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類聚方広義・第二木曜会  2014・1・9


甘草瀉心湯 生姜瀉心湯 旋覆花代赭石湯 呉茱萸湯


百二十二頁 裏
標注                                       類聚方
心下満し硬痛云云、説は小柴胡湯に見ゆ。 他薬を以って之を下し、柴胡の證仍を在る者は、復柴胡湯を与う。此れ巳に之を下すと雖も、逆と為さず。必ず蒸蒸として振るい、即ち発熱し汗出で而して解す。若し心下満にして硬痛の者は、此れ「結胸と為すなり。」大陥胸湯之を主どる。但満して痛まざる者は、「此れを痞と為す。」柴胡之に与うに中らず。半夏瀉心湯に宜し。
○嘔して腸鳴り、心下痞の者、
為則按ずるに、心下痞、当に心下痞硬に作るべし。


甘草瀉心湯 半夏瀉心湯證にして、而して心煩し

百二十二頁 裏 解説
標注                                            類聚方

百二十三頁 表
標注                                       類聚方
此の方、半夏瀉心湯方内に、更に甘草一両を加う。而して其の主治する所大いに同じからず。曰く下利日に数十行にして、穀化せずと。曰く乾嘔心煩し、安きを得られずと。曰く黙黙と眠らんと欲すも、目閉ずを得られず、臥起安からざる者と、此れら皆急迫する所有りて(而然の者は)然るは、甘草を君薬と為すの所以なり。
慢驚風、此の方に宜しき者有り。
安きを得られざる者を治す。
半夏瀉心湯方内に於いて、甘草一両を加う。
半夏 
九分 甘草 六分 黄ゴン 乾姜 人参 大棗 各四分五厘 黄連 一分五厘
右七味、煮て半夏瀉心湯の如くす。
「傷寒中風、」医反って之を下し、其の人下利するに、日に数十行、穀化せず、腹中雷鳴、心下痞硬して満、乾嘔し心下安きを得られず、医心下痞と見るも、病盡きざると謂う。復之を下す。

百二十三頁 表 解説
標注                                            類聚方
満驚風(マンキョウフウ)=こどものひきつける病、慢性発作、痙攣、虚脱弛緩を繰り返す

百二十三頁 裏
標注                                       類聚方
其の痞益すに甚だし。「此れは熱結二非ず。但胃中虚し、客気上逆するを以って、故に硬から使むなり。」○「狐惑の病為る、状は傷寒の如く、」黙黙と眠らんと欲すも、目閉ずるを得られず。臥起安からず、喉を蝕むを「惑と為す」、陰を蝕むを「狐と為す」、飲食を欲せず、食臭を聞くを悪み、其の面乍赤く乍黒く乍白し。「上部に於いて蝕み」則ち声喝す、
為則按ずるに、当に急迫の證有るべし。

生姜瀉心湯
半夏瀉心湯證にして、乾嘔食臭し、下利する者を治す。

百二十三頁 裏 解説
標注                                            類聚方

百二十四頁 表
標注                                       類聚方

凡そ噫気乾嘔を患い、或いは嘈囃呑酸、或いは平日飲食毎に悪心妨満、脇下に水飲升降する者、其の人多くは心下痞硬、或いは臍上に凝塊有り、長く此の方を服し、五椎自り十一椎に至り、及び章門に灸するに、日に数百壮、消塊丸、消石大円等を兼用すれば、自然と効有り。
噫は、説文に曰く、食臭気也と、水気は飲を謂うなり。
半夏瀉心湯方内に於いて、乾姜ニ両を減じ、生姜四両を加う。
半夏 
九分 甘草 人参 黄ゴン 大棗 各四分五厘 黄連 乾姜 各一分五厘 生姜 六分
右八味、煮て半夏瀉心湯の如く。
「傷寒、汗出で解した後、胃中和せず、」心下痞硬、乾嘔食臭し、脇下に水気有りて、腹中雷鳴、下利する者は、

施覆花代赭石湯
心下痞硬し、噫気除かざる

百二十四頁 表 解説
標注                                            類聚方
嘈囃(ソウザツ)=むねやけ、胃がひりひりしたり痛みを感じ酸水がこみ上げる
呑酸(ドンサン)=酸味のある胃液が口に逆流すること・胃酸過多
妨満(ボウマン)=たくさん食べれない、食欲不振
五椎自り十一椎=大椎を一とし下りてきた椎骨上、或いは骨間のツボ
章門(ショウモン)=足の厥陰肝経13穴
凝塊(ギョウカイ)=凝り固まった塊、ガン、腫瘍など
消塊丸(ショウカイガン)=大黄2・消石(芒消)3 糊丸 =承気丸=大黄消石丸


