類聚方広義・第二木曜会  2011・10・13


大黄黄連瀉心湯より

七十六頁 裏
標注                                       類聚方
酒色を慎み、専ら静養調攝し、此の方を以って弦靭を柔和して、チョウ結を削平し、灸をするに五椎より十四五椎に至り、而して怠らずせば、則ち大患に至らずして治すや。硝石大円、大黄硝石湯、亦選用すべし。調胃承気湯標を、参考すべし。
産後七八日云云、此の症にて脈實裏實、発熱煩躁、便閉譫語し、且つ小腹堅痛す。亦急結の比に非ずとも、大承気湯を用う所以なり。子柄の桃核承気湯症と為すは、未だ深考せざるのみ。
○脈経に、夜に至り即ち癒ゆの四字無し。是なり。


麻沸湯は、湯沸時の、泛
大承気湯之を主どる。
○「産後七八日、太陽證無く、」小腹堅満、此れ悪露きず、大便せず煩躁し発熱す。「切脈微實、」更に倍して発熱し、日哺時に煩躁する者は、食せず。食すれば則ち譫語し、夜に至りて即ち癒ゆ。大承気湯に宜しく之を主どる。「熱裏に在り、結して膀胱に在るなり。」




大黄黄連瀉心湯
心煩、心下痞、之を按じて濡の者を治す。
大黄 ニ両 
一銭六分 黄連 一両 八分

七十六頁 裏 解説
標注                                            類聚方
濡(ジュ)=うるおう、ぬれる、湿り気を帯びる


七十七頁 表
標注                                       類聚方
沫にて麻子の如きを謂うなり。
○痞は、義を周易の否の卦を取るなり。劉希釋名に曰く、痞は、否なり。気の否結なりと。病源候論に曰く、否の者は、心下満するなりと。増韻の曰く、否は、気隔して通ぜざるなりと。千金翼に、濡の上に自の字有り。是とす。
○傷寒、大いに下した後云云、説は桂枝湯標に見ゆ。
○此の方に甘草を加え、甘連大黄湯と名づく。小児生下、之を与え以って胸腹の汚穢を吐下すべし。若し血色黯濁の者は、更に紅花を加う。若し酷毒壅閉し、吐下を得られざる者に至れば、紫円を与うべし。
驚風、直視上竄、口噤チク搦、虚里跳動の者、及び疳疾、胸満心
右二味、麻沸湯二升を以って、之を漬して須臾、絞って滓を去り、分温再服す。沸湯六勺を以って、之を漬して須臾、絞って滓を去り服す。
心下痞、之を按じて濡、其の脈「関上」浮の者、
○「傷寒大いに下した後、復発汗、」心下痞し、、悪寒の者は、「表」未だ解せざるなり。痞を攻むべからず。「当に先ず表を攻むべし。表解して、及ち痞を攻むべし。表を解するに、」桂枝湯に宜し。痞を攻むは、大黄黄連瀉心湯に宜し。
為則按ずるに、当に心悸の證有るべし。

瀉心湯
心下不定、心下痞、之を按ずるに濡の者、

七十七頁 表 解説
標注                                            類聚方
劉希釋名=後漢の劉希(リュウキ)の著書である釋名(シャクミョウ)という本は類似した音の字から意味を解釈した
黯濁(アンダク)=暗くなる
驚風=ひきつけ
直視上竄=一点を見て白眼をむく
口噤チク搦(コウキンチクダク)=歯を食いしばり震える
虚里(キョリ)=心臓の周り
疳疾=小児の神経過敏症状
須臾(シュユ)=短時間(漢字海)
関上(カンジョウ)=三部脈診部位の中間点

