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類聚方広義・第二木曜会  2013・11・14


生姜半夏湯 半夏苦酒湯 半夏厚朴湯 半夏乾姜散 厚朴生姜半夏甘草人参湯


百十八頁 表
標注                                       類聚方




凡そ諸病淡飲卒迫し、咽喉閉塞し、息するを得られず、湯液喉下らざる者は、此の方に非ずんば、開通能わざるなり。当に先ず此の方を以って、其の急を解し、而して後に処方宜しきに従うべし。熊膽を加えば、其の効尤も速し。又イツ逆を治す。
○小冷し分服し、宜しく遵用すべし。但必ずしも日に三夜一ならざるのみ。
為則按ずるに、外臺に云うに、嘔し心下痞硬する者を治すと、今之に従う。


生姜半夏湯

喘に似て喘ならず、嘔に似て嘔ならず、イツに似てイツならずして、心中カイカイ然とし、如何とも無き者を治す。
半夏 半升 
三銭 生姜汁 一升 四勺
右二味、水三升を以って、半夏を煮て、二升を取り、生姜汁を内れ、煮て一升半を取る。小冷し分かち四服す。
水一合二勺を以って、半夏を煮て、八勺を取り、生姜汁を内れ、煮て六勺を取る。日に三夜一、嘔止めば降服を停む。

百十八頁 表 解説
標注                                            類聚方
遵用(ジュンヨウ)=用法に従う

百十八頁 裏
標注                                       類聚方
正字通に云う。カイカイは、心乱と、又昏ボウの貌。蓋し心胸昏悶は、如何ともべからずを謂うなり。


半夏十四枚、鶏子殻中に、之を容し以って沸煮する能わず。故に酌量して五分を用いるなり。十四枚は、疑うに四枚の誤りのみ。余は常に瓷鍋を以って鶏殻に代う。古法に非ずと雖も、亦極めて便なり。
按ずるに、半夏散の服法に亦た云う。少少之を嚥めば、蓋し咽中腫痛、或いは瘡を生ずる者、腫は必ず會壓に及ぶ、故に多くめば必ず咽ぶ。少冷せしめ、徐徐に含嚥せば、則ち特り(ただ)薬汁の下り易きのみならず、
病人、胸中喘に似て喘せず。嘔に似て嘔せず。エツに似てエツせず。心中に徹し、カイカイ然としてなき者、

半夏苦酒湯
咽中瘡を生じ、音唖の者を治す。
半夏 十四枚 
五分 鶏子 一枚 黄を去る 右二味、半夏を内れ、苦酒中にけ、鶏子殻を以って、刀環中に置き、火上に安んじ三沸せしめ、滓を去り、少少之を含嚥す。鶏殻中に、半夏苦酒を内れ、煮て三沸せしむ。差えざれば、更に三剤を作る。
「少陰病、」咽中傷つき瘡を生じ、言語能わず、声出でざる者、

百十八頁 裏 解説
標注                                            類聚方
ボウ(コンボウ)=目がかすみ見えない、老いぼれる
酌量(シャクリョウ)=事情をくんで手加減する
瓷鍋(シカ)=陶土器
會壓(エエン)=厭(エン)の字を壓(オウ・アツ)と混用・気管支上部の口腔粘膜周辺
嚥(ふく)む=飲む
咽(むせ)ぶ=ふさがる
含嚥(ガンエン)=含み飲む





奈=奈何=いかん
音唖(オンア)=声が出ない
著=つ・く=入れる
刀環(トウカン)=刀の形をした貨幣


百十九頁 表
標注                                       類聚方
亦以って瘡所に浸漬すべし。是れ外治に於いて内治に寓るの法にて、用意最も密にして、張子の術に於いて委曲周悉と謂うべし。


