類聚方広義・第二木曜会 2011・3・10
白虎湯・白虎加人参湯・白虎加桂枝湯
六十四頁 裏
標注 類聚方
必ず攣痛す。或いは呑酸ソウ雑等の症を兼ぬる者は、俗に疝積溜飲痛と称す。宜しく此の方を長服すべし。当に五日十日を隔て大陥胸湯、十棗湯等を用い、之を攻む。 梅毒沈滞し、頭痛耳鳴りし、眼目に雲翳す。或いは赤脈疼痛、胸脇苦満、腹拘攣する者を治す。時に紫円、梅肉散などを以って之を攻む。大便燥結する者は、芒硝を加うを佳と為す。 外臺白虎湯の煎法に曰く、右四味切り、水一斗二升を以って |
陥胸湯之を主る。○「傷寒、」発熱汗出で解せず、心下痞硬し、嘔吐して下利の者、○「傷寒の後脈沈、沈の者は内実なり。下し之を解す、」○之を按じ心下痛む者は、「此れ実と為すなり。」当に之を下す。 為則按ずるに、小柴胡湯證にして、胸腹拘攣し、下すべき者を主る。又按ずるに、本方は当に大黄有るべし。玉函経に、再煎の下、三升を取りの三字有り。又曰く、一方已下は、注文なり。 |
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六十四頁 裏 解説
呑酸ソウ雑(どんさんそうざつ)=むねやけ、胃酸が逆流する常態。 雲翳(うんえい)=雲や霞がかかったように見える。 赤脈(せきみゃく)=眼の白い部分に血管が現れる。 |
標注 類聚方
煮て米熟を取り、米を去り、薬を内れ、煮て六升を取って、分かち六服す。 傷寒、脈浮滑云云、林億程応旄は、此の章を以って、寒熱の字は差置と為す。極めて是なり。下條の傷寒脈滑而厥者は、裏に熱有るなり。以って見るべしや。○三陽合病云云、口不仁は、口舌乾燥して、五味を知らずを謂う。附子湯の、口中和し、背微悪寒する者と、正に相反す。謹んで按ずるに、東洞先生の、此の章を以って、白虎湯症に非ずと為すは、恐らくコウを失するなり。薬徴は已に譫語遺尿の文を引く。以って見るべし。発汗以下十七字は、後人の註文なり。又按ずるに、玉函に、若し |
白虎湯 大渇引飲し、煩躁する者を治す。 知母 六両 六分 石膏 一斤 一銭六分 甘草 二両 二分 粳米 六合 一銭二分 右四味、水一斗を以って、米を煮て熟せしめ、湯と成し滓を去る。一升を温服す。水二合を以って米を煮る。一合二勺を取り、米を去り諸薬を内れ、煮て六勺を取る。日に三服す。 「傷寒、脈浮滑。此れ表に熱有りて、裏に寒有り。」 ○「三陽合病、」腹満して身重く、以って転側し難く、口不仁にして面垢つき、譫語して遺尿す。発汗すれば則ち譫語し、之を下せば則ち額上に汗を生ず。手 |
六十五頁 表 解説
標注 類聚方
差置(さち)=反対になっている事
※類聚方と薬徴は東洞の著すものですが、本文按語には白虎湯に非ずといい、薬徴には白虎湯を認める形態となっております。そのことから榕堂先生は東洞先生は考えを失していると批評しています。
知母=ユリ科・ハナスゲの根茎部
粳米=うるち米
の字無し。○傷寒、脈滑而して厥の者、及び大熱無し、口躁渇、心煩、背微悪寒等の症、世医の多くは白虎を用得せず、遂には病者を不起に至らすは、勝嘆すべけんや。嗚呼仲景の、諄諄たる躋壽の法を垂るも、後人は従っても奉行するに能わず、反って私見を馳せ、妄りに方剤を捏造して、其の弊は今に至る。洵に慨歎すべきや。荘周の云うに、道は天下の為に裂くる、憤世の言と雖も、亦旨有りや。○麻疹にて大熱譫語し、煩渇引飲し、唇舌燥烈し、脈洪大の者を治す。○歯牙疼痛し口舌乾いて渇する者を治す。○眼目熱痛して灼の如く、赤脈怒張す。 |
足逆冷す。若し自汗出る者は、○「傷寒、脈滑にして厥する者は、裏に熱有るなり、」 為則按ずるに、以上三條は、白虎湯證に非ず。及ち白虎加人参湯の條下に於いて、之を弁ず。又曰くに煎法は白虎加桂枝湯に従うべし。 白虎加人参湯 白虎湯證にして、心下痞硬する者を治す。 白虎湯方内に於いて、人参三両を加う。 |
