類聚方広義・第二木曜会  2012・5・10


甘草湯・桔梗湯・排膿湯

八十六頁 裏
標注                                       類聚方
血月閉を主治す』と。名医別録に曰く、『婦人帯下』と、大明の曰く、『膿を排し、打損オ血を消す』と、
按ずるに、本草綱目の、土瓜根附方、『一月』の上に、『或』の字有り。是なり。
タイとタイは同じ。陰嚢の腫大なり。
劉熙釋名に曰く、『陰腫れるをタイと曰う。気の下タイなり』と、然らば則ち亦タイと通ず。按ずるに、本草綱目のリョウ鯉の條に、摘玄方を引き曰く、『婦人陰タイ、硬きこと卵状の如く、云云』と、余嘗て一婦人を療する。自ずから言うに「牝戸の、左邊突起し、凝ホウの者、十餘年、年年痛みを発し、衆治せるも効無し」と。之を診るに、形鶩卵の如し。即ちタイ疝なり。発すれば則ち大きさ常に倍し、堅コウにて疼痛、寒熱交作し、痛み少腹従り膀胱に達す。甚だしければ則ち心胸に及び、苦楚忍ぶべからず。年年二三発す。発する毎に桃核承気湯、大黄附子湯、芍薬甘草湯の合方を用うれば、則ち痛み退き腫れ消ゆる。又一婦人有り。年十七、牝戸右邊、隆起して形睾丸の如し。亦陰タイなり。大黄牡丹皮湯を与えて癒ゆ。タイ疝は男女倶に有り。以って見るべしや。此の方能く小児の陰核赤腫、陰頭腫脹を治す。煉蜜膏と為し、或は丸と為し用う。


凡そ紫円、備急円、梅肉丸、白散等を用い、未だ快吐下を得ず、悪心腹痛し、苦楚悶乱する者に、甘草湯を用うれば、則ち吐瀉倶に快く、腹痛頓に安んず。
○孫子バクの曰く、『凡そ湯を服し、嘔
右四味、杵きて散と為す。酒にて方寸ヒを服す。酒にて一銭を服す。日に三服す。
「帯下、」経水利せず、少腹満痛し、経一月に再見の者、
○陰タイ腫、















甘草湯
病逼迫、及び咽喉急痛する者を治す。

八十六頁 裏 解説
標注                                            類聚方
孫子バク(ソンシバク)=唐代の医者、千金方・千金翼方を著す


八十七頁 表
標注                                       類聚方
逆し腹に入らざる者は、先ず甘草三両、水三升を以って、煮て二升を取り、之を服し吐を得る。但之を服すも吐せざるは益(々)佳なり。消息定まりた後に、餘湯を服せば、即ち流利し、更に吐せざるなり』、此れ急迫カイ悶の症にして、半夏生姜の之(ゆ)く所と、病情同じからず。宜しく注意し處措すべし。【孫子バクの発言が何処までかかるか?調!】

喉痺腫痛し、咽喉懸雍の、深紅色を為す者は、ハ針にて放血するを、第一の捷策と為す。纏喉風にて、痰涎壅盛し、聲音出でざる者は、先ず礬石丹礬の二味を末とし吹きて、頑痰を挑吐すべし。而して後二症に倶に桔梗湯合半夏散を用うれば、則ち速やかな効有り。或は大黄を加う。○千金、


甘草 ニ両 二銭
右一味、水三升を以って、煮て一升半を取り、滓を去り、七合を温服す。
水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。日に二服す。
「少陰病、二三日、」喉痛の者に、甘草湯を与うべし。差えざる者は、桔梗湯を与う。
為則按ずるに、甘草は急迫を主どるなり。

桔梗湯
甘草湯證にして、腫膿有り、或は粘痰を吐す者を治す。

八十七頁 表 解説
標注                                            類聚方
ハ針(ヒシン)=三峰鍼のようなメス
捷策(ショウサク)=早い方法
壅盛(ヨウセイ)=多く出てふさぐ
挑吐(チョウト)=除くように吐かす

