類聚方広義・第二木曜会  2012・1・12


橘皮大黄朴消湯・桃核承気湯

八十一頁 表
標注                                       類聚方
張し、精気衰脱し、身体枯槁して、飲食の一切咽を下り難きに至り、決して救うべからざるなり。

蒸蒸発熱は、猶釜甑にて物を蒸すがごとく、熱気蒸騰し、内より外に達するを謂うなり。






飲食傷、吐下の後、心胸猶爽快ならず、或は噫気呑酸の者を治す。又痰飲家にて、心下、或は臍邊に塊あり。平素飲食する毎に
胸中痛み、微溏する者は、此れ柴胡の證に非ず。嘔を以って、故に極吐下を知るなり、」
○「陽明病、」吐せず、下さず、心煩の者は、
○「太陽病、三日」発汗すも解せず、蒸蒸発熱する者は、「胃に属すなり、」
○「傷寒、」吐した後腹脹満の者、
○大便通ぜず、「胃気和せざる者は、」
為則按ずるに、但急迫して大便通ぜざる者、之を主どる。



橘皮大黄朴消湯
心胸間に宿滞あり、而して結する者を治す。


八十一頁 表 解説
標注                                            類聚方
釜甑(フソウ)=かま、せいろ、こしき
噫気(アイキ)=おくび・げっぷ
呑酸(ドンサン)=酸味のある胃液が口に逆流すること・胃酸過多・むねやけ
痰飲家(タンインカ)=慢性的に口や鼻から出る粘液が多い人



八十一頁 裏
標注                                       類聚方
痛を作し、或は吐食吐飲、吐酸ソウ囃、大便難なる者を治す。桂枝枳実生姜湯を合すも、亦佳し。
按ずるに、膾食の心胸間に在りて化せざると曰う者は、と謂うべしや。食物胃腸に在りて、化せざるは、之れ有り。豈心胸に留在せば、チョウを為す者有らんや。若し患う所実して心胸に在れば、当に早く瓜蔕を以って之を吐すべし。

産後、悪露下らず、少腹凝結して、上衝急迫し、心胸安からざる者を治す。凡そ産後の諸患の、多くは悪露の盡かざる之の致す所なり。早く此の方を用うるを、佳しと為す。
○経水不調にて、上衝甚だしく、眼中に厚
橘皮 一両 六分 大黄 朴消 各二両 一銭二分 右三味、水一大升を以って、煮て小升を取り、頓服す。水一合四勺を以って、煮て六勺を取る。即消ゆ。
鱠食之心胸の間に在りて、化せず、吐すに復出でず。速やかに下して之を除く、「久しゅうせばチョウ病を成さん」

桃核承気湯
血證、小腹急結、上衝する者を治す。
桃仁 五十個 
六分 桂枝 芒消 甘草 ニ両 五分 大黄 四両 一銭

八十一頁 裏 解説
標注                                            類聚方
ソウ囃(ソウソウ)=やかましくはやしたてる
膾食(カイショク)=なますなど生の食べ物
妄(モウ)=でたらめ
チョウ病=腹中のしこり・塊となる病気
瓜蔕(カテイ)=マクワウリの蔕(ヘタ)
悪露(オロ)=産後の排泄物


八十二頁 表
標注                                       類聚方
膜を生じ、或は赤脈怒起、瞼胞赤爛、或は齲歯疼痛し、小腹急結する者を治す。又打撲損傷眼を治す。
○経閉し、上逆発狂し、或は吐血衄血、及び赤白帯下、小腹急結し、腰腿攣痛する者を治す。
痢疾にて、身熱し、腹中拘急、口乾咽燥、舌色殷紅、便膿血の者を治す。
「下る者は癒ゆ」、脈経に「之を下せば則ち癒ゆ」と作すは是なり。
○血行利せず上衝心悸し、少腹拘急し、四肢グン、或は痼冷の者
を治す。
淋家にて、少腹急結し、痛み腰腿に連なり、茎中疼痛し、小便ケン滴して通ぜざる者は、利水剤の能く地する所に非ざるなり。此の方を用うれば則ち二便快利し、苦痛立どころに除く。小便リュウし、小腹急結して痛む者、打撲疼痛にて、転側能わず、二便ショクする者も亦良し。
會陰打撲は、速やかに滞を駆逐し、血熱を洗滌せずんば、則ち血凝滞し、キン熱腫脹して、必ず小便不通を為すなり。若し尿道キン閉し、陰茎腫痛甚だしきに至れば、尿道管を用いること能わず、徒に立ちて
右五味、水七升を以って、煮て二升半を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上せ、微沸せしめて火より下ろす。「食に先んじて」五合を温服す。水一合五勺を以って、煮て六勺を取り、滓を去り、芒消を内れ、消しせしめ服す。日に三服す。「当に微利す。」
「太陽病解せず、熱膀胱に結し、」其の人狂うが如く、血自ずから下る。下る者は癒ゆ。「其の外解せざる者は、」尚未だ攻むべからず。当に先ず外を解すべし。外解し已り、但少腹急結する者は、及ち之を攻むべし。

