類聚方広義・第二木曜会 2011・12・8
大黄甘草湯より調胃承気湯
痛し、延いては心胸腰脚に及び、陰嚢キン腫、腹中に時時水聲有りて、悪寒甚だしき者を治す。若し拘攣激しき者は、芍薬甘草湯を合わす。 寒は、水毒を謂うなり。 肘后、千金、外臺、皆甘草ニ両に作る。今之に従う。 ○胃反、カク噎、心胸痛、大便難の者を治す。 ○鷓鴣菜を倍加し、鷓鴣菜湯と名づくる。カイ虫にて、心腹痛み、悪心唾沫、小児の蛔症、及び胎毒、腹痛、夜啼き、頭瘡、疳眼、其の症候の診、施用の法は、橘黄医談に詳し。 ○小児好んで生米茶炭壁泥を食し、 |
服後人の四五里を行くが如くに、一服を進む。」 脇下偏痛し、発熱し、其の脈緊弦、「此れ寒なり。温薬を以って之を下す、」 大黄甘草湯 大便秘閉し急迫する者を治す。 大黄 四両 一銭六分 甘草 一両 八分 右二味、水三升を以って、煮て一升を取り、分温再服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。 食し已りて即吐く者、 |
胃反(イホン)=食べたものを吐く カク噎(カクイツ)=胸腹が張って痛み飲食物を飲み込めない病気 鷓鴣菜(シャコサイ)=中国では海藻のアヤギヌのこと、日本ではマクリ(海人草)を代用 橘黄医談(キッコウイダン)=尾台榕堂の著した上下二巻本 |
人の四五里を行くが如く=半里(2キロ)くらいの道のりを歩く時間で約30分くらい(大塚敬節) |
或は偏りて五味を嗜む者は、蛔虫に属す。此の方に宜し。 ○小児二三歳以上、五六歳以内、顔面痿黄、飲食好悪多く、時時卒倒し、人事を省みず、直視痙攣、驚風状の如く、而して白沫を吐す者は癲癇の基なり。早く鷓鴣菜湯を用いて、カイ虫を殺伐し、腸垢を蕩滌すれば、以って後の患いを免れるべし。 東洞先生曰く、芒消の分量は疑うべし。今桃核承気湯に従いニ両と為す。 傷寒脈浮云云は、桂枝加附子湯症なり。 |
為則按ずるに、当に急迫の證有るべし。 調胃承気湯 大黄甘草湯の證にして、而して実する者を治す。 大黄 四両 一銭六分 甘草 ニ両 芒消 半キン 各八分 右三味、フソし、水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上げ、微しく煮て沸せしめ、少少温服す。 水一合八勺を以って、煮て六勺を取り、滓を去り、芒消を内れ、消しせしめ服す。 「傷寒、」脈浮にして自汗出で、小便数、心煩し、微しく悪寒、脚攣急し、反って桂枝湯を与え、「其の表を」攻めんと欲すは、此れ誤りなり。之を得て |
五味=酸・苦・甘・辛・鹹 痿黄(イオウ)=生気が無く黄ばむ、黄疸 驚風(キョウフウ)=こどものひきつける病 癲癇(テンカン)=人事不省となり沫を吐き意識が無くなるが5分くらいで回復する 鷓鴣菜湯(シャコサイトウ)=鷓鴣菜・大黄・甘草 |
痘瘡、麻疹、癰疽、疔毒、内攻衝心し、大熱譫語、煩躁悶乱、舌上燥烈、大便せず、或は下利、或は大便緑色の者、此の方に宜し。牙歯疼痛、歯齦腫痛、齲歯枯折、口臭など、其の人の多くは平日に大便秘閉して衝逆するは、此の方に宜し。 発汗後に悪寒する者は、虚するが故なり。此の症は芍薬甘草附子湯に宜し。 胃反、カク噎、胸腹痛、或は妨満して、腹中に塊有り。咽喉乾燥し、鬱熱便秘する者、消渇、五心 |
