類聚方広義・第二木曜会  2013・1・10


赤丸  大烏頭煎  烏頭湯

百頁 裏
標注                                       類聚方
外臺に、『水八升を以って、米を煮て熟を取り、米を去り、薬を内れ、煮て三升をとる。滓を去り寒温に適し、一升を飲む』に作る。此の方は硬米多し。宜しく此の煎法を用うべし。
孫子バクは、此の方を以って、霍乱四逆し、吐少なく嘔の多き者を治す。老工自ずから脱套の手段有り。
寒気は、則ち水なり。若し激しく心胸に及ぶ者は、大建中湯を合わせ奇効有り。疝家溜飲家に多く此の症有り。
の者を治す。
附子 一枚 
二分 半夏 半升 一銭二分 甘草 一両 二分 大棗 十枚 五分 硬米 半升 二銭
右五味、水八升を以って、米を煮て熟せしめ、湯成りて滓を去り、一升を温服す。日に三服す。
水一合六勺を以って、米を煮て一合二勺を取り、米を去り諸薬を内れ、煮て六勺を取る。
腹中「寒気、」雷鳴切痛、胸脇逆満し、嘔吐す、


赤丸
心下悸、淡飲有り、嘔して腹痛、悪寒、或いは微厥する者を治す。

百頁 裏 解説
標注                                            類聚方
硬米(コウベイ)=うるち米
脱套(ダットウ)=形式にとらわれない
疝家(センカ)=冷えて痛む者
溜飲家(リュウインカ)=酒飲みに多く水毒が胃内に滞っている者

硬米(コウベイ)=うるち米

百一頁 表
標注                                       類聚方
疝家にて、胸腹攣痛し悪寒す、腹中ロクロクと声有り。嘔して眩悸、其の症緩やかなる者、常に此の方を用うを、佳と為す。

若し酒服能わざる者は、白湯を以って送下すべし。

茯苓 四両 八銭 半夏 四両 一方に桂四両を用う 八銭 烏頭 ニ両 四銭 細辛 一両 二銭
右四味、之を末とし、眞朱を内れ色を為し、煉蜜にて丸するに麻子大の如く、「食に先し」酒にて三丸を送下す。
酒にて二銭を服す。日に再び夜に一服す。知らずんば稍(やや)之に増す。知るを以って度と為す。
「寒飲」厥逆、
為則按ずるに、当に心下悸、及び嘔して腹痛の證有るべし。

大烏頭煎
毒の臍を繞(めぐ)りて絞痛し、自ずから汗出で、手足厥

百一頁 表 解説
標注                                            類聚方
疝家(センカ)=冷えて痛む者
眩悸(ゲンキ)=めまいと動悸
白湯(サユ)=ぬるま湯
眞朱(シンシュ)=真珠の説、別説に赤い色をつける意味で辰砂(硫化水銀)

百一頁 裏
標注                                       類聚方
寒疝、腹中痛み、叫呼して死せんと欲し、面色土の如く、冷汗淋漓し、四肢拘急、厥冷煩躁し、脈弦遅の者、此の方を用うれば、則ち水数升を吐し、其の病立ちどころに止む。古方の妙は、後人作為の企及する所に非ずなり。
服度の説は、桂枝湯標に詳し。

按ずるに、外臺には腹痛脈弦以下二十八字無し。脈経、千金には、以って別章と為す。是なり。
冷の者、
烏頭大なる者五枚 三銭
右水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、蜜二升を内れ、煎じて水気を尽せしめ、二升を取る。「強人は七合を服す。弱人は五合を服す。」
水九勺を以って、煮て三勺を取り、滓を去り、蜜六勺を内れ、煎じて六勺を取り服す。差えずんば明日更に服す。一日に再服すべからず。
「腹痛、脈弦にして緊。眩は則ち衛気行らず、即ち悪寒す。緊は則ち食を欲せず。邪正相博ち、即ち寒仙と為る。寒疝は」臍を繞(めぐ)り

百一頁 裏 解説
標注                                            類聚方
寒疝(カンセン)=疝気(センキ)=神経痛、冷えて痛むこと
叫呼(キュウコ)=大声で叫ぶ
淋漓(リンリ)=汗がしたたるように出る様

