類聚方広義・第二木曜会  2011・6・9


厚朴三物湯 厚朴七物湯

七十頁 表
標注                                       類聚方

虚脱と為し、概ね治エツの剤を用うは、粗と謂うべけんや。王宇泰は、瀉心湯、小承気湯調胃承気湯、桃仁承気湯などを用い、キョウ廷賢の黄連解毒湯、白虎湯を用うは、具眼の士と謂うべけんや。

諸病、大承気湯を服す能わざる者は、宜しく此の湯を以って消塊丸を送下すべし。毎服一銭。○痢疾にて腹満甚だしく、而して裏急後重する者を治す。○子柄の曰く、「長沙氏小承気湯有るを、吾未だ之を信ずるに能わず。況や三物黄ゴン湯に於いておや」、誤りなり。按ずるに、此の方、大承気湯にして、而して芒消無く其の煮法を異にする者なり。故に
定まりて硬きを成さざるに、之を攻めば必ず溏す。小便利し屎の定硬を須ちて、及ち之を攻むべし。大承気湯に宜し。○下利譫語する者は、燥屎有らんや。○大便不通し、エツして数(しばしば)譫語の者は、

厚朴三物湯
小承気湯證にして、腹満劇なる者を治す。
厚朴 八両 
一銭四分 枳実 五枚 八分二厘 大黄 四両 七分
右三味、水一斗二升を以って、先ず二味を煮て、五升を取り、大黄を内れ、煮て三升を取り、一升を温服す。
水二合四勺を以って、二味を煮て

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七十頁 表 解説
標注                                            類聚方
消塊丸=大黄・硝石(芒消)の粉末を2:3の割合で混合した糊丸
煮法=大承気湯の煎じ方は芒消を最後に入れて溶かす



七十頁 裏
標注                                            類聚方
主治する所も、亦同じからず。蓋しチン萬状にして、底止する有るに無し。則ち其れ之の応ずる所以の者も、亦何ぞ窮極に有らん。長沙氏は、能く方法のを建て、其の変化を盡くし、以って千状萬態の病を制する。固より凡慮之能く思議所に非ざるなり。後生は唯能く其の方法を守り、以って吾が術を修む。是を之信じて(而して)古を好むと謂えり。子柄の如くは古を信ぜず、(而して)己を信ずるなり。特だ長沙氏方法の旨を知らざるのみならず、又東洞先生の斯の書を撰する意を知らざるなり。而も妄論なること此の如し。緩頬にて忌憚無しと謂うべけんや。 一合を取る。大黄を内れ煮て六勺を取る。「を以って度と為す。」
痛み閉なる者
為則按ずるに、小承気湯證にして、腹満甚だし。

厚朴七物湯
腹満発熱し、上衝し嘔す者を治す。
厚朴 半斤 
八分 甘草 大黄 各三両 三分 大棗 十枚 二分五厘 枳実 五枚 五分 桂枝 二両 二分 生姜 五両 五分
右七味、水一斗を以って、煮て四升を取り、八合を温服し、日に


七十頁 裏 解説

標注                                            類聚方
チン=熱病、災患
極(きょく)=物事の最高、最上、最終(至極)、至善の道
凡慮=ありふれた考え
後生(こうせい)=長沙(張仲景)より後の医療人
斯の書=類聚方
緩頬(かんきょう)=穏やかな顔をして
忌憚(きたん)=遠慮する
緩頬にて忌憚無し=面の皮が厚い、あつかましい
利=(痢)=便通
※痛み閉なる者=便秘して痛む



七十一頁 表
標注                                            類聚方
病腹満発熱云云、按ずるに、脈経に以って厚朴三物湯症と為す。而も此の方下に曰く。腹満気脹を治すと。腹満気脹は、是三物湯の宜しき所なり。疑うに彼此方症相錯するのみ。○傷食吐下の後、胸中爽快ならず、乾嘔腹満し、或は頭痛潮熱有る者を治す。○痢疾、腹満拘急、発熱腹痛激しく而して嘔する者を治す。芍薬或いは芒消を加えるも亦良し。 三服す。水一合五勺を以って、煮て六勺を取る。「嘔する者は、半夏五合を加う。下利は、大黄を去る。寒多き者は、生姜を加えるに半斤に至る。」
病腹満発熱十日、脈浮にして数、飲食故の如し、
為則按ずるに、此の方は厚朴三物湯と、桂枝去芍薬湯を合し、而して生姜ニ両を加えるなり。是に由り之を観るに当に二方の證にて、上逆して嘔の證有るべし。


大承気湯
腹堅満、或いは下利臭穢、或いは燥屎の者を治す。
凡そ燥屎有る者は、臍下必ず磊なる。肌膚必ず枯燥するなり。

七十一頁 表 解説
標注                                            類聚方
方症相錯=使用する処方が症状と一致しない※方症相対=逆の意味
爽快=さわやか、ここちよい

磊ラ(らいら)=癌状の塊



↑七十頁表・標柱の雉間子柄著・類聚方集覧、厚朴三物湯の標柱引用(赤線部分)




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