類聚方広義・第二木曜会  2012・9・13


乾姜附子湯 四逆湯

九十二頁 裏
標注                                       類聚方





乾姜附子湯、此れ汗下の誤施に因り、其の変は若しの症を致す者なり。甘草乾姜湯の煩躁と略似たり。然れども彼は誤治に因り、病勢は激動急迫を致す。此れは病誤治を為すも重きを加えず。又急迫の症無く、唯精気脱甚だしきのみ、是れ甘草と附子の地を易(かえ)る所以なるか。
身に大熱無しの一句は、以って其の頭面四末に至るも、亦熱の無きを見わすに足る。此の條は宜しく梔子湯症と参考し、以って其の異なりを見るべし。
虚して下を制するに能わざるが故なり。此れ肺中冷ゆと為す。」必ず眩し、涎沫多し。甘草乾姜湯にて之を温む。若し湯を服し已り、渇す者は「消渇に属す、」
為則按ずるに、当に急迫の證有るべし。


乾姜附子湯
下利煩躁して厥す者を治す。
乾姜 一両 附子 一枚 各一銭五分
右二味、水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去り頓服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。

九十ニ頁 裏 解説
標注                                            類聚方
頭面四末(ヅメンシマツ)=頭部と手足をさし全身のこと 厥(ケッ)す=冷えて動きにくくなる

九十三頁 表
標注                                       類聚方
四逆湯は、厥を救うの主方なり。然れども傷寒にて熱裏に結する者、中風にて卒倒し、痰涎沸湧の者、霍乱にて未だ吐下せず、内に猶毒の有る者、老人の食鬱、及び諸卒病にて、閉塞して開かざるの如きは、縦令全身厥冷し、冷汗して脈微であろうとも、能く其の症を審らかにし、白虎、瀉心、承気、紫円、備急、走馬の類を以って、其の結を解き、其の閉を通ぜば、則ち厥冷治せざるとも自ずから復す。若し誤認して脱症と為し、遽やかに四逆、真武を用うれば、猶経を救いて足を引くがごとし。庸工の人を殺すは、常に此に坐す。嗚呼、方技小なりと雖も、 之を下した後、復汗を発し、昼日煩躁して眠りを得られず。夜にして安静、嘔せず渇せず、表證無し、脈は沈微、「身に大熱無き者、」

四逆湯
四肢厥逆し、身体疼痛、下利清穀、或は小便清利の者を治す。
甘草 ニ両 一銭二分 乾姜 一両半 九分 附子 一枚 六分
右三味、フソし、水三升を以って、煮て一升ニ合を取り、滓を去り、分温再服す。
水一合五勺を以って、煮て六勺を取る。「強人は大附子

九十三頁 表解説
標注                                            類聚方
食鬱(ショクウツ)=食事中にめまいがしたり箸を落とす
遽(スミ)やか=直ちに
経を救いて足を引く=首吊りした者を救おうと綱をそのままにして足を引くようなものだとし、方策を間違って人を殺してしまうことのたとえ
庸工(ヨウコウ)=普通の平穏な職人、ここでは凡医

坐(ザ)す=罪を犯す
方技(ホウギ)=医術
フソ=切り刻む
強人(ゴウジン)=体力のある壮健な人

九十三頁 裏
標注                                       類聚方
 死生はに係わる。存亡に由るなり高才卓識に非ざるに自り、難きかな理知を探るは。
傷寒、医之を下し云云、説は桂枝湯標に詳らかなり。清穀の者、特だ穀食化せざるのみならず、併せ臭気無きなり。
○病発熱頭痛、脈反って沈云云と、東洞先生曰く、若し差えざる者は、巳に薬を用うるも効の無きの辞なりと。按ずるに、金艦に曰く、宜しく麻黄附子細辛湯を用い、之を発すべしと。又曰く、疼痛の下に、下利清穀の四字脱すと。逸按ずるに、此の章は意義明らかならずして、必ず脱誤有り。強いて解すべからず。
○自利し渇せざる云云、其の蔵に寒有るを以ってなりと。按ずるに、蔵は泛ねく
一枚乾姜三両、」
「傷寒、」脈浮自汗出で、小便数、心煩、微し悪寒、脚攣急し、反って桂枝湯を与え、「其の表を攻めんと欲すは、」此れ誤りなり。之を得て便ち厥す。咽中乾き、煩躁吐逆の者は、甘草乾姜湯を作り之に与う。以って「其の陽を復す。」若し厥愈え足温なる者、更に芍薬甘草湯を作り之に与う。其の脚即ち伸ぶ。若し「胃気和せず、」譫語する者は、少しく調胃承気湯を与う。若し重ねて汗を発し、復焼鍼を加う者は、四逆湯之主どる。
○「傷寒、」医之を下し、続いて下痢を得る。

