類聚方広義・第二木曜会  2011・2・10


柴胡加龍骨牡蠣湯〜大柴胡湯

六十二頁 裏
標注                                       類聚方

方に宜し。

瘧寒多云云、所謂労瘧の此の症多し。此の方に宜し。






按ずるに、此の方甘草黄ゴンの脱するに似る。宋板に黄ゴン一両半有り。半夏二合は、疑うに二合半の誤りか。
「傷寒、五六日、」已に汗を発し、而して復之を下す。胸脇満し微しく結す。小便不利し、渇して嘔せず、但頭汗多く、往来寒熱、心煩する者は、此れ未だ解せずと為すなり。
○「瘧、」寒多く微しく熱有り、或いは但寒して熱せず者、
為則按ずるに、頭汗出ず者、是れ衝逆なり。又曰く、当に胸腹に動有るの證有るべし。



柴胡加龍骨牡蠣湯
小柴胡湯證にして、而して胸腹に動有り、煩躁驚狂し、大便難、小便不利の者を治す。

↓                                               ↓

六十二頁 裏 解説
標注                                            類聚方
驚狂(きょうきょう)=動揺し常態を失う・驚いて狂う



六十三頁 表
標注                                            類聚方
狂症にて、胸腹の動甚だしく、驚き懼れ人を避け、兀座し独語、昼夜寐ず、或いは猜疑多く、或いは自ずから死せんと欲し、床に安からず者を治す。
癇症にて、時時寒熱交作し、鬱鬱悲愁し、多夢少寐、或いは人に接するを悪くみ、或いは暗室に屏居し、殆んど労サイの如き者を治す。狂癇の二症、亦当に胸脇苦満、上逆、胸腹の動悸等を以って、目的と為すべし。

之を下すの下、外臺に、後の字有り。是なり。

癲癇にて、居常に胸満上逆し、胸腹に動有るに、毎月二三発するに及ぶ者は、常に此の方を服し、懈らざれば、則ち
柴胡 四両 六分 半夏 二合 四分五厘 大棗 六枚 生姜 人参 龍骨 鉛丹 桂枝 茯苓 牡蠣 各一両半 各二分三厘 大黄 二両 三分
右十一味、水八升を以って、煮て四升を取り、大黄を内れるに、切りて碁子の如くす。更に煮て一二沸、滓を去り、一升を温服す。水二合四勺を以って、煮て一合二勺を取り、大黄を内れ、更に煮て六勺を取る。
「傷寒、八九日、之を下す。」胸満煩驚し、小便不利、譫語して、一身盡 (尽) く重し、転側可ならざる者、


六十三頁 表 解説

標注                                            類聚方
兀(ごつ)=不安で動揺する
寐(び)=ね・る
屏(びょう)=おお・う、しりぞ・く
屏居(びょうきょ)=人を避けて閉じこもる
上逆(じょうぎゃく)=
懈(かい)=おこた・る




六十三頁 裏
標注                                            類聚方
発の患い無し。


金匱、玉函、肘后、倶に大黄二両有り。是なり。
小柴胡湯症にして、曰く喜嘔、曰く乾嘔、曰く嘔、其の生姜を用うなりに三両。此の方症に、曰く嘔止まず、曰く嘔吐、其の生姜用うなりに五両、嘔の劇易に随い、生姜も亦多少有るなり。玉函に、生姜を三両に作るは、誤る。
為則按ずるに、当に胸腹に動の證有るべし。玉函経に、切りて碁子の如くの四字無し。一二沸し、二升を取るに作る。今之に従う。

大柴胡湯
小柴胡湯證にして、腹満拘攣し、嘔激しき者を治す。
柴胡 半斤 
八分 黄ゴン 芍薬 各三両 大棗 十二枚 各三分 半夏 半升 六分 生姜 五両 五分 枳実 四枚 四分
右七味、水一斗二升、煮て六升を取る。再


六十三頁 裏 解説
標注                                            類聚方



六十四頁 表
標注                                       類聚方

麻疹、胸脇苦満、心下梗塞、腹拘攣し、ダン中の動甚だし者を治す。鍼粉を加うに、奇効有り。

心下急は、拘急なり。鬱鬱は、黙黙に激しきを加うなり。
平日心思鬱塞し、胸満して少食、大便二三日、或いは四五日に一行、心下時時痛を作し、宿水を吐す者、其の人多いに胸肋妨張し、肩項強急、臍傍の大筋堅靭にて、上って胸肋に入り、下っては小腹に連なり、或いは痛み、或いは痛まず。之を按ずるに
煎し一升を温服す。煮ること小柴胡湯の如くす。日に三服。一方に大黄二両を用う。二分 若し大黄を加えざれば、恐らく大柴胡湯と為さざるなり。「太陽病、過経十余日、反」二三之を下し、後四五日、柴胡證仍ほ在る者は、先ず小柴胡湯を与う。嘔止まず、心下急し、鬱鬱微煩の者は、「未だ解さずと為すなり。」大柴胡湯を与え、之を下せば則ち癒ゆ。○「傷寒、十余日、熱結して裏に在り。」復往来寒熱の者は、大柴胡湯を与う。但結胸し大熱無き者、「此れ水結の胸脇に在ると為すなり。」但頭微しく汗出ず者、大


六十四頁 表 解説
標注                                            類聚方

麻疹(ましん)=はしか、急性伝染性疾患で発熱を伴ない発疹が出る。
ダン中=任脈上にあり両乳頭の中間部位。
鍼粉=自然鉄、砂鉄。


六十四頁 裏
標注                                       類聚方

必ず攣痛す。或いは呑酸ソウ雑等の症を兼ぬる者は、俗に疝積溜飲痛と称す。宜しく此の方を長服すべし。当に五日十日を隔て大陥胸湯、十棗湯等を用い、之を攻む。
梅毒沈滞し、頭痛耳鳴りし、眼目に雲翳す。或いは赤脈疼痛、胸脇苦満、腹拘攣する者を治す。時に紫円、梅肉散などを以って之を攻む。大便燥結する者は、芒硝を加うを佳と為す。


外臺白虎湯の煎法に曰く、右四味切り、水一斗二升を以って
陥胸湯之を主る。○「傷寒、」発熱汗出で解せず、心下痞硬し、嘔吐して下利の者、○「傷寒の後脈沈、沈の者は内実なり。下し之を解す、」○之を按じ心下痛む者は、「此れ実と為すなり。」当に之を下す。
為則按ずるに、小柴胡湯證にして、胸腹拘攣し、下すべき者を主る。又按ずるに、本方は当に大黄有るべし。玉函経に、再煎の下、三升を取りの三字有り。又曰く、一方已下は、注文なり。

六十四頁 裏 解説
標注     
                                       類聚方
呑酸ソウ雑(どんさんそうざつ)=むねやけ、胃酸が逆流する常態。
雲翳(うんえい)=雲や霞がかかったように見える。
赤脈(せきみゃく)=眼の白い部分に血管が現れる。



枳実

ミカン科・ダイダイやナツミカン、カラタチの未熟果実。
作用:健胃作用・通便作用・去痰作用
漢方での効能:気を廻らし痛みを緩める。化膿性疾患で硬結し痛みのある場合に用いる。胆のう結石。子宮の収縮痛に用う。


枳実(ダイダイなどの未熟果実)


枳実(カラタチ)

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