類聚方広義・第二木曜会 2013・3・14
梔子シ湯 梔子甘草シ湯 梔子生姜シ湯
牝瘧、七八発、若しくは十餘発の後、病勢漸として衰える者にて、未だ発す前一時許りに、酢と水等分、或いは新汲水にて、一銭ヒを服せば、則ち水を吐して癒ゆ。按ずるに、牡は、牝の誤りなり。 此の方は梔子香シ二味のみ。然れども於いて其の症に施すに、其の効響くが如し。親しく之を於いて病者に試みるに非ざれば、焉んぞ能く其の功を知らんや。香シの、薬舗所に鬻ぐは眞に非ず。之を用うに効無し。有志の士、宜しく自ずから製造し、以って緩急に備うべし。 ○二升半の下、外臺に滓を去るの二字有り。是とす。 ○発汗吐下の後云云の章、此の方の |
一銭ヒを服す。」 「瘧」寒多き者、「名づけ牡瘧と曰う、」 為則按ずるに、当に臍下の動の證有るべし。 梔子シ湯 心中懊ノウする者を治す。 梔子 十四枚 八分 香シ 四分 二銭 右二味、水四升を以って、先ず梔子を煮て、二升半を得る。シを内れ煮て一升半を取る。滓を去り、分けて二服と為し、一服を温進す。水一合六勺を以って、先ず梔子を煮て、一合を取り、滓すを去りシを内れ、六勺を取る。「吐を得る者は、後服を止む、」 |
牝瘧(ボギャク)=寒が多く熱が少ない症状・瘧は寒気と発熱を伴う疾病 親しく、と、自ずから、は同様の意味合いがあり対として使用される 薬舗(ヤクホ)=薬屋・薬種商い 鬻(ヒサ)ぐ=製造し保存している 緩急(カンキュウ)=一大事、急の字に重きをおく |
主症なり。 ○成無已の曰く、懊ノウ、俗に骨突と謂う。是なり。益すに心中カイ悶は、名状すべからずの義なり。劉完素の曰く、懊ノウは、煩心熱燥、悶乱寧からずなり。素問六元正起大論に、ボウ悶懊ノウの語有り。 ○窒は知栗切、塞なり。鬱結して舒びざるを謂うなり。 ○傷寒五六日云云、此の條は於くに前條の重き者なり。 ○陽明病、脈浮にして緊云云、此の章は凡そ四段なり。若し其の治法を擬かれば、則ち陽明より身重きに至りる。白虎湯症なり。若し発汗以下は、大承気湯を与うべし。若し焼鍼を加え以下は、桂枝甘草 |
発汗吐下の後、虚煩し眠るを得られず。激しき者は、必ず反って覆し顛倒、心中懊ノウするは、梔子シ湯之を主どる。若し少気の者は、梔子甘草シ湯之を主どる。若し嘔する者は、梔子生姜シ湯之を主どる。 ○発汗若しくは之を下し、而して煩熱し、胸中窒がる者は、 ○「傷寒五六日、」大いに之を下した後、身熱去らず、心中結痛する者は、未だ解せんと欲せざるなり、○「凡そ梔子シ湯を用い、病人舊より微しく溏す者は、服すに之を与うべからず、」 ○陽明病、脈浮にして緊、咽燥口苦し、腹満して喘し、発熱し汗出で、悪寒せず、 |
骨突(コットツ)=註解傷寒論(成無已著)の梔子シ湯条文に見える、中国における当時の病名 知栗切(チリツセツ)=切とは音を表す注のこと、ここでは傷寒論条文の窒(チツ=chi-tu)という字について音注と義注を示す。知(チ=chi)と栗(リツ=ritu)の二字前後発音を合わせ音注を示している 擬(オシハ)かる○、(ナゾラ)える×、=ためらう○、たとえる× |
龍骨牡蠣湯を与うべし。若し之を下し以下は、梔子シ湯症なり。若し渇し水を飲まんと欲し以下は、上文に属さず、恐らく錯誤有り。東洞先生特り若し渇し以下を載取し、分ちて白虎加人参湯と猪苓湯の二方の下に置くは、是れ活眼の処置にして、固より不可なること無し。唯此の書の体裁に於いて、支吾する所有るに似る。故に今本論全章を掲げ、各方の下に列す。○下利の後、更に煩し云云は、虚煩と為すなり。梔子シ湯に虚煩の字を両用す。虚煩の字尤も味有り。東洞先生以って刪らざる所以なり。尤怡の曰く、之を按ずるに心下濡、中に阻滞無きを知るべし。 | 反って悪熱し身重く、「若し汗を発せば則ち躁し、心潰潰として、反って譫語す。若し焼鍼を加えば、必ずジュツタ、煩躁して眠を得られず。若し之を下せば則ち胃中空虚にして、客気膈を動かす、」心中懊ノウし舌上胎の者は、梔子シ湯之を主どる。若し渇し水を飲まんと欲し、口渇きて舌燥する者は、白虎加人参湯之を主どる。若し脈浮にして発熱し、渇きて水を飲まんと欲し、小便不利する者は、猪苓湯之を主どる。 ○「陽明病、」之を下し、其の外に熱有り、手足温、「結胸」せず、心中懊ノウし、食す能わず。但頭汗出ず者は、 ○下利の後更に煩し、之を按ずるに |
載取(セツシュ)=審査し選任する、選び切り取る 支吾(シゴ)=食い違い・さからう 虚煩(キョハン)=慢性熱病の後期、心中悶乱し精神の不安な状態 刪(ケズ)らざる=類聚方の文中「」をしていない=加筆とみなさない 尤怡(ユウイ)=人名・清代の人、詩を好み著書に傷寒論貫珠集? |
故に虚煩と曰う。虚の字の説は得て妙なり。子柄は此の章を以って、初章での虚煩の註文と為す、過ちなり。金匱を参看すべし。○此の方は吐剤に非ざるなり。故に之を用うに、未だ嘗て吐す者を見ざるなり。若し或いは瞑眩に因りて吐せば、諸方皆然り。特り此の方ならざるなり。按ずるに、枳実梔子シ湯、枳実梔子大黄シ湯に、香シ有りと雖も、皆吐を得るの言無し。梔子乾姜湯、梔子厚朴湯、香シが無しと雖も、吐を得る者は後服を止むの語有り。要は皆転訛するのみ。其れ嘔する者に生姜を加え、少気の者に、甘草を加う、及んで於いて発汗吐下の後の虚煩に用いるを観るに、其の吐剤に | 心下濡なる者は、虚煩と為すなり。 為則按ずるに、集註に曰く、舊本には一服にして吐を得れば後服を止むの七字有り。此れ瓜帯散中に香シ有りて、誤って於いて此に伝わる。今刪正を為す。余も亦之に従う。以下之に倣え。 梔子甘草シ湯 梔子シ湯證にして、急迫する者を治す。 梔子シ湯方内に於いて、甘草ニ両を加う。 梔子 甘草 各八分 香シ 二銭 右二味、煮て梔子シ湯の如くす。 |
転訛(テンカ)=転じてなまり意味が変わること |