類聚方広義・第二木曜会  2012・6・14


芍薬甘草湯 芍薬甘草附子湯 甘遂半夏湯 甘草小麦大棗湯

八十八頁 表
標注                                       類聚方
猶且つ其のソウ窟を剿しがたし。況や此の方に於いておや。金匱桔梗湯と、外臺桔梗白散とは、症治正に同じ。全く錯誤に属す。之を事実に験するに、二方の主治する所、其の病の軽重、治の緩急は、自ずから判然たり。方極の文、以って其の義を見るべけんや。


東洞先生、排膿湯と排膿散をを合せ、排膿散及湯と名づく。諸瘡瘍を療す。方用は排膿散の標に詳し。
排膿湯
諸瘍膿血有り、或は粘痰を吐し、而して急迫する者を治す。
甘草 ニ両 
八分 桔梗 三両 一銭二分 生姜 一両 四分 大棗 十枚 一銭
右四味、水三升を以って、煮て一升を取り、五合を温服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。日に再服す。
為則按ずるに、粘痰膿の如き者、之を主どる。



芍薬甘草湯
拘攣急迫する者を治す。

八十八頁 表 解説
標注                                            類聚方
剿(ソウ)す=絶つ、断ち切る


八十八頁 裏
標注                                       類聚方
腹中攣急して痛む者を治す。小児の夜啼き止まず、腹中攣急甚だしき者も、亦奇効有り。 芍薬 四両 甘草 四両 各一銭二分
右二味、フソし、水三升を以って、煮て一升半を取る。滓を去り、分温再服す。
水一合二勺を以って、煮て六勺を取る
「傷寒、」脈浮、自汗出で、小便数、心煩し、微しく悪寒す。脚攣急し、反って桂枝湯を与う、「其の表を攻めんと欲す、」此れ誤りなり。之を得て「便ち厥し、咽中乾き、煩躁吐逆の者に、甘草乾姜湯を作し、之に与う。以って「其の陽を復す。」若し厥愈え足温の者は、更に芍薬甘草湯を作し、之に与う。其の脚即ち伸ぶ。若し「胃気和せず、」譫語

八十八頁 裏解説
標注                                            類聚方
「便ち厥し、の「」、後の」が無い。ミスプリントか?

八十九頁 表
標注                                       類聚方




痼毒沈滞し、四肢攣急、屈伸難、或は骨節疼痛、寒冷グン痺する者を治す。七宝承気丸、或は十幹承気丸を兼用す。
此の方に大黄を加え、芍薬甘草附子大黄湯と名づく。寒疝、腹中拘急し、悪寒甚だしく、腰脚攣痛、睾丸ホウ腫、二便通ぜざる者に、奇効有り。
する者は、少し調胃承気湯を与う。若し重ねて汗を発し、復焼鍼を加う者は、四逆湯之主どる。

芍薬甘草附子湯
芍薬甘草湯證にして、悪寒する者を治す。
芍薬 甘草 各三両 
一銭二分 附子 一枚 四分
右三味、水五升を以って、煮て一升五合を取り、滓を去り、分温服す。
水二合を以って、煮て六勺を取る。
発汗し、病解せず、反って悪寒する者、「虚するが故なり。」

八十九頁 表 解説
標注                                            類聚方
痼毒(コドク)=病気がなかなか治らない原因のもの
グン痺=ひどく痺れること
寒疝(カンセン)=疝気(センキ)=神経痛、冷えて痛むこと
ホウ=堅くなること
焼鍼(ショウシン)=発汗するための鍼法か?

八十九頁 裏
標注                                       類聚方



飲家、心下満痛し、嘔吐せんと欲す、或は胸腹攣痛の者を治す。
此の方の妙は蜜を用うるに在り。故に若し蜜を用いざれば、則ち特だ効を得ざるのみならず、瞑眩し変をを生じる者有り。宜しく古法遵守すべし。
為則按ずるに、芍薬甘草湯證にして、悪寒する者之主どる。

甘遂半夏湯 芍薬甘草湯證にして、心下痞満し、嘔する者を治す。
甘遂 大なる者三枚 
二分 半夏 十二枚 一銭二分 芍薬 五枚 一銭 甘草指大の如くを一枚 五分
右四味、水二升を以って、煮て半升を取り、滓を去り、蜜半升を以って薬汁に和し、煎じて八合を取り、頓服す。
水一合六勺を以って、煮て四勺を取り、滓を去り、蜜四勺を内れ、煎じて六勺を取る