七十七頁 裏
標注                                       類聚方
下痞して不食、或は吐食、或は好んで生米炭土等を食す。痞癖にて痛みを作す者、又鵞口白欄重舌木舌弄舌を治す。併せ梔子蘗皮を加う。
疳眼にて雲翳を生じ、或は赤脈縦横、或は白眼青色に見え、羞明して日を怕れる者、
癇家にて鬱鬱と顧忌多く、毎夜睡らず、ダン跳動、心下痞、急迫の者、以上皆甘連大黄湯に宜し。
本以下之云云、瀉心湯は、大黄黄連瀉心湯なり。本論を参考すべしや。斯に列すは、誤れり。末條も亦爾り。
○中風卒倒し、人事を省みず、身熱し牙関緊
大黄 ニ両 一銭二分 黄ゴン 黄連 各一両 六分
右三味、水三升を以って、煮て一升を取り、之を頓服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。
本之を下すを以って、心下痞し、瀉心湯を与う。痞解さず。其の人渇して口躁煩、小便不利の者は、五苓散之を主どる。
○心気不足、吐血衄血、瀉心湯之を主どる。
○「婦人、」涎沫を吐す、医反って之を下すに、心下即ち痞す。当に先ず其の吐す涎沫を治す。小青龍湯之を主どる。涎沫止めば及ち痞を治す。瀉


七十七頁 裏 解説
標注                                            類聚方
痞癖(ヒヘキ)=腹に塊を認め、痞えた自覚症状
鵞口(ガコウ)=口などの粘膜の炎症症状、アフター性口内炎、カンジダ症
白欄(ハクラン)=小児の口中が白い糊状になる病気
重舌(ジュウゼツ)=唾石
木舌(モクゼツ)=舌が硬く腫れて動かない
弄舌(ロウゼツ)=舌を頻繁に動かす
蘗皮(ハクヒ)=黄柏
疳眼にて雲翳(ウンエイ)を生じ=角膜乾燥症を含む霞み眼、結核性・アレルギー性の眼疾
赤脈縦横=白眼の部分に血管を確認する
羞明=まぶしい
癇家(カンカ)=興奮しやすく神経過敏症
顧忌(コキ)=はばかる、遠慮がち
ダン中=任脈上のツボ、乳中を結ぶ中間点
牙関緊急=下顎の間接が引きつる、歯を食いしばること
衄血(ジクケツ)=鼻出血
涎沫(エンバツ)=口中に沫がたまる


七十八頁 表
標注                                       類聚方
、脈洪大、或は鼾睡大息し、頻頻に欠伸する者、及び省後偏枯タンタン遂げず、緘黙して語らず、或は口眼カ斜、言語蹇渋流涎泣笑、或は神思恍惚し、機転するに木偶人の如き者、此の方に宜し。
○能く宿醒を解すは、甚だ妙なり。
○酒客、鬱熱下血の者、腸痔にて、腫痛下血の者、痘瘡、熱気熾盛、七孔出血する者、産前後に、血暈鬱冒、或は狂の如き者、眼目キン痛、赤脈怒張、面熱し酔うが如き者、齲歯疼痛、歯縫出血、口舌腐乱、唇風、走馬疳、痰胞、言語能わざる者、
心湯之を主どる。
為則按ずるに、煎方は、当に大黄黄連瀉心湯、附子瀉心湯の法に従うべし。又按ずるに、不足は千金に不定に作る。今之に従う。

附子瀉心湯
瀉心湯證にして悪寒する者を治す。
大黄 ニ両 
一銭 黄連 黄ゴン 各一両 附子 一枚 各五分
右四味、三味を切り、麻沸湯二升を以って、之に漬して須臾、

七十八頁 表 解説
標注                                            類聚方
鼾睡(カンスイ)=いびき
欠伸=あくび
省後=患いの後で
偏枯=半身不随
タンタン=身体機能を失う
緘黙(カンモク)=口をつむぎ黙る
口眼カ斜=顔面麻痺
蹇渋(ケンジュウ)=思うようにならない
流涎=涎を流す
神思恍惚=感情と意識が無くなる
機転(キテン)=すばやく物事に対処するはたらき
木偶人(デク)=木で作った人形
宿醒(シュクセイ)=二日酔い



オウレン Coptis japonica
黄連
効能:苦味健胃薬、清熱解毒作用
主成分:ベルベリン・パルマチン
雪解け時期・セリバオウレンの花


セリバオウレンの全株


生薬製剤・日本産黄連と中国産黄連(雅連)との比較



出産後の初生児に服用させた甘連大黄湯加紅花について


五香甘連湯は甘連大黄湯加紅花に連翹(各1グラム)が入ります。
石野信安先生は甘草(0,7g)黄連(0,7g)大黄(0,7g)紅花(0,5g)の甘連大黄湯加紅花を新生児に服用させていました。
私は五香甘連湯を煎じて子供や孫に服用させてきました。↓(2009年2月)


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