類聚方広義・第二木曜会  2013・4・11


梔子甘草湯 梔子生姜湯 枳実梔子湯 枳実梔子大黄

百六頁 表
標注                                       類聚方
故に虚煩と曰う。虚の字の説は得て妙なり。子柄は此の章を以って、初章での虚煩の註文と為す、過ちなり。金匱を参看すべし。○此の方は吐剤に非ざるなり。故に之を用うに、未だ嘗て吐す者を見ざるなり。若し或いは瞑眩に因りて吐せば、諸方皆然り。特り此の方ならざるなり。按ずるに、枳実梔子湯、枳実梔子大黄湯に、香有りと雖も、皆吐を得るの言無し。梔子乾姜湯、梔子厚朴湯、香が無しと雖も、吐を得る者は後服を止むの語有り。要は皆転訛するのみ。其れ嘔する者に生姜を加え、少気の者に甘草を加う、及び之に発汗吐下の後の虚煩に用いるを観るに、其の吐剤に 心下濡なる者は、虚煩と為すなり。
為則按ずるに、集註に曰く、舊本には一服にして吐を得れば後服を止むの七字有り。此れ瓜帯散中に香有りて、誤って於いて此に伝わる。今刪正を為す。余も亦之に従う。以下之に倣え。


梔子甘草シ湯
梔子湯證にして、急迫する者を治す。
梔子湯方内に於いて、甘草ニ両を加う。
梔子 甘草 各八分 香 二銭 右二味、煮て梔子湯の如くす。

百六頁 表 解説
標注                                            類聚方
転訛(テンカ)=転じてなまり意味が変わること

百六頁 裏
標注                                       類聚方
非ざること、明白に非ざらんや。注家実地をまず、親験をず、妄りに憶(オク)測の解を作すのみ。張思ソウの説、本より粗漏に属す。東洞先生も亦た未だ深考せざるのみ。

少気は、気息微微、将に絶えんとするの貌、少気の字は、素問陰陽応象大論、霊樞論疾診尺篇、前漢書キョウ勝伝に見ゆ。
発汗吐下の後、虚煩し眠るを得られず。若し激しき者は、必ず反復顛倒し、心中懊ノウす、梔子湯之を主どる。若し少気する者は、梔子甘草湯之を主どる。若し嘔する者は、梔子生姜湯之を主どる。

梔子生姜
梔子湯證にして、嘔するものを治す。
梔子湯方内に、生姜五両を加う。
梔子 六分 香 生姜 各一銭五分
右三味、煮ること梔子湯の如し。

百六頁 裏 解説
標注                                            類聚方
履(リ)=ふむ・はく・靴
歴(ヘ)る=経験する

百七頁 表
標注                                       類聚方
陳嘉謨の曰く、漿は、酢なり。栗米を熟し冷水中に投じ、浸すこと五六日、味酢っぱく白い花を生ず。色醤に類す、故に名づく。若し浸すに敗に至らば、人を害すと。是れ彼にあれば飲膳の品により、固より資用に難からず。我に在りては卒爾に弁ずべきに非ず。宜しく酢を少し許り加え水を以って煮るべし。按ずるに、清漿水は、漉過糟粕を去るを謂う。 発汗吐下の後、虚煩し眠るを得られず。若し激しき者は、必ず反復顛倒し、心中懊ノウす、梔子湯之を主どる。若し少気する者は、梔子甘草湯之を主どる。若し嘔する者は、

枳実梔子
梔子湯證にして、胸満する者を治す。
枳実 三枚 六分 梔子 十四枚 四分  一升 二銭四分 右三味、清漿水七升を以って、空煮し四升を取る。枳実梔子を内れ、煮て二升を取る。を下ろし更に煮ること五六沸、滓を去り、分温再服す。酢二勺、水二合を以って、空煮し一合二勺を取り、二味を内れ、煮て六勺を取る。を内れ、五


百七頁 表 解説
標注                                            類聚方
陳嘉謨(チンカボ)=1486〜図像本草蒙筌(自然科学)の纂集をした人
卒爾(ソツジ)=卒然、急に、突然、だしぬけに
資用(シヨウ)=もとで、費用
漉過(ロクカ)=こす、濾過
糟粕(ソウハク)=酒かす

百七頁 裏
標注                                       類聚方
差ゆとは、病差えて解すも未だ常に復せざるを言うなり。愈(イユ)の字と、義同じからず。○当に心胸痞満、身熱の症有るべし。○凡そ大病新たに差え、血気未だ復さざるに方たりて、労働飲啖度を過ぎれば、則ち或いは心胸満悶を作し、或いは煩熱を作す。此の方を与え、将養すれば則ち癒ゆ。若し大便通ぜず、宿食有る者は、枳実梔子大黄湯に宜し。

千金、大黄三両に作る。今之に従う。煎法は当に枳実梔子湯に従うべし。
東洞先生曰く、梔子当に
六沸し服す。覆うって微似汗せしむ。
「大病差えた後、労復する者、枳実梔子湯之を主どる。若し宿食有る者は、大黄を博碁子大の如く五六枚加う。」
為則按ずるに、当に心中懊ノウし、胸満の證有るべし。

枳実梔子大黄
枳実梔子湯證にして、大便閉じる者を治す。
梔子 十二枚 四分 大黄 一両 六分 枳実 五枚 六分  一升 二銭四分

百七頁 裏 解説
標注                                            類聚方
新(アラ)た=〜したばかり 博碁子=すごろくの大きさ

百八頁 表
標注                                       類聚方
十四枚に作るべし。今之に従う。按ずるに、枳実五枚は、疑うらくは三枚の誤りならん。





ソウ囃、胸中煎熬、腹満して塊有り、二便不利、或いは口中苦辛酸鹹等の味を覚う者を治す。此の症は、後に必ず膈噎を成す。早く此の方を用い以って之を防ぐべし。
右四味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温三服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。
「大病差えた後、労復する者、枳実梔子湯之を主どる。若し宿食有る者は、」
○「酒黄疸、」心中懊ノウ、或いは熱痛、

大黄消石湯
発黄、小便不利し、腹中に塊有る者を治す。
大黄 黄蘗 消石 各四両 八分 梔子 十五枚 五分 右四味、水六升を以って、煮て三升に取る。滓を去り、消石を内れ、

百八頁 表 解説
標注                                            類聚方
煎熬(センゴウ)=憂えるさま、水分がなくなるまで煮詰める


大豆の種子を発酵させ乾燥したもの
別名=豆 淡豆
成分:脂肪、タンパク質、酵素
効能:大病後の不眠や煩(イライラ感)に用う


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