類聚方広義・第二木曜会  2014・10・9

芎帰膠艾湯

百三十七頁 表
標注                                       類聚方
之を用うれば胎即下る。又血淋、腸風、撰用するに皆効有り。以って上諸症に、大黄を加え煎服すを佳と為す。
○此の章は文義明らかならず。程林の曰く、当に闕文有るべし。按ずるに、六月自り時胎までの十二字を刪去すれば、則ち其の義稍通ず。後に断ずは当に断じて後と作すべし。舊本はの字誤りて不血の二字と作す。今之に従う。衃、玉篇に曰く、凝血なり。衃の字は、素問五臓生成論に見ゆ。此の條の其の症に随うべき者は、妊娠を害すに止む。則ち六月以下、本委曲にて辨を費やすに足らざるなり。○史扁鵲傳に曰く、五臓癥結に見ると。玉篇に曰く、癥は、腹の結病なりと。蓋し腹中に凝結の毒有り、之を按じ手に応じ、徴知すべきを謂う。○この方に、大黄を倍加し、散と為し、兼用方と為す。或いは単用と為せば、其の功は丸に勝る。


妊婦顚躓し、胎動き心をき、腹痛みて腰股に引く、或いは胎の萎縮状なるを覚う、或いは血下り止まざる者、此の方を用うべし。胎ざれば則ち安し。若し
三月衃なり。所以血止まざる者は、癥去らざるが故なり。当に其の癥を下すべし。」
為則按ずるに、当に衝逆心下悸の證有るべし。又曰く、是れ唯婦人の病を治すの方にあらず。










芎帰膠艾湯

漏下、腹中痛、及び吐血下血する者を治す。

百三十七頁 表 解説
標注                                            類聚方
闕文(ケツブン)=かけた文章
刪去(サンキョ)=けずり去る
衃(ハイ)=赤黒色の淤血、または胚に同じ
委曲(イキョク)=遠回しに言う

顚躓(テンチ)=つまずいてひっくりかえる
沖(ツ)く=上に突き抜ける
殞(イン・オチ)る=死ぬ

百三十七頁 裏
標注                                       類聚方
れば即ち産す。
○腸痔、下血綿綿として止まず、身體痿黄、起きれば則ち眩暈し、四支に力無く、少腹刺痛する者を治す。若し胸中煩悸し、心気鬱塞、大便燥結する者は、黄連解毒湯、瀉心湯を兼用す。
○血痢止まずして、腹満熱實の症無し、唯腹中攣痛、唇舌乾燥する者は、此の方間効有り。
此の条は当に、四段に倣して読むべし。曰く漏下。曰く半産後、続いて下血し絶えざる。曰く妊娠下血。曰く妊娠し腹中痛む。金艦に曰く、胞阻は、腹中の気血和せずして、其の化育を阻むなりと。
○婦人
芎藭 阿膠 甘草 各ニ両 三分 艾葉 当帰 各三両 四分五厘 芍薬 四両 六分 乾地黄 六両 九分
右七味、膠を内れ、消し盡し、一升を温服す。
水一合、酒一合を以って、煮て六勺を取り滓を去り、膠を内れ、消せしむ。日に三服す。癒えずんば更に作る。
師の曰く、婦人漏下の者有り。半産後因って続いて下血し都く絶へざる有り。妊娠下血する者有り。假令妊娠腹中痛むは、「胞阻と為す。」

百三十七頁 裏 解説

痿黄(イオウ)=血色の無い黄色
煩悸(ハンキ)=煩躁感と動悸
燥結(ソウケツ)=乾いた便の便秘
倣(ナ)し=つくる
漏下(ロウゲ)=不正出血
胞阻(ホウソ)=胎児を包む膜等の発育不良
気血(キケツ)=気と血
化育(カイク)=成長育成
芎藭=川芎

百三十八頁 表
標注                                       類聚方
妊む毎に堕胎知る者有り。毎産育たざる者有り。若のごとき症の人は、始終此の方を服し、五月以後、厳に枕席を慎めば、以って不育の患を免るべし。若し浮腫し小便不利の者は、当帰芍薬散に宜し。



腸澼滑脱し、脈弱く力無し、大便粘稠にして膿の如くなるを治す。若し腹痛乾嘔すれは、桃花湯に宜し。又た二方を合わせて用うも、亦た妙なり。
為則按ずるに、凡そ吐血下血諸血證を治すは、男子婦人を分けず。