此の症、後世の所謂梅核気なり。桔梗を加えるを尤も佳とす。南呂丸を兼用す。又妊娠悪阻を治すは、極めて妙なり。大便通ぜざる者は、応鐘丸、或いは大簇丸を兼用す。且つ蘇子を用いれば、其の功は蘇葉に勝る。
説文に、、小肉なり。此の症、咽中に肉片粘著するが如くを覚うなり。
半夏厚朴湯
咽中に炙臠有るが如く、或いは嘔し、或いは心下悸する者を治す。
半夏 一升 
一銭二分 厚朴 三両 三分 茯苓 四両 四分 生姜 五両 五分 乾蘇葉 ニ両 二分
右五味、水七升を以って、四升を取り、分温四服す。
水一合を以って、六勺を取る。日に三夜一服す。
「婦人、」咽中炙臠有るが如く、
為則按ずるに、当に悸の證有るべし。又按ずるに、千金に、胸満心

百十九頁 表 解説
標注                                            類聚方
浸漬(シンシ)=ひたす、つける
外治(ガイジ)=外用
寓(ヨ)る=よせる、居住する、泊まる
委曲周悉(イキョクシュウシツ)=細部までくわしく十分にいきわたる
梅核気(バイカクキ)=喉に梅の種子があるような感じ
南呂丸(ナンロガン)=滾痰丸(コンタンガン)=甘遂・大黄・黄ゴン・青蒙石
大簇丸(ダイソウガン)=
臠(レン)
=説文に小さな肉
粘著(ネンチャク)=張り付くこと
炙臠(シャレン)=炙った肉

百十九頁 裏
標注                                       類聚方
釋名に曰く、牀前を帖と曰い、帖帖と而して垂ると言うなりと。帖帖の義を、以って見るべし。


漿水の説は、枳実梔子シ湯標に見ゆ。按ずるに、劉熙釋名に曰く、漿、水と米汁相将すると、是れに因って之を観るに、清漿水、漿水と称すは、糟粕を去るを謂うなり。
下堅く、咽中帖帖として炙肉有るが如く、之を吐すに出でず、之を呑むに下らずとに作る。

半夏乾姜散
乾嘔吐逆し、吐涎沫の者を治す。
半夏 乾姜 各等分
右二味、杵きて散と為し、方寸ヒを取り、漿水一升半、煎じて七合を取り、之を頓服す。
醋二勺を以って水一合二勺に和し、薬末一銭を煮て、六勺を取る。
乾嘔、吐逆し、涎沫を吐す、

厚朴生姜半夏甘草人参湯
胸腹満し

百十九頁 裏 解説
標注                                            類聚方
牀前(ショウゼン)=寝台、ベット
帷(イ)=とばり、簾のようなもの
垂(タ)る=垂れる、下がる
糟粕(ソウハク)=酒かす、取るに足らないもののたとえ
帖帖(チョウチョウ)=近寄ったさま、穏やかなことを示す形容詞・擬態語

百二十頁 表
標注                                       類聚方
霍乱、吐瀉の後、腹猶満痛し、嘔気有る者を治す。腹満は、謂うところの実満に非ず。 嘔する者を治す。
厚朴 生姜 各半斤 
一銭 半夏 半升 七分五厘 人参 一両 一分三厘 甘草 ニ両 二分五厘
右五味、水一斗を以って、煮て三升を取り、滓を去り一升を温服す。
水二合を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。
発汗の後、腹脹満する者、
為則按ずるに、当に吐逆の證有るべし。

乾姜人参半夏丸
嘔吐止まず、心下痞硬


百二十頁 表 解説
標注                                            類聚方

生姜(しょうきょう)

ショウガ科の多年草根茎
効能:発汗・健胃作用、食欲を出し嘔吐を止める。

地上部


肥大した根茎部

蘇葉(ソヨウ)
シソ科・シソの葉 普通は紫色の葉が縮れたものを薬用にする
効能:発散(発汗作用は弱い)・解毒作用、魚介類の中毒に使う。

紫シソ


アオジソ系

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