類聚方広義・第二木曜会  2011・7・10


大承気湯

七十一頁 表
標注                                       類聚方

病腹満発熱云云、按ずるに、脈経に以って厚朴三物湯症と為す。而も此の方下に曰く。腹満気脹を治すと。腹満気脹は、是三物湯の宜しき所なり。疑うに彼此方症相錯するのみ。○傷食吐下の後、胸中爽快ならず、乾嘔腹満し、或は頭痛潮熱有る者を治す。○痢疾、腹満拘急、発熱腹痛激しく而して嘔する者を治す。芍薬或いは芒消を加えるも亦良し。 三服す。水一合五勺を以って、煮て六勺を取る。「嘔する者は、半夏五合を加う。下利は、大黄を去る。寒多き者は、生姜を加えるに半斤に至る。」
病腹満発熱十日、脈浮にして数、飲食故の如し、
為則按ずるに、此の方は厚朴三物湯と、桂枝去芍薬湯を合し、而して生姜ニ両を加えるなり。是に由り之を観るに当に二方の證にて、上逆して嘔の證有るべし。


大承気湯
腹堅満、或いは下利臭穢、或いは燥屎の者を治す。
凡そ燥屎有る者は、臍下必ず磊なる。肌膚必ず枯燥するなり。

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七十一頁 表 解説
標注                                            類聚方
方症相錯=使用する処方が症状と一致しない※方症相対=逆の意味
爽快=さわやか、ここちよい
磊ラ(らいら)=癌状の塊



七十一頁 裏
標注                                            類聚方
陽明病、脈遅云云、陽明病潮熱云云の、二章、説は小承気湯標に見ゆ。

凡そ病毒壅滞の症、其の人腹中堅實、或はコウ満、大便難、胸腹の動機、或は喜怒に常無く、或は不寝驚タ、健忘セイチュウし、或は身体不仁、或は戦曳難カン、筋攣骨痛、或は言語騫ジュウ、緘黙して偶人の如くして、飲啖常に倍し、或は数十日食わずも饑えず等、変怪百出し、名状すべからず。世に或は狂と稱し或は癇と稱す。或は中気、虫風と稱し、或は心脾
大黄 四両 六分 厚朴 半斤 一銭二分 枳実 五枚 七分 五厘 芒消 三合 九分
右四実、水一斗を以って、先ず二物を煎じ、五升を取り、滓を去り、大黄を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上げ、微しく一両沸し、分かち温めて再服す。
水三合を以って、二味を煮て半に減じ、滓を去り、大黄を内れ、煮て六勺を取る。芒消を内れ消しせしめて服す。
「下を得れば、餘を服す勿れ。」

「陽明病、脈遅にして」汗出ずと雖も、悪寒せざる者、其の身必ず重し。短気腹満して喘し、潮熱有る者は、「此れ外解すと欲す。


七十一頁 裏 解説

標注                                            類聚方
啖(タン)=くらう、むさぼり食う



七十二頁 表
標注                                            類聚方
の虚する者と稱す。能く其の脈状腹症を審らかにし、以って此の方を与う。真武湯、附子湯、桂枝加苓朮附湯、桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣湯等を交用し、更に七寶丸、十幹丸の類を間服す。寛猛並びに行うに、掎角を以って攻めれば、則ち罷リュウに於いて安全に回し、横夭に於いて垂絶を救うべしや。
脚気、胸腹脹満、一身浮腫し、胸動は怒涛の如く、短気して嘔し、二便閉ジュウの者は、衝心之の基なり。此の方に非ずんば其の迅劇の勢いを折衝し、結ショクの毒を蕩條するに能わざるなり。八味丸標を参看すべし。
裏を攻むべからざるなり。」手足シュウ然として汗出ず者は、大便巳に硬きなり。大承気湯之を主どる。若し汗多く、微しく発熱悪寒する者は、「外未だ解せざるなり。」其の熱潮せずば、未だ承気湯を与うべからず。若し腹大満し通ぜざる者は、小承気湯を与うべし。「微しく胃気を和し大泄下せしむる勿れ。」
○「陽明病、」潮熱し、大便微し硬き者は、大承気湯を与うべし。硬からず者は、之を与うべからず。若し大便せざるに六七日、恐らく燥屎有らん。之を知らんと欲す法は、少し小承気湯を与え、湯腹中に入り、転失気の者、此れ燥屎有り。及ち之を攻むべし。若し

七十二頁 表 解説
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七十二頁 裏
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転失気せざる者は、此れ但初頭硬く後必ず溏す。之を攻むべからず。之を攻めれば必ず脹満し、食する能わざるなり。水を飲まんと欲する者に、水を与えば則ちエツす。其の後に発熱する者は、必ず大便復硬きにして少なきなり。小承気湯を以って之を和す。転失気せざる者は、慎みて之を攻むべからざるなり。
○「傷寒、」若しくは吐し若しくは下した後、解せず、大便なきに五六日、上っては十餘日に至る。日哺所潮熱を発し、悪寒せず、独語し、鬼状を見るが如く、若し激しき者は、発するに人を識さず、循衣摸牀、タして安からず、微喘し直視す。「脈弦なる者は生きる。ショクなる者は死す。微の

