ指の如く、長さ二寸ばかり。熱時に当たり急ぎて作るべし。冷めば則ち鞕し。以って穀道中に内れ、手を以って急いで抱く、大便せんと欲す時に及ち之を去る。 「陽明病、自汗出で若し発汗し小便自利する者は、此れ津液内竭すと為す。鞕きと雖も之を攻むべからず。」当に自ずから大便せんと欲すを須ちて、 |
鑰(カギ)し 寧(イズク)んぞ=なんぞ~ 鞕便(ゴウベン)=かたい便 喞筒(ソクトウ)=水を吹きかけるポンプ 捷径(ショウケイ)=近道・手近な方法 |
煎(イ)り=加熱して 凝(コ)り=凝固さして 擾(ジョウ)し=ならし・なつかせて 焦著(ショウチョ)=焦げ付かせる 俟(マ)ち=時をはかって 捻(ヒネ)り=ひねる 鞕(カタ)し=固まる 抱(イダ)く=かかえる 竭(ケツ)=つきる |
生土瓜根を取り、擣きて汁を取り、水を以って之を解き、筒中に於きて吹き下部に入れば、即ち通ずと。 | 宜しく蜜煎導にて之を通ずべし。若し土瓜根、及び大猪膽汁、皆導と為すべし。 大猪膽汁 大猪膽 一枚 汁を瀉し、醋と少し許り和し、以って穀道中に灌ぎて、一食頃如り、当に大便出ずべし。 主治は蜜煎導下に見ゆ。 麻子仁丸 平日大便秘する者を治す。 |
擣(ツ)く=つき砕く | 一食頃(イッショクケイ)=約三十分 如(バカ)り=時間を現す |
謹んで按ずるに、此の章は、仲景氏の辭気に非ず。方意も亦た明らかならず。疑うらくは仲景の方に非ず。外臺、古今録験を引いて、而して傷寒論を引かずと。亦た以って証すべけん。然れども賦質脆薄の人、或いは久病にて羸痩、及び老人にて血液枯燥する者、此の方を以って、緩緩に転泄するも亦た佳し。 | 麻子仁 二升 四十銭 芍薬 枳実 各半斤 厚朴 一尺 各十六銭 大黄 一斤 三十二銭 杏仁 一升 二十四銭 右六味、末と為し、煉蜜にて丸と為すに、桐子大とす。十丸を飲服す。 日に三服す。漸加するは知るを以って度と為せ。白湯を以って一銭を服す。 「趺陽の脈浮にして濇、浮は則ち胃気強く、濇は則ち小便数、浮と濇相博ち、」大便則ち難き、「其の脈は約と為す。」 已椒藶黄丸 腹満、口舌乾燥、二便澀滞する者を治す。 |
辭気(ジキ)=ことば 賦質脆薄(フシツゼイハク)=生まれもって体の弱い人 |
漸加(ゼンカ)=次第に量を増す・加える 濇(ショク)=しぶる・ひっかかる |