八十二頁 表 解説
標注                                            類聚方
赤脈(セキミャク)=眼の白い部分にある血管
齲歯(ウシ)=虫歯
衄血(ジクケツ)=鼻血
帯下(タイゲ)=女性生殖器から出る分泌物・こしけ
殷紅(インコウ)=黒ずんだ赤色
グン痺(グンピ)=しびれ、麻痺
痼冷(コレイ)=なかなか治らない冷え

淋家(リンカ)=小便がたらたらとしか出ない人
茎中(ケイチュウ)=尿道か?
リュウ=小便がスムースに出ない
閉ショク=出にくい
會陰(エイン)=任脈の第1経穴・肛門から外生殖器までの中間部分
陰茎(インケイ)=男性器
尿道管=幕末、外国から入った尿道管のことか?


八十二頁 裏
標注                                       類聚方
其の死を見るのみ。故に若し斯くの症に遭えば、二便の利不利を問わずして、早く此の方を用い、以ってオ滞を駆し、熱閉を解けば、則ち凝腫溺閉に至らず、是最上の乗法と為す。且つ打処に直にハ針を以って軽軽に乱刺し放血するを、佳しと為す。
○大黄牡丹皮湯は、諸癰疽、疔毒、下疳、便毒、淋疾、痔疾、臓毒、瘰癧、流注、陳久の疥癬、結毒、瘻瘡、無名の悪瘡にて、膿血盡きず、腹中凝閉す。或は塊有りて、二便利せざる者を治す。症に随って伯州散、七寶丸、十幹丸等を兼用す。結毒瘻瘡、沈滞して動かざる者は、七寶、或は十幹を、法の如く之に用いる。其の間は湯薬を停む。或は薫薬を用う。薫薬を用う者も、亦然り。用い畢りて後に、咽口腐爛甚だしき者は、瀉心湯、調胃承気湯等を以って、残毒を疏滌し、且つ含嗽剤を用いるを、佳しと為す。
○産後、悪露下らず、小便不利、血水壅遏し、少腹満痛、通身浮腫、大便難なる者を治す。又産後、悪露盡きず、数日を過ぎ、寒熱交差、脈数急、小腹或は腰ヒ痛み激しき者は、癰を発すの兆しなりて能く病の情機
を審らかにして、早く此の方を用い之を下すべし。巳に膿潰の者も、亦此の方に宜し。
○経水不調、赤白帯下、赤白痢疾、小腹凝結、小便赤渋、或は水気有る者を治す。
○按ずるに、瓜子の充実の者、一合強、今秤するを以って、之を量るに十六銭を得る。則ち一升は漢の八両なり。


按ずるに、大黄甘遂湯、抵当湯とは、皆小腹満する者を主どるなり。抵当湯症は、硬満して小便自利、此の方症は、小腹膨満し、


大黄牡丹皮湯
臍下に結毒有り。之を按ずるに即ち痛し。及び便膿血の者を治す。
大黄 四両 八分 牡丹皮 一両 六分 桃仁 五十個 五分 瓜子 半升 八分 芒消 三合 九分
右五味、水六升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、芒消を内れ、再び煎沸す。之を頓服す。水二合八勺を以って、四味を煮て六勺を取り、滓を去り、芒消を内れ、消せしめ服す。

八十二頁 裏解説
標注                                            類聚方
ハ針(ヒシン)=先の尖ったメス・三稜鍼



八十三頁 表
標注                                       類聚方
而して甚だしく硬からず、小便微し難、斯く以ってオ血と水血の結滞との異なりを見るべしや。
○此の方は、特だ産後のみならず、凡そ経水不調、男女のリュウ閉、小便満痛の者、淋毒沈滞し、微淋、小腹満痛し、忍ぶべからざず、膿血を洩らす者、皆能く之を治す。
有るは当に下るべし。如し膿無くば当に血下るべし。
「腸癰の者、」小腹腫痞、之を按ずるに即ち痛むこと淋の如く、小便自調、時時発熱、自汗出で、復悪寒す。「其の脈遅緊の者、膿未だ成らず。之を下すに、当に血有るべし。脈洪数の者は、膿巳に成る。下す下からざるなり。」
為則按ずるに、千金方に、牡丹皮三両、瓜子一升、芒消ニ両なり。瓜子一升は、今当に十両なるべし。

大黄甘遂湯
小腹満、敦状の如く、小便微難、

八十三頁 表解説
標注                                            類聚方

橘皮
中国ではオオベニミカンやコベニミカンなどの柑橘類の皮を当てます。
日本ではウンシュウミカンの皮を陳皮としますが新しいものを橘皮とします。
成熟した柑橘類の内皮を除いたものを使います。

↓中国オオベニミカンの内皮を除いた橘皮=橘紅



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