類聚方広義・第二木曜会  2012・11・8


四逆加人参湯・通脈四逆加猪膽汁湯 白通湯 白通加猪膽汁湯

九十六四頁 表
標注                                       類聚方





千金、外臺は倶に人参三両に作る。
此の方は、自下痢による脱症を主どり、茯苓四逆湯は、汗下後の脱症を主どる。然れども執ヒ家は必ずしも拘泥せず、操縦自在にして得るを為すのみ。諸方は
清穀、「裏寒外熱、」汗出でて厥す者、
為則按ずるに、当に附子大なる者一枚に作るべし。乾姜を以って其の然たるを知る。甘草は新校正に、三両に作るは是なり。


四逆加人参湯
四逆湯證にして、心下痞硬する者を治す。
四逆湯方内に於いて、人参一両を加う。
甘草 
一銭二分 乾姜 九分 附子 人参 各六分
右四味、煮ること四逆湯の如し。

九十六頁 表 解説
標注                                            類聚方
唯(ただ)=ただ〜のみ

九十六頁 裏
標注                                       類聚方
皆然り。按ずるに、此の條疑うらくは脱語有らん。


茯苓四逆湯、宋版玉函千金翼は、并び茯苓四両に作る。今之に従う。
○四逆加人参湯症にして、心下悸し、小便利せず、身ジュン動し煩躁する者を治す。
○霍乱の重症にして吐瀉の後、厥冷筋タ、煩躁、熱無く渇無く、心下痞硬、小便不利、脈微細の者は、此の方を用うべし。服後小便利する者は救い得るべし。
○諸久病、精気衰憊し、乾嘔し不食し、腹痛して溏泄悪寒し、面
悪寒し脈微、而して復利す。利止むは亡血なり。
為則案ずるに、当に心下軽病有るべし。之薬徴人参の條下に弁ず。
茯苓四逆湯
四逆加人参湯證にして、悸する者を治す。
茯苓 六両 
一銭二分 人参 一両 三分 甘草 ニ両 六分 乾姜 一両半 四分五厘 附子 一枚 三分
右五味、水五升を以って、煮て三升を取り、滓を去り、七合を温服す。
水一合を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。

九十六頁 裏 解説
標注                                            類聚方
宋版(ソウバン)=宋版傷寒論
玉函(ギョッカン)=孫真人玉函方=日本で南宋本を発見
千金翼(センキンヨク)=孫子バクが千金方を編纂し直した千金翼方
溏泄(トウセツ)=水溶性の下痢

九十七頁 表
標注                                       類聚方
部四肢微しく腫れる者を治す。産後調摂を失す者に、多く此の症有り。
慢驚風チク搦上竄下利止まず、煩躁ジュツ小便不利し、脈微数の者を治す。



霍乱、吐下大いに甚だしきの後、脱汗するに珠の如く、気息微微にして、厥冷し転筋、乾嘔止まず、カイ躁擾、脈微にして脈の絶えんとする者、死生は一線に繋り、此の方に非ずんば、挽回す能わざるなり。服後脱汗煩躁倶に止み、小便利すりる者は佳兆と為す。若し猪膽無くば、熊膽を以って之に代う。
○諸四逆湯、其の症は皆危篤ならざるは無し。而して此れ最も重き極困
発汗若しくは之を下し、病仍を解せず、煩躁する者、
為則按ずるに、当に心下悸し、悪寒の證有るべし。

通脈四逆加猪膽汁
通脈四逆湯證にして、乾嘔氏、煩躁して安からざる者を治す。
四逆湯方内に於いて、猪膽汁半合を加う。餘は前法に依り服す。如(も)し猪膽無くんば、羊膽を以って之に代う。
甘草 
一銭二分 附子 六分 乾姜 一銭二分 猪膽 二分水少し許りを以って、和解す。
右四味、煮るに四逆湯の如くす。滓を去り、