七十二頁 裏 解説
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七十三頁 表
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者にて、但発熱し、」譫語する者は、大承気湯之を主どる。「若し一服にて利せば、後服を止どむ。」
○「陽明病、」譫語し潮熱有り。反って食すること能わざる者は、「胃中必ず、」燥屎「五六枚」有るなり。若し能く食する者は、但硬きのみ。
○汗出でて譫語の者、燥屎有りて「胃中に在るを以って、此れを風と為すなり。」之の下るを須ちて、「過経及ち之を下しべし。之を下すに若し早ければ、語言必ず乱る。表虚裏實を以っての故なり。之を下せば則ち癒える。」
○「三陽併病、太陽證罷み、」但潮熱を発し、手足チュウチュウと汗出で、大便難にして譫語の者、之を下せば則ち癒える。
○「陽

七十三頁 表 解説
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七十三頁 裏
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明病、」之を下し心中懊ノウして煩す。「胃中」燥屎有る者は、攻むべし。腹微満し初頭硬く、後必ず溏す。之を攻めるべからず。燥屎有る者、
○病人、煩熱は汗出れば則ち解す。又虐状の如く、日哺所発熱の者、「陽明に属すなり。脈實の者、宜しく之を下すべし。脈浮虚の者は、宜しく発汗すべし。之を下すに、大承気湯を与え、発汗するに、桂枝湯に宜し。」
大いに下した後、六七日大便せず、煩して解せず、腹満痛の者、此れ燥屎有るなり。「然る所以の者は、本宿食有るが故なり。」
○病人、小便不利、大便乍(たちまち)難

七十三頁 裏 解説
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七十四頁 表
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乍(たちまち)易し。時に微熱有り。喘冒し臥す能わざる者は、燥屎有るなり。
○病を得て二三日、脈弱、「太陽」柴胡の證無く、煩躁し心下硬く、四五日に至り、能く食すと雖も、小承気湯を以って、少少与え、之を微和し、小安せしむ。五六日に至り、承気湯一升を与え、若し大便なきに六七日、小便少なき者、能く食さずと雖も、但初頭硬く、後必ず溏す。未だ定まりて硬く成らずとも、之を攻めれば必ず溏す。小便を利し、屎定硬するを須ちて、及ち之を攻めるべし。大承気湯に宜し。
○「傷寒、六七日、」目中了了たらず、晴和せず。「表

七十四頁 表 解説
標注                                            類聚方


七十四頁 裏
標注                                       類聚方
裏證無く」大便難、身微熱の者、「此れ實と為すなり。急いで之を下せ、」
○「陽明病、」発熱汗多き者は、急いで之を下す、
○腹満減ぜず、減ずるに言うに足らざるは、当に之を下す、
○「陽明少陽合病、必ず下利す。其の脈負ならざる者は順なり。負之者は失なり。互相剋賊を名づけ負と為すなり、脈滑にして数なる者は、宿食有るなり。当に之を下すべし、」
○「少陰病、」自利清水、色純青、心下必ず痛み、口乾燥

七十四頁 裏 解説
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七十五頁 表
標注                                       類聚方
の者、急いで之を下す、
○「少陰病、六七日、」腹脹り大便せざる者は、急いで之を下す、
○下利、三部脈皆平、之を按じて心下硬き者は、急いで之を下す。
○下利、脈遅にして滑の者は、「内實なり、」利して未だ止まん欲せざる者は、当に之を下すべし、
○「問うて曰く、人病むに宿食有り、何を以って之を別つ。師の曰く、寸口の脈浮にして大、之を按じて反って渋、尺中も亦微にして渋、故に宿食有るを知る。当に之を下すべし、」
○下利し食を欲せざる者は、「宿食有るを以っての故なり、」当に之を下すべし、
○下利差えて後、其の年月日に至り、復発する者、病盡きざるが故なり。

七十五頁 表 解説
標注                                            類聚方


七十五頁 裏
標注                                       類聚方
当に下すべし。
○「下利し脈反って滑、当に去る所有るべし。之を下せば及ち癒ゆ、」
○病腹中満痛の者、「此れ實と為すなり。」当に之を下すべし、
○「脈雙弦にして遅の者は、必ず心下硬く、脈大にして緊の者は陽中に陰有るなり。以って之を下すべし、
○「痙の病為る、胸満口噤し、臥して席に著かず、脚攣急し、必ずカイす、」
○「問うて曰く、新産婦人に三病有り、一の者は痙の病、二の者は鬱冒の病、三の者は大便難、何の謂なり。師の曰く、新産血虚は、多いに汗出で、喜(しばしば)風に当たり、

七十五頁 裏 解説
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七十六頁 表
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故に痙を病ましむ。亡血に復汗し、寒多く、故に鬱冒せしむ。津液を亡し胃燥すが、故に大便難し。産婦鬱冒、其の脈微弱、嘔して食す能わず、大便反って堅し。但頭汗出ず、然る所以の者は、血虚し厥す。厥すれば必ず冒す。冒家にて解さんと欲せば、必ず多いに汗出ず。血虚下厥、狐陽上出を以っての、故に頭汗出る。産婦喜(しばしば)汗出ずる所以は、亡陰血虚にして、陽気独り盛んが、故に当に汗出で陰陽及ち復すべし。大便堅く、嘔して食す能わず。小柴胡湯之を主どる。病解し、能く食し、七八日更に発熱する者は、「此れを胃實と為す、」

七十六頁 表 解説
標注                                            類聚方


七十六頁 裏
標注                                       類聚方
大承気湯之を主どる。
○「産後七八日、太陽證無く、」小腹堅満、此れ悪露きず、大便せず煩躁し発熱す。「切脈微實、」更に倍して発熱し、日哺時に煩躁する者は、食せず。食すれば則ち譫語し、夜に至りて即ち癒ゆ。大承気湯に宜しく之を主どる。「熱裏に在り、結して膀胱に在るなり。」


大黄黄連瀉心湯

七十六頁 裏 解説
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