類聚方広義・第二木曜会 2013・4・11
梔子甘草シ湯 梔子生姜シ湯 枳実梔子シ湯 枳実梔子大黄シ湯
故に虚煩と曰う。虚の字の説は得て妙なり。子柄は此の章を以って、初章での虚煩の註文と為す、過ちなり。金匱を参看すべし。○此の方は吐剤に非ざるなり。故に之を用うに、未だ嘗て吐す者を見ざるなり。若し或いは瞑眩に因りて吐せば、諸方皆然り。特り此の方ならざるなり。按ずるに、枳実梔子シ湯、枳実梔子大黄シ湯に、香シ有りと雖も、皆吐を得るの言無し。梔子乾姜湯、梔子厚朴湯、香シが無しと雖も、吐を得る者は後服を止むの語有り。要は皆転訛するのみ。其れ嘔する者に生姜を加え、少気の者に甘草を加う、及び之に発汗吐下の後の虚煩に用いるを観るに、其の吐剤に | 心下濡なる者は、虚煩と為すなり。 為則按ずるに、集註に曰く、舊本には一服にして吐を得れば後服を止むの七字有り。此れ瓜帯散中に香シ有りて、誤って於いて此に伝わる。今刪正を為す。余も亦之に従う。以下之に倣え。 梔子甘草シ湯 梔子シ湯證にして、急迫する者を治す。 梔子シ湯方内に於いて、甘草ニ両を加う。 梔子 甘草 各八分 香シ 二銭 右二味、煮て梔子シ湯の如くす。 |
転訛(テンカ)=転じてなまり意味が変わること |
非ざること、明白に非ざらんや。注家実地を履まず、親験を歴ず、妄りに憶(オク)測の解を作すのみ。張思ソウの説、本より粗漏に属す。東洞先生も亦た未だ深考せざるのみ。 少気は、気息微微、将に絶えんとするの貌、少気の字は、素問陰陽応象大論、霊樞論疾診尺篇、前漢書のキョウ勝伝に見ゆ。 |
発汗吐下の後、虚煩し眠るを得られず。若し激しき者は、必ず反復顛倒し、心中懊ノウす、梔子シ湯之を主どる。若し少気する者は、梔子甘草シ湯之を主どる。若し嘔する者は、梔子生姜シ湯之を主どる。 梔子生姜シ湯 梔子シ湯證にして、嘔するものを治す。 梔子シ湯方内に、生姜五両を加う。 梔子 六分 香シ 生姜 各一銭五分 右三味、煮ること梔子シ湯の如し。 |
履(リ)=ふむ・はく・靴 歴(ヘ)る=経験する |
陳嘉謨の曰く、漿は、酢なり。栗米を熟し冷水中に投じ、浸すこと五六日、味酢っぱく白い花を生ず。色醤に類す、故に名づく。若し浸すに敗に至らば、人を害すと。是れ彼にあれば飲膳の品により、固より資用に難からず。我に在りては卒爾に弁ずべきに非ず。宜しく酢を少し許り加え水を以って煮るべし。按ずるに、清漿水は、漉過し糟粕を去るを謂う。 | 発汗吐下の後、虚煩し眠るを得られず。若し激しき者は、必ず反復顛倒し、心中懊ノウす、梔子シ湯之を主どる。若し少気する者は、梔子甘草シ湯之を主どる。若し嘔する者は、 枳実梔子シ湯 梔子シ湯證にして、胸満する者を治す。 枳実 三枚 六分 梔子 十四枚 四分 シ 一升 二銭四分 右三味、清漿水七升を以って、空煮し四升を取る。枳実梔子を内れ、煮て二升を取る。シを下ろし更に煮ること五六沸、滓を去り、分温再服す。酢二勺、水二合を以って、空煮し一合二勺を取り、二味を内れ、煮て六勺を取る。シを内れ、五 |
陳嘉謨(チンカボ)=1486〜図像本草蒙筌(自然科学)の纂集をした人 卒爾(ソツジ)=卒然、急に、突然、だしぬけに 資用(シヨウ)=もとで、費用 漉過(ロクカ)=こす、濾過 糟粕(ソウハク)=酒かす |
差ゆとは、病差えて解すも未だ常に復せざるを言うなり。愈(イユ)の字と、義同じからず。○当に心胸痞満、身熱の症有るべし。○凡そ大病新たに差え、血気未だ復さざるに方たりて、労働飲啖度を過ぎれば、則ち或いは心胸満悶を作し、或いは煩熱を作す。此の方を与え、将養すれば則ち癒ゆ。若し大便通ぜず、宿食有る者は、枳実梔子大黄シ湯に宜し。 千金、大黄三両に作る。今之に従う。煎法は当に枳実梔子シ湯に従うべし。 東洞先生曰く、梔子当に |
六沸し服す。覆うって微似汗せしむ。 「大病差えた後、労復する者、枳実梔子シ湯之を主どる。若し宿食有る者は、大黄を博碁子大の如く五六枚加う。」 為則按ずるに、当に心中懊ノウし、胸満の證有るべし。 枳実梔子大黄シ湯 枳実梔子シ湯證にして、大便閉じる者を治す。 梔子 十二枚 四分 大黄 一両 六分 枳実 五枚 六分 シ 一升 二銭四分 |
新(アラ)た=〜したばかり | 博碁子=すごろくの大きさ |
十四枚に作るべし。今之に従う。按ずるに、枳実五枚は、疑うらくは三枚の誤りならん。 ソウ囃、胸中煎熬、腹満して塊有り、二便不利、或いは口中苦辛酸鹹等の味を覚う者を治す。此の症は、後に必ず膈噎を成す。早く此の方を用い以って之を防ぐべし。 |
右四味、水六升を以って、煮て二升を取り、分温三服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。 「大病差えた後、労復する者、枳実梔子シ湯之を主どる。若し宿食有る者は、」 ○「酒黄疸、」心中懊ノウ、或いは熱痛、 大黄消石湯 発黄、小便不利し、腹中に塊有る者を治す。 大黄 黄蘗 消石 各四両 八分 梔子 十五枚 五分 右四味、水六升を以って、煮て三升に取る。滓を去り、消石を内れ、 |
煎熬(センゴウ)=憂えるさま、水分がなくなるまで煮詰める |