類聚方広義・第二木曜会 2012・1・12
橘皮大黄朴消湯・桃核承気湯
張し、精気衰脱し、身体枯槁して、飲食の一切咽を下り難きに至り、決して救うべからざるなり。 蒸蒸発熱は、猶釜甑にて物を蒸すがごとく、熱気蒸騰し、内より外に達するを謂うなり。 飲食傷、吐下の後、心胸猶爽快ならず、或は噫気呑酸の者を治す。又痰飲家にて、心下、或は臍邊に塊あり。平素飲食する毎に |
胸中痛み、微溏する者は、此れ柴胡の證に非ず。嘔を以って、故に極吐下を知るなり、」 ○「陽明病、」吐せず、下さず、心煩の者は、 ○「太陽病、三日」発汗すも解せず、蒸蒸発熱する者は、「胃に属すなり、」 ○「傷寒、」吐した後腹脹満の者、 ○大便通ぜず、「胃気和せざる者は、」 為則按ずるに、但急迫して大便通ぜざる者、之を主どる。 橘皮大黄朴消湯 心胸間に宿滞あり、而して結する者を治す。 |
釜甑(フソウ)=かま、せいろ、こしき 噫気(アイキ)=おくび・げっぷ 呑酸(ドンサン)=酸味のある胃液が口に逆流すること・胃酸過多・むねやけ 痰飲家(タンインカ)=慢性的に口や鼻から出る粘液が多い人 |
痛を作し、或は吐食吐飲、吐酸ソウ囃、大便難なる者を治す。桂枝枳実生姜湯を合すも、亦佳し。 按ずるに、膾食の心胸間に在りて化せざると曰う者は、妄と謂うべしや。食物胃腸に在りて、化せざるは、之れ有り。豈心胸に留在せば、チョウ病を為す者有らんや。若し患う所実して心胸に在れば、当に早く瓜蔕を以って之を吐すべし。 産後、悪露下らず、少腹凝結して、上衝急迫し、心胸安からざる者を治す。凡そ産後の諸患の、多くは悪露の盡かざる之の致す所なり。早く此の方を用うるを、佳しと為す。 ○経水不調にて、上衝甚だしく、眼中に厚 |
橘皮 一両 六分 大黄 朴消 各二両 一銭二分 右三味、水一大升を以って、煮て小升を取り、頓服す。水一合四勺を以って、煮て六勺を取る。即消ゆ。 鱠食之心胸の間に在りて、化せず、吐すに復出でず。速やかに下して之を除く、「久しゅうせばチョウ病を成さん」 桃核承気湯 血證、小腹急結、上衝する者を治す。 桃仁 五十個 六分 桂枝 芒消 甘草 ニ両 五分 大黄 四両 一銭 |
ソウ囃(ソウソウ)=やかましくはやしたてる 膾食(カイショク)=なますなど生の食べ物 妄(モウ)=でたらめ チョウ病=腹中のしこり・塊となる病気 瓜蔕(カテイ)=マクワウリの蔕(ヘタ) 悪露(オロ)=産後の排泄物 |
膜を生じ、或は赤脈怒起、瞼胞赤爛、或は齲歯疼痛し、小腹急結する者を治す。又打撲損傷眼を治す。 ○経閉し、上逆発狂し、或は吐血衄血、及び赤白帯下、小腹急結し、腰腿攣痛する者を治す。 痢疾にて、身熱し、腹中拘急、口乾咽燥、舌色殷紅、便膿血の者を治す。 「下る者は癒ゆ」、脈経に「之を下せば則ち癒ゆ」と作すは是なり。 ○血行利せず上衝心悸し、少腹拘急し、四肢グン痺、或は痼冷の者 を治す。 ○淋家にて、少腹急結し、痛み腰腿に連なり、茎中疼痛し、小便ケン滴して通ぜざる者は、利水剤の能く地する所に非ざるなり。此の方を用うれば則ち二便快利し、苦痛立どころに除く。小便リュウ閉し、小腹急結して痛む者、打撲疼痛にて、転側能わず、二便閉ショクする者も亦良し。 ○會陰打撲は、速やかにオ滞を駆逐し、血熱を洗滌せずんば、則ちオ血凝滞し、キン熱腫脹して、必ず小便不通を為すなり。若し尿道キン閉し、陰茎腫痛甚だしきに至れば、尿道管を用いること能わず、徒に立ちて |
