類聚方広義・第二木曜会  2012・12・13


真武湯  附子湯  附子硬米湯

九十八頁 裏
標注                                       類聚方
若し膽無くば亦用うべしの六字は、後人妄りに添ずるなり。削るべし。猪膽無くば熊膽を用うべし。更に佳なり。 右五味、水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、人尿と膽汁を内れ、和し相得せしめ、分温再服す。水一合二勺を以って、三味を煮て、四勺を取り、滓を去り、猪膽と人尿を和し服す。「若し膽無きも、亦用うべし。」
「少陰病、」下利し脈微の者、白通湯を与うも、利止まず。厥逆し脈無く、乾嘔煩する者は、白通加猪膽汁湯之を主どる。「湯を服し、脈暴出する者は死す。微し続く者は生く。」



真武湯
心下悸し、身ジュン動し、振振として地にタオれんと欲し、腹痛み、小便不利、或いは嘔し、或いは下利の者を治す。

九十八頁 裏 解説
標注                                            類聚方
熊膽(ユウタン)=熊の胆嚢を干した内容物

九十九頁 表
標注                                       類聚方
外臺に、朮三両に作る。


萎躄病、腹拘攣、脚冷たく不仁、小便不利、或いは不禁の者を治す。○腰疼し腹痛悪寒し、下利日に数行、夜間尤も甚だしき者、之を疝利と称す。此の方に宜し。又久利にて、浮腫を見わす、或いは咳きし或いは嘔す者も、亦良し。○産後の下利、腸鳴り腹痛、小便不利、支體ナン、或いは麻痺し、水気有りて、悪寒発熱す、或いは咳止まず、漸として労状と成る者、尤も難治と為す。此の方に宜し。

茯苓 芍薬 生姜 各三両 九分 朮 ニ両 六分 附子 一枚 三分
右五味、水八升を以って、三升を取り、七合を温服す。
水一合六勺を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。「後の加減法、若し咳する者は、五味半升、細辛乾姜各一両を加う。若し小便利する者は、茯苓を去る。若し下利の者は、芍薬を去り、乾姜ニ両を加う。若し嘔する者は、附子を去り、生姜を加う。前に足すに半斤と成す。」
「太陽病、」発汗、汗出で解せず、其の人仍を発熱す。心下

九十九頁 表 解説
標注                                            類聚方
疝利(センリ)=寒によって引き起こされた下利
支體(シタイ)=肢体

労状(ロウジョウ)=腸結核?疲労した様

九十九頁 裏
標注                                       類聚方
地にヘキす(タオる)は、脈経に地にるに作る。は、倒なり。○玉函に、或いは小便利すを、或いは小便自利に作る。按ずるに、或いは下利すを、当に或いは下利せずに作るべし。否則ち上文の自下利すの語と相応ぜず。且つ或いは以下の四症は、亦皆本方の治す所なり。加減法も、後人のザン入のみ。


水病は、遍身浮腫し、小便不利、心下痞硬、下利腹痛、身体痛み、或いは麻痺し、或いは悪風し寒す者、此の方に宜し。
金匱妊娠病篇に曰く、婦人妊娠六七月、脈弦にして発熱す。
悸し、頭眩、身ジュン動、振振として地にタオれんと欲す者は、○「少陰病、二三日已まず四五日に至り、」腹痛し小便不利、四肢沈重疼痛、自下利の者、「此れ水気有ると為す。」其の人或いは咳し、或いは小便利、或いは下利、或いは嘔する者は、

附子湯
身体攣痛、小便不利、心下痞硬、或いは腹痛の者を治す。
附子 二枚 
四分 茯苓 芍薬 各三両 六分 人参 ニ両 四分 朮 四両 八分

九十九頁 裏 解説
標注                                            類聚方
仆(ボク)=たおれる、倒れる
否則ち(イナスナワち)=否(シカ)らずんば

