8
類聚方広義・第二木曜会 2014・1・9
甘草瀉心湯 生姜瀉心湯 旋覆花代赭石湯 呉茱萸湯
心下満し硬痛云云、説は小柴胡湯に見ゆ。 | 他薬を以って之を下し、柴胡の證仍を在る者は、復柴胡湯を与う。此れ巳に之を下すと雖も、逆と為さず。必ず蒸蒸として振るい、即ち発熱し汗出で而して解す。若し心下満にして硬痛の者は、此れ「結胸と為すなり。」大陥胸湯之を主どる。但満して痛まざる者は、「此れを痞と為す。」柴胡之に与うに中らず。半夏瀉心湯に宜し。 ○嘔して腸鳴り、心下痞の者、 為則按ずるに、心下痞、当に心下痞硬に作るべし。 甘草瀉心湯 半夏瀉心湯證にして、而して心煩し |
此の方、半夏瀉心湯方内に、更に甘草一両を加う。而して其の主治する所大いに同じからず。曰く下利日に数十行にして、穀化せずと。曰く乾嘔心煩し、安きを得られずと。曰く黙黙と眠らんと欲すも、目閉ずを得られず、臥起安からざる者と、此れら皆急迫する所有りて(而然の者は)然るは、甘草を君薬と為すの所以なり。 慢驚風、此の方に宜しき者有り。 |
安きを得られざる者を治す。 半夏瀉心湯方内に於いて、甘草一両を加う。 半夏 九分 甘草 六分 黄ゴン 乾姜 人参 大棗 各四分五厘 黄連 一分五厘 右七味、煮て半夏瀉心湯の如くす。 「傷寒中風、」医反って之を下し、其の人下利するに、日に数十行、穀化せず、腹中雷鳴、心下痞硬して満、乾嘔し心下安きを得られず、医心下痞と見るも、病盡きざると謂う。復之を下す。 |
満驚風(マンキョウフウ)=こどものひきつける病、慢性発作、痙攣、虚脱弛緩を繰り返す |
其の痞益すに甚だし。「此れは熱結二非ず。但胃中虚し、客気上逆するを以って、故に硬から使むなり。」○「狐惑の病為る、状は傷寒の如く、」黙黙と眠らんと欲すも、目閉ずるを得られず。臥起安からず、喉を蝕むを「惑と為す」、陰を蝕むを「狐と為す」、飲食を欲せず、食臭を聞くを悪み、其の面乍赤く乍黒く乍白し。「上部に於いて蝕み」則ち声喝す、 為則按ずるに、当に急迫の證有るべし。 生姜瀉心湯 半夏瀉心湯證にして、乾嘔食臭し、下利する者を治す。 |
凡そ噫気乾嘔を患い、或いは嘈囃呑酸、或いは平日飲食毎に悪心妨満、脇下に水飲升降する者、其の人多くは心下痞硬、或いは臍上に凝塊有り、長く此の方を服し、五椎自り十一椎に至り、及び章門に灸するに、日に数百壮、消塊丸、消石大円等を兼用すれば、自然と効有り。 噫は、説文に曰く、食臭気也と、水気は飲を謂うなり。 |
半夏瀉心湯方内に於いて、乾姜ニ両を減じ、生姜四両を加う。 半夏 九分 甘草 人参 黄ゴン 大棗 各四分五厘 黄連 乾姜 各一分五厘 生姜 六分 右八味、煮て半夏瀉心湯の如く。 「傷寒、汗出で解した後、胃中和せず、」心下痞硬、乾嘔食臭し、脇下に水気有りて、腹中雷鳴、下利する者は、 施覆花代赭石湯 心下痞硬し、噫気除かざる |
嘈囃(ソウザツ)=むねやけ、胃がひりひりしたり痛みを感じ酸水がこみ上げる 呑酸(ドンサン)=酸味のある胃液が口に逆流すること・胃酸過多 妨満(ボウマン)=たくさん食べれない、食欲不振 五椎自り十一椎=大椎を一とし下りてきた椎骨上、或いは骨間のツボ 章門(ショウモン)=足の厥陰肝経13穴 凝塊(ギョウカイ)=凝り固まった塊、ガン、腫瘍など 消塊丸(ショウカイガン)=大黄2・消石(芒消)3 糊丸 =承気丸=大黄消石丸 |