勝嘆(しょうたん)=嘆くにたう=非常に嘆かわしいこと 諄諄(じゅんじゅん)=ていねいに教えるさま 躋壽(せいじゅ)=長寿に導く=生命を救うこと 奉行=主君の言うとおりに事を行う 馳せ=撒き散らし 方剤=ここでは後世方の処方を指している 捏造=でっちあげ 慨歎=嘆かわしい 荘周=荘子 憤世=乱れた世=いきどおりを感じる今の世の中 旨=うまいことを言う 赤脈怒張=白眼に血管が赤く見えること |
或いは頭脳眉稜骨痛み、煩渇する者を治す。倶に黄連を加うが良し。兼用するに応鐘散、時に紫円を以って之を攻む。○狂症にて眼中火の如く、大声妄語し、放歌高笑、屋に登り垣を踰え、狂走已まずして、大喝引飲し、昼夜眠らざる者を治す。亦黄連を加う。三日五日を隔て、紫円を用いるに、一銭より一銭五分に至り、俊瀉数行を取る。又日に灌水法を用うれば、必ず効有り。若し下薬を用い難き者は、唯灌水法を用うべし。 | 知母 五分 石膏 一銭三分 甘草 一分六厘 粳米 一銭 人参 二分五厘 右五味、煮るに白虎湯の如くす。 桂枝湯を服し、大いに汗出でた後、大煩渇解せず、脈洪大のもの、○「傷寒の病、若しくは吐し若しくは下した後、七八日解せず、熱結して裏に在り、表裏倶に」熱し、時々悪風し、大いに渇し舌上乾燥して煩し、水数升を飲まんと欲す者は、○「傷寒、」大熱無く、口煩渇し、心煩して背微しく悪寒する者は、○「傷寒、」脈浮、発熱し汗無く、「其の表解せざる」者は、白虎湯を与うべからず。渇して |
六十六頁 表 解説
標注 類聚方
頭脳=頭 眉稜骨=眉のある盛り上がった箇所 大声妄語=大声で訳のわからないことを叫ぶ 放歌高笑=歌を歌い意味の無い笑いをする 灌水法=滝に打たれる法 |
陽明病、脈浮而して緊云云、説は梔子鼓湯標に見ゆ。 霍乱、吐瀉の後、大熱煩躁し、大喝引飲、心下痞硬、脈洪大の者を治す。 消渇にして、脈洪数、昼夜引飲するも渇せず、心下痞硬し、昼夜肢體煩熱するに更に甚だしく、肌肉日に消鑠する者を治す。 瘧病にて大熱ヤクが如く、譫語煩躁し、汗出で淋漓、心下痞硬、渇飲するに度の無き者を治す。 |
水を飲まんと欲し、「表證無き」者は、白虎加人参湯之を主る。○「陽明病、」脈浮にして緊、咽燥き口苦く、腹満して喘し、発熱して汗出で、悪寒せず、反って悪熱し身重し「若し汗を発すれば則ちし躁し、心カイカイとして反って譫語す。」若し焼鍼を加えば、必ずジュツタ煩躁し眠を得られず。若し之を下せば、則ち胃中空虚にして、客気膈を動じ、心中懊ノウす。舌上に胎の者は、梔子鼓湯之を主る。若し渇し水を飲まんと欲し、口乾き舌燥す者は、白虎加人参湯之を主る。若し脈浮にして発熱し、渇して水を飲まんと欲し、小便不利する者は、猪苓湯之を主る。為則 |
肢體=肢体=手足と胴体 消鑠=やせ衰える 瘧病=おこりやまい=間歇的に発熱を繰り返す病=マラリア状疾患 淋漓=流れ出て止まない |
説文に曰く、エツは、傷暑なり。 霍乱、吐瀉の後、身体灼熱し、頭疼し身痛み、大喝煩躁、脈浮大の者、此の方に宜し。 |
按ずるに、已上四章は、千金方に、白虎湯之を主るに作る。外臺も亦同じ。而して方後に傷寒論方に曰くと。今之に従う。 「太陽中熱の者は、エツ是れなり。」汗出で悪寒し、身熱して渇す、 為則按ずるに、此の方は白虎湯證にして、心下痞硬する者之を主る。 白虎加桂枝湯 白虎湯證にして、上衝する者を治す。 白虎湯方内に於いて、桂枝三両を加う。 知母 五分 石膏 一銭三分 甘草 一分六厘 粳米 一銭 桂枝 二分五厘 |
傷暑=暑気あたり 灼熱=焼けるように熱い |
右五味、水一斗五升を以って、煮て八升を取り、滓を去り、温服す。煮るに白虎湯の如くす。 「温瘧の者、其の脈は平の如く、」身に寒無く、但熱し、骨節疼煩して、時に嘔す、 為則按ずるに、当に煩渇衝逆の證有るべし。 小承気湯 腹満して大便硬き者を治す。 大黄 四両 一銭二分 厚朴 二両 九分 枳実 三枚 九分 右三味、水四升を以って煮て一升二合を取り、滓を去り分 |