八十九頁 裏 解説
標注                                            類聚方
此の方の妙は蜜を用うるに在り=吉益東洞の娘婿、二宮桃亭は心下堅満を目標に甘遂半夏湯を用いたが蜜を入れなかった為に患者を死なせてしまう。このことを東洞から強く叱られる
瞑眩(メイケン漢音、メンゲン呉音)=目が見えなくなってめまいがする、惑う
古法(コホウ)=傷寒雑病論の治療方法
遵守(ジュンシュ)=厳格に守る



九十頁 表
標注                                       類聚方
利すると雖も、心下続いて堅満、溜飲家は特に此の症有り。
淡飲の一所に留停する者、之を溜飲と謂う。

蔵は、子宮なり。此の方蔵躁を治すは、能く急迫を緩めるを以ってなり。孀婦室女にて、平素憂鬱無聊、夜な夜な眠らざる等の人に、多く此の症を発す。発すれば則ち悪寒発熱し、戦慄錯誤、心神恍惚、居するに席に安からず、酸泣已まざるは、此の方を服せば立効す。
又、癇症、狂症にて、前症を髣髴
病者脈伏せ、其の人自利せんと欲し、利すれば反って快し。利すと雖も心下続いて堅満、「此れ溜飲の去らんと欲すを故と為すなり。」
為則按ずるに、芍薬甘草湯の加減の方なり。故に当に攣急の證有るべし。

甘草小麦大棗湯
急迫して狂驚の者を治す。
甘草 三両 
四分五厘 小麦 一升 二銭四分 大棗 十枚 四分
右三味、水六升を以って、煮て三升を取り、分温三服す。

九十頁 表 解説
標注                                            類聚方
此の症=傷寒論中の「快し」
淡飲(タンイン)=痰飲、溜飲ともいう、胸が痞える、胃カタル慢性胃炎など
蔵躁(ゾウソウ)=ヒステリー
孀婦(ソウフ)=未亡人
室女(シツジョ)=妊娠をしたことのない女性、処女
無聊(ブリョウ)=てもちぶさた、楽しみのない
戦慄(センリツ)=恐れおののく、びくびくする
錯誤(サクゴ)=間違う、不正確
恍惚(コウコツ)=われを忘れぼんやりする
酸泣(サンキュウ)=めそめそ泣く
癇症(カンショウ)=てんかん、ひきつけ、発作的に痙攣を起こす病気
髣髴(ホウフツ)=さもにたり、さながらよく似たさま

九十頁 裏
標注                                       類聚方
す者に、亦奇験有り。
○臓、金艦以って心臓と為すは、誤りなり。若し是心臓なら、何ぞ独り婦人にのみ与えんや。此の方を用い、而して其の妙を悟る者に非ずんば焉んぞ其の解を得んや。
○喜の字は、喜唾、喜忘、喜嘔、の喜と同じ。数の義なり。



粉は、粉錫なり。千金に、粱米粉を用う。外臺は、白粱粉を用う。近世又軽粉、甘草粉等を用う者有り。倶に誤りなり。余家は粉錫大黄二味を、等分にて丸と為し、粉黄丸と名づけ、カイ虫、心腹撹痛し、白沫を吐す者を治す。カイ下り其の痛み立ちどころに癒ゆ。甚だ妙なり。
○按ずるに、神農本経に曰く、

一合二勺を以って、煮て六勺を取る。
「婦人」蔵躁、喜(じばしば)悲傷してせんと欲し、象神霊の為す所の如く、数(しばしば)欠伸す。
為則按ずるに、急迫して狂驚する者之を主どる。



甘草粉蜜湯
吐涎吐虫し、心痛発作時に有る者を治す。
甘草 ニ両 二銭 粉 一両 一銭 蜜 四両 四銭
右三味、水三升を以って、先ず甘草を煮て、二升を取り、滓を去り、

九十頁 裏 解説
標注                                            類聚方
悲傷(ヒショウ)=悲しみいたむ
哭(コク)=なげき泣く、悲しくて泣く

欠伸(ケッシン)=あくび

甘遂半夏湯に関しての記述
勿誤薬室方函口訣(浅田宗伯著)より




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