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類聚方広義・第二木曜会  2013・2・14


ヨク苡附子散 ヨク苡附子敗醤散 天雄散 蜀漆散

百二頁 裏
標注                                       類聚方
振るわず灰白内陥し、下利し身冷え、寒戦咬牙掉頭止まざる者を治す。
癰疽、累日膿潰せず、堅硬疼痛して忍ぶべからざる者。巳に潰した後、毒気凝結し、腐蝕して復さず、新肉生じ難き者。附骨疽。瘻瘡。オ膿盡きざる者、併せ之を主どる。七寶、十幹、梅肉、宜しきに従い兼用すべし。又薫薬を用うべき者有り。


緩急は、痛み緩急有るを謂うなり。本草綱目、ヨク苡仁の條に、金匱を引きて周痺緩急と作す。按ずるに、金匱水気病篇に曰く、身腫れ






ヨク苡附子散
胸中痞し、悪寒、或いは浮腫の者を治す。
ヨク苡仁 十五両 三十銭 大附子 十枚 三十銭

百二頁 裏 解説
標注                                            類聚方
周痺(シュウヒ)=風寒湿邪によって起こるとされる全身の疼痛、麻痺、だるさを伴う病症

百三頁 表
標注                                       類聚方
冷え、状は周痺の如しと。今之を胸痺にて、痛み休作し緩急有る者、或いは一身痺れ悪寒す、或いは身体浮腫疼痛する者に用うに、皆効有り。且つ此の方の下方は、共に宜しく咀し煮て服すべし。霊樞周痺篇、亦参看すべし。

此の方、大黄牡丹皮湯と、同じく腸癰を治す。而して軽重浅深rからず。彼に云うに少腹腫痞、痛むに淋の如し。此れに云うに腹皮急、之を按ずるに濡腫状の如くと、彼に云う時時発熱、自汗出で復悪寒、此れに云う身に熱無くと、彼の云う脈遅緊、此れ但云う数と。以って其の症に

右二味、杵き散都為し、方寸ヒを服す。白湯を以って一銭を服す。日に三服す。
「胸痺、」緩急の者、
為則按ずるに、当に悪寒、或いは浮腫の證有るべし。

ヨク苡附子敗醤散
一身甲錯し、腹皮急、之を按ずるに濡にして腫状の如し、腹に積聚無き者を治す。
ヨク苡仁 十分 五銭 敗醤 五分 二銭五分 附子 二分 一銭
右三味、杵きて末と為し、方寸ヒを取り、水二升を以って

百三頁 表 解説
標注                                            類聚方
r(ヒトシ)い=等しい

百三頁 裏
標注                                       類聚方
軽重有りて、而して毒の結ぶ所、亦自ずから浅深有るを見るべけんや。腸癰にて針すべきは、当に肌膚枯セキの所を認め、針を入れるべし。若し猶予し日をムナシうせば、則ち腐潰蔓延し、膿臍孔より出で、荏苒癒えず。或いは不起に致す。審らかに膿の浅深を断じ、其れ果たして浅き者は、速やかに針を入れるを要と為す。腸内の二字は、宜しく活看すべし。


老人腰冷え、小便頻数、或いは遺溺、小腹に動有る者を治す。
○陰萎病にて、臍下に動有り、或いは小便に白濁を兼ぬ者は、厳しく入房を禁じ、此の方を服せば、一月を過ぎずして、必ず
半に減じ頓服す。水一合二勺を以って、薬末一銭を煮て六勺を取る。小便当に下るべし。
「腸癰の病為る、」其の身甲錯し、腹皮急、之を按ずるに濡腫状の如し、腹に積聚無く、身に熱無く、脈数「之を腸内に癰膿有ると為す」、




天雄散
失精、臍下に動有りて、上衝悪寒し、小便不利の者を治す。
天雄 三両 六銭 朮 八両 十六銭 桂枝 六両 十二銭 龍骨 三両 六銭

百三頁 裏 解説
標注                                            類聚方
セキ=干し肉、皮膚のひび割れ
遺溺(イデキ)=残尿感のある小便のこと
陰萎(いんい)=インポテンツ、性的不能

百四頁 表
標注                                       類聚方
効あり。
湯と為して用うも、反って良し。



蜀漆は、新鮮を佳しと為す。年年五月に採收すべし。
○雲母は、漢産の上品に非ずんば、効無し。漿水の説は、枳実梔子湯標に在り。
右四味、杵き散都為し、酒にて半銭ヒを服す。酒五分にて服す。日に三服す。知らずんば稍之を増す。
為則按ずるに、失精家にして小便不利、臍下に動有り、或いは悪寒し、或いは衝逆の者之を主どる。薬徴に之を弁ず。

四逆散
寒熱発作時に有りて、臍下に動有る者を治す。
蜀漆 雲母 龍骨 等分
右三味、杵きて散と為し、未だ発せざる前に、漿水を以って半銭を服す。醋少し許りを以って水に和し、半銭を服す。「温瘧は、更に蜀漆半分を加え、発時に臨んで、