人参ニ両は、疑うらくは三両の誤りなり。 呑酸嘈囃、心下痞硬の者に、亦良し。 |
者を治す。 施覆花 甘草 各三両 大棗 十二枚 各四分五厘 人参 ニ両 三分 生姜 五両 七分五厘 半夏 半升 九分 代赭石 一両 一分五厘 右七味、水一斗を以って、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取る。一升を温服す。水二合を以って、煮て一合二勺を取り、滓を去り、再煎して六勺を取る。日に三服。 「傷寒、」発汗若しくは吐し若しくは下し、解した後、心下痞硬、噫気 |
呑酸(ドンサン)=酸味のある胃液が口に逆流すること・胃酸過多 嘈囃(ソウザツ)=むねやけ、胃がひりひりしたり痛みを感じ酸水がこみ上げる |
噦逆に此の方の宜しき者有り。按ずるに、外臺に曰く、食訖、醋咽多噫と、 ○霍乱、吐せず下らず、心腹激痛し死せんと欲す者は、先ず備急円、或いは紫円を用い、継いで此の方を投ぜば、則ち吐せざる者無し。吐せば則ち下らざる者も無し。巳に快吐下を得れば、則ち苦楚脱然と除く。其の効至速なること、知らざるべからず。 湯を得て反って激ししき者、益すに此の方を与えば、則ち嘔気自ずから止む。但一貼薬を二三次に之を服すを佳と為す。此れ従来の註家の、唯字句に執りて解を為す者にして、能く知る所に非ざるなり。学者宜しく親験し自得すべし。 ○吐利、手 |
除かざる者は、 呉茱萸湯 嘔して胸満し、心下痞硬する者を治す。 呉茱萸 一升 一銭 人参 三両 大棗 十二枚 各六分 生姜 六両 一銭二分 右四味、水七升を以って、煮て二升を取り、滓を去り、七合を温服す。水二合を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。 穀を食し嘔せんと欲す者は、「陽明に属すなり、」呉茱萸湯之を主どる。湯を得て反って激しき者は、「上焦に属すなり、」○「少陰病、」吐利し、手足 |
噦逆(エツギャク)=しゃっくりと嘔吐 食訖(ショクキツ)=食を終える 醋咽(サクイン)=むねやけ 多噫(タアイ)=おくびが多い 備急円(ビキュウエン)=巴豆・乾姜・大黄の末を蜜で丸剤にしたもの 紫円(シエン)=巴豆・赤石脂・代赭石・杏仁の末を糊で丸剤にしたもの 苦楚(クソ)=苦しくつらいこと 脱然(ダツゼン)=さっぱりと |
足厥冷、煩躁し死せんと欲す者、四逆湯症と、相似るも同じからず。四逆湯は、下利厥冷を主どり、此の方は嘔吐煩躁を主どる。是れ其の別なり。又脚気冲心、煩憒嘔逆、悶乱する者を治す。 小建中湯は、裏急、拘攣急痛を治し、此の方は、寒飲升降し、心腹激痛して嘔するを治す。故に疝瘕、腹中痛む者を治す。又ユウ虫を挟む者を治す。 消息服度は、宜しく導守すべし。 |
厥冷し、煩躁して死せんと欲す者は、○嘔して胸満の者は、○乾嘔し吐すに涎沫、頭痛の者は、 大建中湯 胸腹大痛し、嘔して飲食能わざる者 、腹皮起き、頭足有るが如き者を治す。 蜀椒 二合 五分三厘 乾姜 四両 一銭四分 人参 ニ両 七分 右三味、水四升を以って、煮て二升を取り、滓を去り、膠飴一升を内れ、微火にて煎じ一升半を取る。分温再服す。水一合六勺を以って、 |
脚気冲心(カッケチュウシン)=心を突き上げる、胸部が圧迫されたような病症、動悸、嘔吐、喘鳴、悶乱など 疝瘕(センカ)=ガンのような塊ではなくガスなどによる移動性の腹塊 |