赤石脂兎餘糧湯

毒臍下に在りて、利の止まず者を治す。
赤石脂 兎餘糧 各一斤 
一銭五分
右二味、水六升を以って、煮て二升を取る。滓を去り、分温三服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。
「傷寒、」湯薬を服し、下利止まず、心下痞硬、瀉心

百三十八頁 表 解説
標注                                            類聚方
堕胎(ダタイ)=流産
免(マヌガ)る
枕席(チンセキ)=セックス
腸澼滑脱(チョウヘキカツダツ)=脱肛
赤石脂=ケイ酸アルミニウム・マグネシウム・その他を含む酸化鉱物
兎餘糧=褐色鉄鉱石・酸化第二鉄

百三十八頁 裏
標注                                       類聚方
医理中を以っては、千金に、人参湯を以ってに作る。復利止まずは、玉函に、若し止まざればに作る。倶に是なり。按ずるに、若し其の小便を利せんと欲せば、猪苓湯、真武湯を撰用すべし。






按ずるに、乾姜の分量甚だ少なし。疑うべし。外臺、阮氏桃花湯を載すに、
湯を服し已り、復た他薬を以って之を下すに利止まず、医理中を以って之に与えるも、利益すに甚だし、理中は、中焦をす。此の利は下焦に在り。赤石脂兎餘糧湯之を主どる。復た利止まず者は、当に其の小便を利すべし。
為則按ずるに、此の章は疾病の医義に非ず。故に取らず。然りと雖も、赤石脂兎餘糧湯の證は、此れに従うべしなり。又た按ずるに、当に其の小便を利すべしの下に、方を脱す。


桃花湯
腹痛下利し、便膿血する者を治す。

百三十八頁 裏 解説
標注                                            類聚方
理(リ)す=ととのえる

百三十九頁 表
標注                                       類聚方
赤石脂八両、粇米一升、乾姜四両に作る。余は多く此の方を用う。
○呉儀洛の曰く、服時に、又た末方寸ヒを加うは、留滞し以って腸胃を固むるなりと。
○便膿血は、腸垢と血と同じく出ず者にて、病源の痢候中に謂う所の膿涕なるのみ。腸癰の、下利眞膿血と、同じからず。
○痢疾累日の後、熱気巳に退きて、脈遅弱或いは微細、腹痛し下利止まず、便膿血する者、此の方宜し。若し身熱し脈実し、嘔渇、裏急後重などの症の、猶存す者は、当に先ず其の症に随い、疎利の剤を以って、熱毒を駆逐し、腸胃を蕩滌すべし。若し腹痛下利便膿血の症に執り
赤石脂 一斤 一銭六分 乾姜 一両 一分 粳米 一升 一銭
右三味、水七升を以って、米を煮て熟せしめ、滓を去りて、七合を温め、赤石脂末を方寸ヒ内れる。
一銭日に三服す。水二合を以って、煮て六勺を取る。赤石脂末を内れ服す。若し一服にして癒ゆれば、餘は服す勿れ。
「少陰病、」下痢し便膿血の者、○「少陰病、二三日より四五日に至り、」腹痛し小便不利、下利止まず、便膿血の者、○下利便膿血の者、

百三十九頁 表 解説
標注                                            類聚方
粇米(コウベイ)=粳米、そまつな米
病源=病源候論
眞膿血(シンノウケツ)=鮮血が混じる膿?
腸垢(チョウコウ)=糞便
執(ト)り=とらわれ、拘泥して

百三十九頁 裏
標注                                       類聚方
以って此の方及び兎餘糧湯等を用うれば、猶門に鑰して盗を養うがごとし。其の変寧んぞ測るべけんや。学者之を思え。

百三十九頁 裏 解説
標注                                            類聚方
鑰(カギ)し
寧(イズク)んぞ=なんぞ~

芎藭=川芎
セリ科 センキュウの根茎
効能:活血作用・止痛作用・血管拡張作用


当帰
セリ科 トウキの根
効能:調経作用(月経異常、妊娠や出産時の異常)・補血作用・止痛作用



若い株のトウキ

地黄
ゴマノハグサ科 ジオウの根
効能:補血(清熱涼血、補陰)・滋養強壮


阿膠
ウマ科 ロバの皮を煮込み粗製ゼラチンを固めたもの

山東阿膠


ニカワ 三千本膠

艾葉
キク科 ヨモギの葉
止血作用・止痛作用


ホーム