百四頁 表 解説
標注                                            類聚方
蜀漆(ショクシツ)=常山紫陽花(ジョウザンアジサイ)の説、解熱薬
漿水(ショウスイ)=粟や米から作る酢

百四頁 裏
標注                                       類聚方
牝瘧、七八発、若しくは十餘発の後、病勢漸として衰える者にて、未だ発す前一時許りに、酢と水等分、或いは新汲水にて、一銭ヒを服せば、則ち水を吐して癒ゆ。按ずるに、牡は、牝の誤りなり。


此の方は梔子香シ二味のみ。然れども於いて其の症に施すに、其の効響くが如し。親しく之を於いて病者に試みるに非ざれば、焉んぞ能く其の功を知らんや。香シの、薬舗所に鬻ぐは眞に非ず。之を用うに効無し。有志の士、宜しく自ずから製造し、以って緩急に備うべしなり。
○二升半の下、外臺に滓を去るの二字有り。是とす。
○発汗吐下の後云云の章、此の方の
一銭ヒを服す。」
「瘧」寒多き者、「名づけ牡瘧と曰う、」
為則按ずるに、当に臍下の動の證有るべし。


梔子
心中懊ノウする者を治す。
梔子 十四枚 八分 香 四分 二銭
右二味、水四升を以って、先ず梔子を煮て、二升半を得る。を内れ煮て一升半を取る。滓を去り、分けて二服と為し、一服を温進す。水一合六勺を以って、先ず梔子を煮て、一合を取り、滓すを去りを内れ、六勺を取る。「吐を得る者は、後服を止む、」

百四頁 裏 解説
標注                                            類聚方
牝瘧(ボギャク)=寒が多く熱が少ない症状・瘧は寒気と発熱を伴う疾病

百五頁 表
標注                                       類聚方
主症なり。
○成無已の曰く、懊ノウ、俗に骨突と謂う。是なり。益すに心中カイ悶は、名状すべからずの義なり。劉完素の曰く、懊ノウは、煩心熱燥、悶乱寧からずなり。素問六元正起大論に、ボウ悶懊ノウの語有り。
発汗吐下の後、虚煩し眠るを得られず。激しき者は、必ず反って覆し顛倒、心中懊ノウするは、梔子湯之を主どる。若し少気の者は、梔子甘草湯之を主どる。若し嘔する者は、梔子生姜湯之を主どる。
○発汗若しくは之を下し、而して煩熱し、胸中窒がる者は、
○「傷寒五六日、」大いに之を下した後、身熱去らず、心中結痛する者は、未だ解せんと欲せざるなり、○「凡そ梔子湯を用い、病人舊より微しく溏す者は、服すに之を与うべからず、」
○陽明病、脈浮にして緊、咽燥口苦し、腹満して喘し、発熱し汗出で、悪寒せず、

百五頁 表 解説
標注                                            類聚方

百五頁 裏
標注                                       類聚方
反って悪熱し身重く、「若し汗を発せば則ち躁し、心潰潰として、反って譫語す。若し焼鍼を加えば、必ずジュツタ、煩躁して眠を得られず。若し之を下せば則ち胃中空虚にして、客気膈を動かす、」心中懊ノウし舌上胎の者は、梔子湯之を主どる。若し渇し水を飲まんと欲し、口渇きて舌燥する者は、白虎加人参湯之を主どる。若し脈浮にして発熱し、渇きて水を飲まんと欲し、小便不利する者は、猪苓湯之を主どる。
○「陽明病、」之を下し、其の外に熱有り、手足温、「結胸」せず、心中懊ノウし、食す能わず。但頭汗出ず者は、
○下利の後更に煩し、之を按ずるに

百五頁 裏 解説
標注                                            類聚方

百六頁 表
標注                                       類聚方
心下濡なる者は、虚煩と為すなり。
為則按ずるに、集註に曰く、舊本には一服にして吐を得れば後服を止むの七字有り。此れ瓜帯散中に香有りて、誤って於いて此に伝わる。今刪正を為す。余も亦之に従う。以下之に倣え。

梔子甘草シ湯
梔子シ湯證にして、急迫する者を治す。
梔子シ湯方内に於いて、甘草ニ両を加う。
梔子 甘草 各八分 香シ 二銭 右二味、煮て梔子シ湯の如くす。


百六頁 表 解説
標注                                            類聚方


ヨク苡仁
イネ科 ハトムギの種子
効能:利湿作用(関節痛・浮腫み・筋肉の痛み)が有ります。麻黄や当帰などと合わせ用います。その他抗腫瘍作用も報告されています。



山梔子
アカネ科 クチナシの果実
清熱作用 イライラした気分を鎮め炎症性の痒みに用います。煩躁(焦燥感)や不眠にも使います。カワラヨモギと大黄を合わせ黄疸に用います。



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