百二十四頁 裏
標注                                       類聚方
人参ニ両は、疑うらくは三両の誤りなり。

呑酸嘈囃、心下痞硬の者に、亦良し。
者を治す。
施覆花 甘草 各三両 大棗 十二枚 
各四分五厘 人参 ニ両 三分 生姜 五両 七分五厘 半夏 半升 九分 代赭石 一両 一分五厘
右七味、水一斗を以って、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取る。一升を温服す。
水二合を以って、煮て一合二勺を取り、滓を去り、再煎して六勺を取る。日に三服。
「傷寒、」発汗若しくは吐し若しくは下し、解した後、心下痞硬、噫気


百二十四頁 裏 解説
標注                                            類聚方
呑酸(ドンサン)=酸味のある胃液が口に逆流すること・胃酸過多
嘈囃(ソウザツ)=むねやけ、胃がひりひりしたり痛みを感じ酸水がこみ上げる

百二十五頁 表
標注                                       類聚方
噦逆に此の方の宜しき者有り。按ずるに、外臺に曰く、食訖醋咽多噫と、
○霍乱、吐せず下らず、心腹激痛し死せんと欲す者は、先ず備急円、或いは紫円を用い、継いで此の方を投ぜば、則ち吐せざる者無し。吐せば則ち下らざる者も無し。巳に快吐下を得れば、則ち苦楚脱然と除く。其の効至速なること、知らざるべからず。
湯を得て反って激ししき者、益すに此の方を与えば、則ち嘔気自ずから止む。但一貼薬を二三次に之を服すを佳と為す。此れ従来の註家の、唯字句に執りて解を為す者にして、能く知る所に非ざるなり。学者宜しく親験し自得すべし。
○吐利、手
除かざる者は、

呉茱萸湯
嘔して胸満し、心下痞硬する者を治す。
呉茱萸 一升 
一銭 人参 三両 大棗 十二枚 各六分 生姜 六両 一銭二分
右四味、水七升を以って、煮て二升を取り、滓を去り、七合を温服す。
水二合を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。
穀を食し嘔せんと欲す者は、「陽明に属すなり、」呉茱萸湯之を主どる。湯を得て反って激しき者は、「上焦に属すなり、」○「少陰病、」吐利し、手足

百二十五頁 表 解説
標注                                            類聚方
噦逆(エツギャク)=しゃっくりと嘔吐
食訖(ショクキツ)=食を終える
醋咽(サクイン)=むねやけ
多噫(タアイ)=おくびが多い
備急円(ビキュウエン)=巴豆・乾姜・大黄の末を蜜で丸剤にしたもの
紫円(シエン)=巴豆・赤石脂・代赭石・杏仁の末を糊で丸剤にしたもの
苦楚(クソ)=苦しくつらいこと

脱然(ダツゼン)=さっぱりと

百二十五頁 裏
標注                                       類聚方
足厥冷、煩躁し死せんと欲す者、四逆湯症と、相似るも同じからず。四逆湯は、下利厥冷を主どり、此の方は嘔吐煩躁を主どる。是れ其の別なり。又脚気冲心、煩憒嘔逆、悶乱する者を治す。

小建中湯は、裏急、拘攣急痛を治し、此の方は、寒飲升降し、心腹激痛して嘔するを治す。故に疝瘕、腹中痛む者を治す。又ユウ虫を挟む者を治す。

消息服度は、宜しく導守すべし。
厥冷し、煩躁して死せんと欲す者は、○嘔して胸満の者は、○乾嘔し吐すに涎沫、頭痛の者は、

大建中湯
胸腹大痛し、嘔して飲食能わざる者 、腹皮起き、頭足有るが如き者を治す。
蜀椒 二合 五分三厘 乾姜 四両 一銭四分 人参 ニ両 七分
右三味、水四升を以って、煮て二升を取り、滓を去り、膠飴一升を内れ、微火にて煎じ一升半を取る。分温再服す。水一合六勺を以って、

百二十五頁 裏 解説
標注                                            類聚方
脚気冲心(カッケチュウシン)=心を突き上げる、胸部が圧迫されたような病症、動悸、嘔吐、喘鳴、悶乱など
疝瘕(センカ)=ガンのような塊ではなくガスなどによる移動性の腹塊


甘草瀉心湯 標注にある五椎より十一椎、及び章門の位置
(各経絡の最初のツボを明記 吉本作図)


中神琴渓 生生堂治験に出てくる狐狸病(舞踏病)に甘草瀉心湯 原文↓
 訳文(小田慶一訳)



施覆花
キク科 オグルマ
効能:化痰 止咳 止嘔
(中薬大辞典より引用)


代赭石
ケイ酸アルミニウム化合物 マンガン・マグネシウム・カルシウムなどを含有するものもある
効能:利水、消腫、止嘔、鎮動悸


呉茱萸
ミカン科 ゴシュユ果実(雌果)
効能:止痛、温裏、駆虫



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