類聚方広義・第二木曜会 2012・10・11
四逆湯 通脈四逆湯
腹部を称するのみ。説は巳に桂枝湯標に詳らかなり。寒は、飲なり。及ち後章の寒飲が、是れなり。玉函に、服すの字無し。脈経は、四逆湯に宜しに作る。 ○少陰病、飲食口に入りて則ち吐す云云は、調胃承気湯症に疑う有り。故に下すべからざるなりと曰うなり。按ずるに、当に之を吐すべしの下に、瓜蔕散に宜しの四字を脱す。又按ずるに、千金方此の條を引き、温温をチチに作る。是なり。正字通に曰く、チとは、心の鬱積する所なり。煩カイなりと。此の條の温温は、蓋し悪心カイ悶の状を謂うなり。又素問玉機眞蔵論に曰く、人をして逆気し背痛み、チチ然せしむると、 |
清穀止まず、身疼痛する者は、「急いで当に裏を救うべし。」後身疼痛し、清便自ずから調う者は、「急いで当に表を救うべし。裏を救うに」四逆湯に宜し。「表を救うに」桂枝湯に宜し。 ○病発熱頭痛、脈反って沈、若し差えず、身体疼痛す、「当に其の裏を救うべし、」 ○脈浮にして遅、「表熱裏寒、」下利清穀の者は、 ○自利し渇せざる者、「太陰に属す。以って其の蔵に寒有るを以っての故なり。当に之を温むべし。宜しく四逆輩を服すべし。 ○「少陰病、脈沈の者、急いで之を温む、」 ○「少陰病、」飲食口に入りて則吐す、心中温温として吐せんと欲すも、復吐すこと能わず。始め之を得て、 |
瓜蔕散=瓜蔕(マクワウリ)+赤小豆(アズキ)、別々に粉にして等分を合わせ吐剤として用う |
王註の曰く、舒暢せざるなりと。張註の曰く、悲鬱の貌と。至眞要大論に曰く、チチとして復巳に萌すなり。張註の曰く、ウン積の貌と。合わせて之を観るに、亦以ってチチの義を併発すべし。膈上は脈経に膈下に作るは、是なり。 ○大いに汗出で、熱去らず云云、是れ所謂脱汗なり。内は、腹中なり。脈経に、又の字無し。 ○霍乱、吐利甚だしき者、及び所謂暴瀉症の急なる者、急なる者は死すに朝に崇えず。若し倉皇して措を失し、擬議して策を誤り、人をして非命に斃れしめ、其の罪は何くにか帰せん。医人は当に平素より討究講明し、以って急を済い難を靖んず。大いに汗出で、熱去らず云云以下の諸章を、合わせ参考 |
手足寒、脈弦遅の者、此れ胸中実す。下すべからざるなり。当に之を吐すべし、「若し膈上に寒飲有りて、乾嘔する者は、吐すべからざるなり。急いで之を温む、」 ○大いに汗出で、熱去らず、内に拘急し、四肢疼し、又下利厥逆し、而して悪寒する者は、 ○大いに汗し、若しくは大いに下痢す、而して厥冷する者は、 ○下利腹脹満、身体疼痛の者は、「先ず其の裏を温め、及ち其の表を攻む。裏を温むに四逆湯、表を攻むに桂枝湯、」 ○嘔して脈弱、小便復利し、身に微熱有り。厥の見ゆ者は治し難し、 ○吐利し汗出で、発熱悪寒、四肢拘急、手 |
舒暢(ジョチョウ)=心をゆったりとさせる 悲鬱(ヒウツ)=気がふさいだもの悲しい 萌(キザ)す=植物が発芽する、始まる、発生する ウン積(ウンシャク)=もつれたり、みだれがつみ重なる 崇(オ)えず=終わらない、尽くせない 倉皇(ソウコウ)=あわてる様 措(ソ)=さく(策)、処理する 擬議(ギギ)=見せ掛けの議論、もどきの議 斃(タオ・ヘイ)れ=射止める、滅ぼす、死なせる 済(スク)い=援助する 靖(ヤス)=安定する |
すべし。 ○既に吐し且つ利す云云、四逆の上、疑うらくは通脈の二字を脱す。 ○霍乱病、外感に因ると雖も、蓋し傷食なり。又疝チョウを挟みて激動する者有り。其の吐かず下らず、胸腹の激痛する者は、当に先ず備急円、或いは紫円を与え、以って之を吐下すべし。腹痛悶乱止み、而して嘔止む。薬汁入らざる者は、小半夏加茯苓湯を以って其の嘔を止むべし。吐下の後、頭痛発熱身疼痛し、渇して嘔吐し、小便不利、脈浮数の者は、五苓散に宜し。前症にて吐利止まず、四肢厥冷し、熱飲を好む者は、人参湯。吐下止みて、大熱大喝し、煩躁して心下痞硬する |
足厥冷の者は、 ○既に吐し且つ利す、小便復た利し、而して大いに汗出で、下利清穀す、「内寒し外熱す、」脈微にして絶せんと欲す者は、 為則按ずるに、此れ甘草は君薬なり。 通脈四逆湯 四逆湯證にして、而して吐利厥冷の甚だしき者を治す。 甘草 ニ両 一銭二分 附子 一枚 六分 乾姜 三両 一銭二分 右三味、水三升を以って、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち |
外感(ガイカン)=感染症 傷食(ショウショク)=食べ物から生じた病気 疝チョウ(センチョウ)=腹にできた塊 備急円(ビキュウエン)=巴豆・乾姜・大黄の末を蜜で丸剤にしたもの 紫円(シエン)=巴豆・赤石脂・代赭石・杏仁の末を糊で丸剤にしたもの |
者は、白虎加人参湯。前症にして頭痛汗出で、悪寒身体疼痛し、心下痞硬せざる者は、白虎加桂枝湯。乾嘔止まず、冷汗厥逆し、転筋腹痛、脈微にして絶えん欲す者は、四逆湯を用うべし。苟くも攻伐の術、治安の策を精究すれば、施設を誤る無し。其の起(タ)つべき者を起(タ)たすは、豈其れ難(カタ)からんや。 通脈四逆湯、諸れを四逆湯に比べれば、其の症の重きこと一等なり。面赤色以下、則ち兼症なり。其の人の下に、疑うらくは或いはの字を脱す。加減法は、後人のザン入のみ。 |
温め再服す。煮るに四逆湯の如し。「其の脈即出る者は癒ゆ。後の加減法にて、面色赤き者は、葱九茎を加う。腹中痛む者は、葱を去り芍薬ニ両を加う。嘔する者は、生姜ニ両を加う。咽痛の者は、芍薬を去り桔梗一両をを加う。利止み脈出ざる者は、桔梗を去り、人参ニ両を加う。」 「少陰病、」下利清穀、「裏寒外熱、」手足厥逆、脈微にして絶えんと欲し、身反って悪寒せず、其の人面赤色、或いは腹痛、或いは乾嘔、或いは咽痛、或いは利止み、脈出ざる者、 ○下利 |
乾嘔(カンオウ)=からえずき 施設(シセツ)=適合したほどこし、計画して実行する |
葱(ネギ) |
清穀、「裏寒外熱、」汗出でて厥す者、 為則按ずるに、当に附子大なる者一枚に作るべし。乾姜を以って其の然たるを知る。甘草は新校正に、三両に作るは是なり。 四逆加人参湯 四逆湯證にして、心下痞硬する者を治す。 四逆湯方内に於いて、人参一両を加う。 甘草 一銭二分 乾姜 九分 附子 人参 各六分 右四味、煮ること四逆湯の如し。 |