九十七頁 表 解説
標注                                            類聚方
慢驚風(マンキョウフウ)=慢性的な子供のひきつける病、脳膜炎、髄膜炎も含む
チク搦(チクダク)=筋肉が萎縮して動きにくい、或いは緊張性の痙攣
上竄(ジョウザン)=眼が上にかくれる、白目をむく
ジュツタ(ジュツテキ)=恐れ悲しみびくびくする
霍乱(カクラン)=急性の吐瀉病
転筋(テンキン)=こむら返り
煩カイ(ハンカイ)=いらだち意識が乱れる
猪膽汁(チョタンジュウ)=猪の胆嚢にある内容物

九十七頁 裏
標注                                       類聚方
の症と為す。査照参究し、以って其の義を了すべし。
○子柄曰く、慢驚風にて危篤の者、此の方効有りと。斯の言信ずべし。但猪膽に代えて、水銀、鉛丹、金汁等を以ってせば、反って効有りと曰うは、誤りなり。

方中、人尿五合の四字が脱す。右三味は、当に四味に作るべし。かすを去るの下、人尿を内れるの三字脱す。今之を正す。人尿は、童子の未だ穀食せざる者を、佳と為す。宜しく病無き者を選ぶべし。
○按ずるに、此の條は疑うらくに下利の下、腹痛の字脱す。利止まずの上、若しの字脱す。且つ本論は白通湯と、白通加猪膽汁湯を分かちて、二條と為すは、
猪膽汁を内れ服す。
吐已み下断ち、汗出でて厥し、四肢拘急して解せず、脈微荷して絶えと欲する者、


白通湯
下利腹痛、厥して頭痛する者を治す。
葱白 四茎 
一銭七分 乾姜 一両 附子 一枚 各七分 人尿 五合 二勺
右四味、水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、人尿を内れ、分温再服す。
水一合二勺を以って、煮て四合を取り、滓を去り人尿を内れ、和して相得せしめ服す。

九十七頁 裏 解説
標注                                            類聚方
葱白(ソウハク)=ネギの白い部分

九十八頁 表
標注                                       類聚方
伝写の誤りなり。今本論加味諸方の文例に拠り、合わせ一條と為す。
○此の方の症、四逆湯症に比べ、下利稍緩し。且つ清穀大汗、四肢拘急等、急迫の症無し。故に甘草を用いざるなり。葱白は、陶弘景の曰く、傷寒にて頭痛を治すと。陳士良の曰く、陰毒腹痛を止むと。
「少陰病、」下痢し脈微の者、白通湯を与うに利止まず厥逆し脈無く、乾嘔煩する者は、白通加著膽汁湯之を主どる。「湯を服し、脈暴出する者は死す、微しく続く者は生く。」
為則按ずるに、当に気逆の證有るべし。

白通加著膽汁湯
白通湯證にして、厥逆乾嘔し煩躁する者を治す。
葱白 四茎 
一銭七分 乾姜 一両 附子 一枚 各七分 人尿 五合 二勺 猪膽汁 一合 猪膽二分、水少し許りを以って、和解す。


九十八頁 表 解説
標注                                            類聚方
陳士良(チンシリョウ)=後唐時代の「食性本草」著者か?

九十八頁 裏
標注                                       類聚方
若し膽無くば亦用うべしの六字は、後人妄りに添ずるなり。削るべし。猪膽無くば熊膽を用うべし。更に佳なり。 右五味、水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、人尿と膽汁を内れ、和し相得せしめ、分温再服す。水一合二勺を以って、三味を煮て、四勺を取り、滓を去り、猪膽と人尿を和し服す。「若し膽無きも、亦用うべし。」
「少陰病、」下利し脈微の者、白通湯を与うも、利止まず。厥逆し脈無く、乾嘔煩する者は、白通加猪膽汁湯之を主どる。「湯を服し、脈暴出する者は死す。微し続く者は生く。」


真武湯
心下悸し、身ジュン動し、振振として地にタオれんと欲し、腹痛み、小便不利、或いは嘔し、或いは下利の者を治す。

九十八頁 裏 解説
標注                                            類聚方
熊膽(ユウタン)=熊の胆嚢を干した内容物

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