處措(ショソ)=とりはからう
懸雍(ケンヨウ)=のどちんこ
捷策(ショウサク)=はやい方法
纏喉風(テンコウフウ)=咽喉ジフテリイ、喉に白い義膜が付く
礬石(バンセキ)=ミョウバン
丹礬(タンバン)=硫酸銅

桔梗湯合半夏散=桔梗湯+半夏散及湯 (桔梗・甘草・半夏・桂枝)

八十七頁 裏
標注                                       類聚方
桔梗三両に作る。今之に従う。
○肺廱は、固より難治に属するも、其の暴発の者は、稍(やや)治し易しと為す。漸くに成る者は尤も治し難きと為す。当に須らく其の初起、精気の未だ脱せずにオヨび、力を極めて之を攻め、其の勢いを挫くべし。宜しく対症方を選用し、五日七日にて、白散、或は十幹丸を以って、臭膿穢毒を吐下すべし。若し熱除き身涼しく、脈静の者は、必ず全治を得るなり。若し猶予して決せず、
慢忽と治を為し、遷延として日を渉れば、則ち毒気浸淫し、制すべからずに至るは、死せずして何ぞや。治を措くの際に、心を用いざるべからざるなり。
○「咳して胸満し、振寒脈数云云」は、此れ肺廱症なり。至劇至重の者にして、白散と雖も、
桔梗 一両 一銭八分 甘草 ニ両 一銭二分 
右二味、水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、分温再服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。
「少陰病、二三日、」喉痛む者は、甘草湯を与え、差えざらん者は、桔梗湯を与う。
○ガイして胸満し、振寒し脈数、咽乾きて渇せず、時に濁唾腥臭を出し、久久に膿を吐すに、米粥の如き者、「肺廱と為す。」桔梗湯之を主どる。
為則按ずるに、粘痰の膿の如き者、之主どる。

八十七頁 裏 解説
標注                                            類聚方
白散(ハクサン)=桔梗白散=桔梗・貝母・巴豆
十幹丸=生生乳、大黄、消石の糊丸
(生生乳=消石、礬石、緑礬、食塩、雲母、青塩、ヨ石、水銀)
穢毒(ワイドク)=けがれた毒
猶豫(ユウヨ)=猶予=期限を伸ばす、ためらい決断しない
慢忽(マンコツ)=甚だしく、おろそかにする
遷延(センエン)=ぐずぐずして行きなやむ、のびのびになる
渉る=そぞろ歩く、経過する
浸淫(シンイン)=しみこむ

八十八頁 表
標注                                       類聚方
猶且つ其のソウ窟を剿しがたし。況や此の方に於いておや。金匱桔梗湯と、外臺桔梗白散とは、症治正に同じ。全く錯誤に属す。之を事実に験するに、二方の主治する所、其の病の軽重、治の緩急は、自ずから判然たり。方極の文、以って其の義を見るべけんや。


東洞先生、排膿湯と排膿散をを合せ、排膿散及湯と名づく。諸瘡瘍を療す。方用は排膿散の標に詳し。
排膿湯
諸瘍膿血有り、或は粘痰を吐し、而して急迫する者を治す。
甘草 ニ両 
八分 桔梗 三両 一銭二分 生姜 一両 四分 大棗 十枚 一銭
右四味、水三升を以って、煮て一升を取り、五合を温服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。日に再服す。
為則按ずるに、粘痰膿の如き者、之を主どる。



芍薬甘草湯
拘攣急迫する者を治す。

八十八頁 表 解説
標注                                            類聚方
剿(ソウ)す=絶つ、断ち切る

甘草 マメ科
効能:清熱解毒・補気

上は棒甘草(カンゾウのストロン部分) 下左は生甘草 下右は炙甘草

桔梗 キキョウ科
効能:鎮咳・去痰・排膿

晒しキキョウ

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