便ち厥し、咽中乾き、煩躁吐逆する者は、甘草乾姜湯を作りて、之に与う。以って「其の陽を復す」。若し厥愈え足温なる者は、更に芍薬甘草湯を作りて、之に与う。其の脚即ち伸ぶ。若し「胃気和せず」、譫語する者は、少し調胃承気湯を与う。若し重ねて発汗し、復焼鍼を加う者は、四逆湯之を主どる。 ○「発汗後、悪心する者は、虚する故なり。悪寒せず、但熱する者は、実なり。当に胃気を和すべし。」 ○「太陽病未だ解せず、陰陽の脈倶に停、必ず先ず振慄し、汗出で解す。但陽脈微の者は、先ず汗出で解す。但陰脈微の者は、之を下せば |
痘瘡(トウソウ)=天然痘、ほうそう 麻疹(マシン)=はしか、皮膚に発疹が出たり目が充血する伝染病 癰疽(ヨウソ)=カルブンケルを含む化膿性炎症疾患 疔毒(チョウドク)=フルンケル、化膿性球菌による炎症疾患で痛みが強い 齲歯(ウシ)=虫歯 歯齦(シギン)=歯肉、歯茎 妨満(ボウマン)=わざわいのある膨れ 消渇(ショウカツ)=糖尿病、尿崩症など口渇があり多飲を主徴とする疾患 五心(ゴシン)=両手両足の内側と心臓 |
振慄(シンリツ)=おそれふるえる |
煩熱し、肌肉燥瘠、腹中凝結して、二便不利の者、皆此の方に宜し。或は兼用方と為すも、亦良し。 ○カク噎の症、其の人少壮より、腹裏にチョウ結を生じ、而して歳と共に長じて、常に胃府の消化、血精灌培を妨碍し、積りて老境に至りて、斯くの症始めて萌(きざ)す。蓋し年歯漸高せば、則ちチョウ結愈(いよいよ)痼す。 血液因って以って涸れ、精神随って衰えるは、是れ必然の勢いなり。加うに勤労、酒色の、過度を以って、後に斯くの症に始めて成るなり。然れば初起に能く薬餌に勤め、世紛を謝し、情欲を絶ちて、以って治療に就けば、猶或は一生を庶幾すべけんや。若し姑息の治を為し放恣縦情せば、病勢は皇 |
解す。若し之を下さんと欲するに、」 ○「傷寒、十三日解せず、過経譫語する者は、熱の有るを以ってなり。当に湯を以って之を下すべし。若し小便利する者は、大便当に硬かるべし。而して反って下利し、脈調和する者、知るに医の丸薬を以って之を下す。其の治に非ざるなり。若し自下利の者は、脈当に微厥なるべし。今反って和す者は、此れ内実と為すなりや、」 ○「太陽病、過経十餘日、」心下温温として吐かんと欲し、而して胸中痛む。大便反って溏し、腹微満す。鬱鬱微煩す。「此の時に先んじ、自ずから吐下を極む者は、」調胃承気湯を与う。若し爾らざる者に、与うべからず。「但嘔線と欲し、 |
灌培(カンバイ)=そそぎつちかう 痼(コ)=病気がなかなか治らないさま 涸(カ)=つきる 放恣(ほうし)=気ままにする 年歯漸高(ネンシゼンコウ)=成長して年齢を重ねる |
張し、精気衰脱し、身体枯槁して、飲食の一切咽を下り難きに至り、決して救うべからざるなり。 蒸蒸発熱は、猶釜甑にて物を蒸すがごとく、熱気蒸騰し、内より外に達するを謂うなり。 飲食傷、吐下の後、心胸猶爽快ならず、或は噫気呑酸の者を治す。又痰飲家にて、心下、或は臍邊に塊あり。平素飲食する毎に |
胸中痛み、微溏する者は、此れ柴胡の證に非ず。嘔を以って、故に極吐下を知るなり、」 ○「陽明病、」吐せず、下さず、心煩の者は、 ○「太陽病、三日」発汗すも解せず、蒸蒸発熱する者は、「胃に属すなり、」 ○「傷寒、」吐した後腹脹満の者、 ○大便通ぜず、「胃気和せざる者は、」 為則按ずるに、但急迫して大便通ぜざる者、之を主どる。 |
釜甑(フソウ)=かま、せいろ、こしき |