右五味、水七升を以って、煮て二升半を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上せ、微沸せしめて火より下ろす。「食に先んじて」五合を温服す。水一合五勺を以って、煮て六勺を取り、滓を去り、芒消を内れ、消しせしめ服す。日に三服す。「当に微利す。」 「太陽病解せず、熱膀胱に結し、」其の人狂うが如く、血自ずから下る。下る者は癒ゆ。「其の外解せざる者は、」尚未だ攻むべからず。当に先ず外を解すべし。外解し已り、但少腹急結する者は、及ち之を攻むべし。 |
赤脈(セキミャク)=眼の白い部分にある血管 齲歯(ウシ)=虫歯 衄血(ジクケツ)=鼻血 帯下(タイゲ)=女性生殖器から出る分泌物・こしけ 殷紅(インコウ)=黒ずんだ赤色 グン痺(グンピ)=しびれ、麻痺 痼冷(コレイ)=なかなか治らない冷え 淋家(リンカ)=小便がたらたらとしか出ない人 茎中(ケイチュウ)=尿道か? リュウ閉=小便がスムースに出ない 閉ショク=出にくい 會陰(エイン)=任脈の第1経穴・肛門から外生殖器までの中間部分 陰茎(インケイ)=男性器 尿道管=幕末、外国から入った尿道管のことか? |
其の死を見るのみ。故に若し斯くの症に遭えば、二便の利不利を問わずして、早く此の方を用い、以ってオ滞を駆し、熱閉を解けば、則ち凝腫溺閉に至らず、是最上の乗法と為す。且つ打処に直にハ針を以って軽軽に乱刺し放血するを、佳しと為す。 ○大黄牡丹皮湯は、諸癰疽、疔毒、下疳、便毒、淋疾、痔疾、臓毒、瘰癧、流注、陳久の疥癬、結毒、瘻瘡、無名の悪瘡にて、膿血盡きず、腹中凝閉す。或は塊有りて、二便利せざる者を治す。症に随って伯州散、七寶丸、十幹丸等を兼用す。結毒瘻瘡、沈滞して動かざる者は、七寶、或は十幹を、法の如く之に用いる。其の間は湯薬を停む。或は薫薬を用う。薫薬を用う者も、亦然り。用い畢りて後に、咽口腐爛甚だしき者は、瀉心湯、調胃承気湯等を以って、残毒を疏滌し、且つ含嗽剤を用いるを、佳しと為す。 ○産後、悪露下らず、小便不利、血水壅遏し、少腹満痛、通身浮腫、大便難なる者を治す。又産後、悪露盡きず、数日を過ぎ、寒熱交差、脈数急、小腹或は腰ヒ痛み激しき者は、癰を発すの兆しなりて能く病の情機 を審らかにして、早く此の方を用い之を下すべし。巳に膿潰の者も、亦此の方に宜し。 ○経水不調、赤白帯下、赤白痢疾、小腹凝結、小便赤渋、或は水気有る者を治す。 ○按ずるに、瓜子の充実の者、一合強、今秤するを以って、之を量るに十六銭を得る。則ち一升は漢の八両なり。 按ずるに、大黄甘遂湯、抵当湯とは、皆小腹満する者を主どるなり。抵当湯症は、硬満して小便自利、此の方症は、小腹膨満し、 |
大黄牡丹皮湯 臍下に結毒有り。之を按ずるに即ち痛し。及び便膿血の者を治す。 大黄 四両 八分 牡丹皮 一両 六分 桃仁 五十個 五分 瓜子 半升 八分 芒消 三合 九分 右五味、水六升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、芒消を内れ、再び煎沸す。之を頓服す。水二合八勺を以って、四味を煮て六勺を取り、滓を去り、芒消を内れ、消せしめ服す。 |
ハ針(ヒシン)=先の尖ったメス・三稜鍼 |
而して甚だしく硬からず、小便微し難、斯く以ってオ血と水血の結滞との異なりを見るべしや。 ○此の方は、特だ産後のみならず、凡そ経水不調、男女のリュウ閉、小便満痛の者、淋毒沈滞し、微淋、小腹満痛し、忍ぶべからざず、膿血を洩らす者、皆能く之を治す。 |
膿有るは当に下るべし。如し膿無くば当に血下るべし。 「腸癰の者、」小腹腫痞、之を按ずるに即ち痛むこと淋の如く、小便自調、時時発熱、自汗出で、復悪寒す。「其の脈遅緊の者、膿未だ成らず。之を下すに、当に血有るべし。脈洪数の者は、膿巳に成る。下す下からざるなり。」 為則按ずるに、千金方に、牡丹皮三両、瓜子一升、芒消ニ両なり。瓜子一升は、今当に十両なるべし。 大黄甘遂湯 小腹満、敦状の如く、小便微難、 |