九十三頁 裏 解説
標注                                            類聚方
焉=焉(イズ)くんぞ、これ=「之」「此」とも解釈、文末につけて特定を示す
高才卓識に非ざるに自り、難きかな理知を探る=傷寒論序文の中に同様の記載が有り引用したもので、高才卓識でないと理知を探求できないという意味か!
泛(アマ)ねく=ひろく
譫語(センゴ)=うわごと

九十四頁 表
標注                                       類聚方
腹部を称するのみ。説は巳に桂枝湯標に詳らかなり。寒は、飲なり。及ち後章の寒飲が、是れなり。玉函に、服すの字無し。脈経は、四逆湯に宜しに作る。

○少陰病、飲食口に入りて則ち吐す云云は、調胃承気湯症に疑う有り。故に下すべからざるなりと曰うなり。按ずるに、当に之を吐すべしの下に、瓜蔕散に宜しの四字を脱す。又按ずるに、千金方此の條を引き、温温をチチに作る。是なり。正字通に曰く、チとは、心の鬱積する所なり。煩カイなりと。此の條の温温は、蓋し悪心カイ悶の状を謂うなり。又蘇問玉機眞蔵論に曰く、人をして逆気し背痛み、チチ然せしむると、
清穀止まず、身疼痛する者は、「急いで当に裏を救うべし。」後身疼痛し、清便自ずから調う者は、「急いで当に表を救うべし。裏を救うに」四逆湯に宜し。「表を救うに」桂枝湯に宜し。
○病発熱頭痛、脈反って沈、若し差えず、身体疼痛す、「当に其の裏を救うべし、」
○脈浮にして遅、「表熱裏寒、」下利清穀の者は、
○自利し渇せざる者、「太陰に属す。以って其の蔵に寒有るを以っての故なり。当に之を温むべし。宜しく四逆輩を服すべし。
○「少陰病、脈沈の者、急いで之を温む、」
○「少陰病、」飲食口に入りて則吐す、心中温温として吐せんと欲すも、復吐すこと能わず。始め之を得て、

九十四頁 表 解説
標注                                            類聚方

九十四頁 裏
標注                                       類聚方
王註の曰く、舒暢せざるなりと。張註の曰く、悲鬱の貌と。至眞要大論に曰く、チチとして復巳に萌すなり。張註の曰く、ウン積の貌と。合わせて之を観るに、亦以ってチチの義を併発すべし。膈上は脈経に膈下に作るは、是なり。
○大いに汗出で、熱去らず云云、是れ所謂脱汗なり。内は、腹中なり。脈経に、又の字無し。
○霍乱、吐利甚だしき者、及び所謂暴瀉症の急なる者、急なる者は死すに朝に崇えず。若し倉皇してを失し、擬議して策を誤り、人をして非命に斃れしめ、其の罪は何くにか帰せん。医人は当に平素より討究講明し、以って急を済い難を靖んず。大いに汗出で、熱去らず云云以下の諸章を、合わせ参考
手足寒、脈弦遅の者、此れ胸中実す。下すべからざるなり。当に之を吐すべし、「若し膈上に寒飲有りて、乾嘔する者は、吐すべからざるなり。急いで之を温む、」
○大いに汗出で、熱去らず、内に拘急し、四肢疼し、又下利厥逆し、而して悪寒する者は、
○大いに汗し、若しくは大いに下痢す、而して厥冷する者は、
○下利腹脹満、身体疼痛の者は、「先ず其の裏を温め、及ち其の表を攻む。裏を温むに四逆湯、表を攻むに桂枝湯、」
○嘔して脈弱、小便復利し、身に微熱有り。厥の見ゆ者は治し難し、
○吐利し汗出で、発熱悪寒、四肢拘急、手

九十四頁 裏 解説
標注                                            類聚方
舒暢(ジョチョウ)=心をゆったりとさせる
萌(キザ)す=植物が発芽する、始まる、発生する
崇(オ)えず=終わらない、尽くせない
倉皇(ソウコウ)=あわてる様
措(ソ)=さく(策)、処理する
擬議(ギギ)=見せ掛けの議論、もどきの議
斃(タオ・ヘイ)れ=射止める、滅ぼす、死なせる
済(スク)い=援助する
靖(ヤス)=安定する

九十五頁 表
標注                                       類聚方
すべし。
○既に吐し且つ利す云云、四逆の上、疑うらくは通脈の二字を脱す。
足厥冷の者は、
○既に吐し且つ利す、小便復た利し、而して大いに汗出で、下利清穀す、「内寒し外熱す、」脈微にして絶せんと欲す者は、
為則按ずるに、此れ甘草は君薬なり。


通脈四逆湯
四逆湯證にして、而して吐利厥冷の甚だしき者を治す。
甘草 ニ両 一銭二分 附子 一枚 六分 乾姜 三両 一銭二分
右三味、ミス三升を以って、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち

九十五頁 表 解説
標注                                            類聚方






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