百二頁 表
標注                                       類聚方
脚気、萎弱し起立能わず、麻痺殊に甚だしく、諸烏附剤の効無き者、此の方に宜し。
痛風にて百節疼痛腫起、及び偏枯タンカン結毒、骨節酸疼、或いは隆起する者を治す。倶に七宝承気丸、十幹丸、を兼用す。腹満便秘、或いは堅塊有る者は、夾鐘円、或いは大承気湯を兼用す。経水の変有る者は、桃核承気湯。偏枯症にて、心気定まらず、或いは健忘し、心下痞する者は、瀉心湯なり。
痘瘡にて、起脹貫膿し、其の勢い
痛む。若し発すれば則ち自汗出で、手足厥冷し、其の脈沈弦の者、

烏頭湯
骨節疼痛し、屈伸すべからず、及んで腹中絞痛し、手足厥冷する者を治す。
麻黄 芍薬 黄耆 甘草 各三両 
六分 川烏 五枚 一銭 フ咀し、密二升を以って、煎じ一升を取る。即烏頭を出す。蜜六勺を以って、煮て三勺を取る。
右五味、四味を咀し、水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、蜜煎中に内れ之を煎じ、七合を服す。知らずんば盡(つく)すに之を服す。

百二頁 表 解説
標注                                            類聚方
脚気(カッケ)=足がしびれたり、むくんだりする病気、古くは意味が広い
通風(ツウフウ)=手足の小関節の痛み、肉食を好み運動不足の者に多し、老人に発する五十肩も含む
偏枯(ヘンコ)=片麻痺・半身不随
結毒(ケツドク)=第二期及び第三期梅毒のこと、全身性梅毒
夾鐘円(夾鐘丸)(キョウショウエン)=大黄八、硝石六、甘草、人参各 硝石大円に同じ
タンカン=運動麻痺、半身不随、身体機能一部消失
瀉心湯=大黄・黄連・黄ゴン
盡(つく)す=盡(ことごと)く

百二頁 裏
標注                                       類聚方
振るわず灰白内陥し、下利し身冷え、寒戦咬牙掉頭止まざる者を治す。
癰疽、累日膿潰せず、堅硬疼痛して忍ぶべからざる者。巳に潰した後、毒気凝結し、腐蝕して復さず、新肉生じ難き者。附骨疽瘻瘡。オ膿盡きざる者、併せ之を主どる。七寶、十幹、梅肉、宜しきに従い兼用すべし。又薫薬を用うべき者有り。

緩急は、痛み緩急有るを謂うなり。本草綱目、ヨク苡仁の條に、金匱を引きて周痺緩急と作す。按ずるに、金匱水気病篇に曰く、身腫て
水一合八勺を以って、四味を煮て六勺を取る。滓を去り、蜜煎中に内れ、更に煎じ六勺を取り服す。
「病歴節、」屈伸すべからずして疼痛、
○「脚気、」疼痛し屈伸すべからず、
○「寒仙、」腹中絞痛し、「賊風入りて五臓を攻め、」拘急して転側を得られず、発作時に有り、人をして陰縮し、手足厥逆せしむ、
為則按ずるに、当に自汗、盗汗、浮腫の證有るべし。


ヨク苡附子散
胸中痺、悪寒、或いは浮腫の者を治す。
ヨク苡仁 十五両 三十銭 大附子 十枚 三十銭

百二頁 裏 解説
標注                                            類聚方
咬牙(コウガ)=歯をかみ合わせ食いしばる
掉頭(チョウトウ)=頭を振る
癰疽(ヨウソ)=カルブンケルを含む化膿性炎症疾患
附骨疽(フコッソ)=骨の腐る病、骨髄炎
瘻瘡(ロウソウ)=漏瘡=皮下、粘膜下に出来る袋状の化膿疾患
薫薬(クンヤク)=薬石、薬草を熱し煙を患部にあて薫じて治療する方法
陰縮し=意味不明

薫法(くんぽう)に関しては永田徳本・1630年没(一説に長田徳本)がよく用いたとの説があります。
辰砂(硫化水銀)や鉱物・生薬を熱で薫じ患部に当てて治療したとの記録があります。

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