◎金匱妊娠病篇に附子湯の条文がありあすが類聚方では抜けていて尾台先生が標柱に追記しています。↓
『婦人妊娠六七月、脈弦にして発熱す。其の胎愈(イヨイヨ)脹り、腹痛悪寒す者、小腹扇の如き、然る所以の者は、子臓の開くなり。当に附子湯を以って其の臓を温むべし。』

百頁 表
標注                                       類聚方
其の胎愈(イヨイヨ)脹り、腹痛悪寒す者、小腹扇の如き、然る所以の者は、子臓の開くなり。当に附子湯を以って其の臓を温むべし。按ずるに扇は扉なり。正字通に曰く、戸の(コウ)にして 鳥羽翕張の如し。故に戸は従うに羽に従うと。今之を験するに、妊娠六七月の間、少腹時時縮張し痛を為す者、発熱悪寒し、小便不利多し。附子湯、当帰芍薬散を選用せば、則ち小便快利し、脹痛速やかに差ゆる。又按ずるに、癒脹は、疑うらくは翕張の誤りならん。此の條張子の口気に似ず。然れども此れを用うに、効有り。学者之を試せ。 右五味、水八升を以って、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。水一合六勺を以って、煮て六勺を取る。
「少陰病、之を得て二三日、」口中和し、其の背悪寒する者は、当に之に灸すべし。○「少陰病、」身体痛み、手足寒、骨節痛み、脈沈の者は、
為則按ずるに、当に小便不利、心下悸、或いは痞硬の證有るべし。薬徴に之を弁ず。

附子硬米湯
腹中雷鳴、切痛、嘔吐、悪寒

百頁 表 解説
標注                                            類聚方
(カイコウ)=戸の開け閉め、
癒張(イヨイヨハる)=正字通に『翕張』の字句があり、字の似ている事から癒張は翕張のことで筆写された時に間違ったのではないかとの尾台先生の見解。
張子(チョウシ)=張仲景のこと、後人や弟子が敬いを込めて使う尊詞。語尾に子を付ける(例=孔子、孟子、老子など・・)
口中和し(コウチュウワ)=味が分からなくなるという説と、口の中がぬらぬらと粘っこくなるという説がある

百頁 裏
標注                                       類聚方
外臺に、『水八升を以って、米を煮て熟を取り、米を去り、薬を内れ、煮て三升をとる。滓を去り寒温に適し、一升を飲む』に作る。此の方は硬米多し。宜しく此の煎法を用うべし。
孫子バクは、此の方を以って、霍乱四逆し、吐少なく嘔の多き者を治す。老工自ずから脱套の手段有り。
寒気は、則ち水なり。若し激しく心胸に及ぶ者は、大建中湯を合わせ奇効有り。疝家溜飲家に多く此の症有り。
の者を治す。
附子 一枚 
二分 半夏 半升 一銭二分 甘草 一両 二分 大棗 十枚 五分 硬米 半升 二銭
右五味、水八升を以って、米を煮て熟せしめ、湯成りて滓を去り、一升を温服す。日に三服す。
水一合六勺を以って、米を煮て一合二勺を取り、米を去り諸薬を内れ、煮て六勺を取る。
腹中「寒気、」雷鳴切痛、胸脇逆満し、嘔吐す、

赤丸
心下悸、淡飲有り、嘔して腹痛、悪寒、或いは微厥する者を治す。

百頁 裏 解説
標注                                            類聚方
硬米(コウベイ)=うるち米
脱套(ダットウ)=形式にとらわれない

疝家(センカ)=冷えて痛む者
溜飲家(リュウインカ)=酒飲みに多く水毒が胃内に滞っている者

硬米(コウベイ)=うるち米



附子硬米湯と大建中湯について(大塚敬節先生口述)

「附子硬米湯は大建中湯によく似ているけれど腹がごろごろ鳴って上に突き上げてくる場合に使います。
大建中湯は冷えのために腸の蠕動が過剰になっている場合と全く動きが無い場合に使います。
症状として腸の動きが見えるくらいぐにゃぐにゃになる場合と、腹部にガスが溜まりパンパンになる場合です。」


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