類聚方広義・第二木曜会 2013・5・9
百八頁 表
大黄消石湯 茵チン蒿湯 梔子蘗皮湯 梔子厚朴湯
十四枚に作るべし。今之に従う。按ずるに、枳実五枚は、疑うらくは三枚の誤りならん。 ソウ囃、胸中煎熬、腹満して塊有り、二便不利、或いは口中苦辛酸鹹等の味を覚う者を治す。此の症は、後に必ず膈噎を成す。早く此の方を用い以って之を防ぐべし。 |
右四味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温三服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。 「大病差えた後、労復する者、枳実梔子シ湯之を主どる。若し宿食有る者は、」 ○「酒黄疸、」心中懊ノウ、或いは熱痛、 大黄消石湯 発黄、小便不利し、腹中に塊有る者を治す。 大黄 黄蘗 消石 各四両 八分 梔子 十五枚 五分 右四味、水六升を以って、煮て三升に取る。滓を去り、消石を内れ、 |
ソウ囃(ソウザツ)=むねやけ、空腹時でも胃の中に違和感が有り落ち着かない状態 煎熬(センゴウ)=憂えるさま、水分がなくなるまで煮詰まること、胸中煎熬でひどい胸焼け 膈噎(カクイツ)=胃癌、食道癌、狭窄などが原因で食物が飲み込みにくいこと、噎膈ともいう |
黄蘗=キハダ 消石=芒消=含水硫酸マグネシウム |
按ずるに、黄疸症、尿色は黄赤にして粘気有り。故にp角汁 |
更に煮て一升を取る。水一合二勺を以って、三味を煮て、六勺を取り、滓を去り、消石を内れ、消しせしめ服す。 「黄疸、」腹満、小便不利して赤く、自汗出で、「此れを表和し裏実と為し、当に之を下すべし。」 茵チン蒿湯 一身発黄、心煩、大便難、小便不利する者を治す。 茵チン蒿 六両 一銭八分 梔子 十四枚 六分 大黄 ニ両 六分 |
p角(ソウカク)=サイカチの種殻のこと、殻の内側にサポニンを多く含み石鹸の代わりとした |
状の如しと曰く、特り色のみを称するに非ざるなり。 剤は、斉と通ず。斉は、限るなり。頚を剤(カギ)りて還るは、頚以下に汗無きを謂うなり。脈経に斉頚に作り、玉函の茵チン蒿湯条にも、亦た斉頚に作る。列子湯問篇に曰く、際畔之斉限の所を知らずんばと、斯れ以って其の義を見るべけんや。 オは、淤を以って病に従う。淤は淤泥なり。説文に曰く、淤、澱滓濁泥なりと。銭黄の曰く、オは留蓄壅滞なりと。蓋し飲食のギン濁、内に留滞し、壅閼し熱を作す。更に邪気と搏結し、鬱燠薫灼して渇を作す。若し汗無く小便利せざれば、則ち沸鬱蒸騰し、必ず黄を発す。猶お麹蘖 |
右三味、水一斗を以って、先に茵チンを煮て、六升に減じ、二味を内れ、煮て三升を取る。滓を去り分温三服す。水二合を以って先ず茵チンを煮て、一合二勺を取り、二味を内れ、煮て六勺を取る。小便当に利すべし。尿はp角汁状の如く、色正に赤く、一宿にて腹減じ、黄小便に従って去るなり。 「陽明病、」発熱汗出る者、「此れ熱越と為し、黄を発す能わざるなり。」但頭汗出で、身に汗無く、頚を剤りて環り、小便不利、渇して水漿を引く者、「此れオ熱裏に在ると為す。」身必ず黄を発す。○「傷寒七八日、」身黄橘子色の如く、小便不利、腹 |
留蓄(リュウチク)=たくわえ 澱滓(デンシ)=下に溜まったかす 壅閼(ヨウアツ)=ふさぐ 搏結(ハクケツ)= 鬱燠(ウツオウ)=むし暑い 薫灼(クンシャク)=いぶして焼く 麹蘖(キクゲツ)=発酵したひこば、こうじ |
庫に入り黄を発すがごときなり。但し渇はオ熱に属す。故に水漿を引くと雖も、五苓白虎の、専ら冷水を欲する者と、其の症情は自ずから同じからず。 眼球黄赤し熱痛甚だしきに洗えば、効有り。又胞瞼糜爛痒痛し、及び痘瘡落痂以後、眼猶開かざる者は、枯礬少し許りを加え之を洗えば、皆妙なり。 |
微満の者、○「穀疽の病と為る、」寒熱食さず、食すれば即ち頭眩、心胸安からず、久久に黄を発すを、穀疽と為す、」 梔子蘗皮湯 身黄、発熱心煩する者を治す。 梔子 一十五個 一銭二分 甘草 一両 五分 黄蘗 ニ両 一銭 右三味、水四升を以って、煮て一升半を取り、滓を去り、分温再服す。水一合六勺を以って、煮て六勺を取る。 「傷寒、」身黄、発熱する者は、 |
水漿(スイショウ)=飲みもの 胞瞼(ホウケン)=上下のまぶた 枯礬(コバン)=明礬、ミョウバン、硫酸アルミニウム |
一十五個=一があることは間違いではない、15個のこと |
下後、心煩腹満し、臥起安からざる者に、世医動もすれば病尽きざると謂いて、猶三承気湯等を用い、其の治を誤る者有り。長沙氏に是れ等の方法有る所以なり。治を措くの間、宜しく意を注ぐべし。 心煩は当に虚煩と做して看るべし。腹満も亦た実満に非ず。 |
梔子厚朴湯 胸腹煩満の者を治す。 梔子 十四枚 六分 厚朴 四両 一銭二分 枳実 四枚 一銭二分 右三味、水三升半を以って、煮て一升半を取り、滓を去り、分かち三服し、温め一服を進む。水一合四勺を以って、煮て六勺を取る。「吐を得る者は後服を止む、」 「傷寒下後、」心煩腹満し、臥起安からざる者、 梔子乾姜湯 心中微煩する者を治す。 |
臥起(ガキ)=寝起き | 臥起(ガキ)=寝起き |
当に乾嘔の症有るべし。微煩も亦た虚煩なるのみ。 諸病久久愈えず、オウ羸困憊、身熱寝汗、セイチュウし寐れず、口乾き喘嗽、大便溏、小便渋、飲啖味無き者、此の方に宜し。證に随い黄耆、麦門冬、乾姜、附子等を選加す。○健忘驚 |
梔子 十四枚 乾姜 ニ両 各一銭五分、 右二味、水三升半を以って、煮て一升半を取り、滓を去り、分かちて二服とし、温めて一服を進む。水一合四勺を以って、煮て六勺を取る。「吐を得る者は、後服を止む。」 「傷寒、医丸薬を以って大いに之を下し、」身熱去らず、微煩の者、 酸棗仁湯 煩躁し眠を得られざる者を治す。 酸棗仁 二升 二銭四分 甘草 一両 一分 知母 茯苓 キュウキュウ ニ両 二分 |
丸薬=巴豆剤とされる |