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類聚方広義・第二木曜会 2013・9・12
百十四頁 表
枳実薤白桂枝湯 括ロウ薤白酒湯 括ロウ薤半夏湯
寒実結胸、熱症無き者とは、白散の正症なり。按ずるに、寒実結胸以下は、上文と意義相属さず。疑うらくは錯簡ならんや。且つ白散と小陥胸湯、其の主治は本より同じからず。豈濫投すべけんや。若し錯簡に非ずんば、其れ後人の補綴に出づるや疑いなし。五苓散標を、参看すべし。 世に所謂痰労、咳嗽胸満にして痛み、或いは胸肋肩背攣痛し、粘痰或いは唾血する者、此の方に宜し。当に胸満、脇背攣痛を以って |
○「病陽に在り、応に汗を以って之を解すべし。」反って冷水を以って之にソンす。若し之を灌げば、その熱はゴウ(キョウ)を被り、去るを得ず。彌よ更に益すに煩し、肉上粟起し。意(おもう)に水を飲まんと欲し、反って渇せざる者は、文蛤散を服すに、若し差えざる者は、五苓散を与う。「寒実結胸、」熱證無き者は、三物小陥胸湯を与う。白散も亦服すべし。 枳実薤白桂枝湯 胸痺、胸腹満痛、上逆する者を治す。 枳実 四枚 厚朴 四両 各七分 薤白 半升 一銭四分 |
濫投(ラントウ)=みだりに投ずる 補綴(ホテツ)=補いを書き込む、つづり加える |
灌(ソソ)ぐ=流しかける 彌(イヨイ)よ 肉上粟起(ニクジョウゾクキ)=とりはだ 文蛤(ブンゴウ)=はまぐり 薤白(ガイハク)=ラッキョウ |
目的と為すべし。南呂丸、或いは姑洗丸を兼用す。 二方の症治同じは、古義に非ざるなり。説は人参湯標に詳し。 胸痺にて、心胸痛み背に徹する者は、此の二方に非ずんば、治すること能わず。而も下方勝れりと為す。症に随い姑洗丸を兼用す。眞心痛にて息するを得ざる者、以下二方を撰用すべし。 |
桂枝 一両 一分八厘 括ロウ実 一枚 三分五厘 右五味、看ず五升を以って、先ず枳実厚朴を煮て、二升を取り、滓を去り、諸薬を内れ、煮て数沸し、分温三服す。水一合六勺を以って先ず二味を煮て、八勺を取り、滓を去り、諸薬を内れ、煮て六勺を取る。 「胸痺、」 心中痞、「留気」結胸に在り。胸満、脇に下り心を逆槍す。枳実薤白桂枝湯之を主どる。人参湯も亦之を主どる。 括ロウ薤白白酒湯 胸痺、胸背痛み、喘息咳唾の者を治す。 |
南呂丸(ナンロガン)=滾痰丸(コンタンガン)=甘遂・大黄・黄ゴン・青蒙石 姑洗丸(コセンガン)=控涎丹(コウエンタン)=甘遂・大戟・白芥子 徹(テツ)=とおる、とおす |
白酒は、漿なり。千金、外臺、白タイ漿、或いは白タイ酒に作る。此の物は我が邦に無き所なり。故に今醋二勺を以って、水一合九勺に和し、以って之に代う。若し醋多ければ、厳列にして服すに堪えざるなり。又俗間に濁醪と称す者を、五勺水一合に和し用うも、亦効有り。漿の説は、枳実梔子シ湯標に詳らかなり。 ○薤白は、五月に之を採り、暴乾し貯蓄して資用に供すべし。 千金、括ロウ湯に、括ロウ実一枚、半夏半升、薤白一斤、枳実ニ両、生姜四両、右五味、父祖し、白タイ酒一斗を以って、煮て四升を取り、一升を服すと。 |
括ロウ実 一枚 六分 薤白 半升 二銭四分 白酒 七升 二合一勺 右三味、同じく煮て二升を取り、分温再服す。煮て六勺を取る。 「胸痺の病、」喘息咳唾し、胸背痛み、短気し、「寸口脈沈にして遅、関上少しく緊数、」 括ロウ薤白半夏湯 括ロウ薤白白酒湯證にして、嘔する者を治す。 括ロウ実 一枚 六分 薤白 三両 九分 半夏 半升 一銭 |
濁醪(ダクロウ)=にごり酒・どぶろく |
主療は正に同じ。今之を括ロウ薤白半夏湯症にして、心胸心胸痞満の者に試すに、甚だ良し。 蛔痛に、間ま二方の症に擬似する者有り。然れども二方は必ず痰涎短息の症有り。且つ痛み必ず背に徹す。蛔痛は必ず清水或いは白沫を吐し、或いは悪心し、或いは痛み転移するに有り。此れを異なりと為す。 ○徹は、説文に、通ずと。 卒中風、狂癇、暴厥、真頭痛、風眼、雷頭風、痰癖、肩背臂膊疼痛、霍乱、胃翻など、病毒胸膈に在る者、之を用いて 、 |
八分 白酒 一斗 三合 右四味、同じく煮て四升を取り、一升を温服す。煮て六勺を取る。日に三服す。 「胸痺、臥を得られず、心痛して背に徹する者、」 為則按ずるに、当に嘔し或いは胸腹鳴證有るべし。 瓜蔕散 チチと吐せんと欲す者を治す。 右二味、各別にツき篩い散と為し已り、之を合治し、一銭 |
卒中風 狂癇 暴厥 真頭痛 風眼 雷頭風 痰癖 臂膊 胃翻 |