類聚方広義・第二木曜会 2011・1・13
柴胡去半夏加括ロウ湯〜柴胡桂枝湯〜柴胡桂枝乾姜湯
六十頁 裏
標注 類聚方
玉函、脈経は、併せ已にの字無し。按ずるに、柴胡證の下の、之を下すの二字も、衍に似る。先ず宜し以下十一字は、後人の註文なり。宜しく刪去すべし。葢し其の潮熱微利する所以の者は、所謂内実症にして、燥屎或いは臭穢の毒有る者なり。芒硝を加う所以なり。医人は宜しく病者に就きて之を験すべし。 此の方、其の小柴胡湯と異なるは、特だ嘔して渇するのみ。宜しく小柴胡湯標と照らし運用すべし。 |
「傷寒、十三日解せず。」胸脇満して嘔し、日哺所潮熱を発し、已にして微しく利すは、此れ本柴胡證にして、之を下し利を得れず。今反って利する者は、知るに医の丸薬を以って之を下すは、其の治に非ざるなり。「潮熱する者は実なり。」先ず小柴胡湯に宜しく、以って「外」を解し、後に柴胡加芒硝湯を以って之を主る。 為則按ずるに、小柴胡湯證にして、堅塊有る者、之を主る。 柴胡去半夏加括ロウ湯 小柴胡湯證にして、而して渇し、嘔せざる者を治す。 |
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六十頁 裏 解説
燥屎=長く腸内にある便 臭穢=臭く穢れた |
日哺所=夕刻 潮熱=潮が満ちるように徐々に上がる熱 丸薬=巴豆剤 堅塊=触診でわかる腫瘍や癌に相当する疾患 |
標注 類聚方
発汗の期を失い、胸脇満して嘔し、頭疼身痛し、往来寒熱、累日癒えず、心下支掌、飲食進まざる者、或いは汗下の後、病猶解せず。又加重に敢せず、但だ熱気纏繞して去らず、胸満し微しく |
小柴胡湯方内に於いて、半夏を去り、括ロウ根四両を加う。 柴胡 八分 人参 黄ゴン 甘草 生姜 大棗 各三分 括ロウ根 四分 右七味、煮て小柴胡湯の如くす。 「瘧」病、渇を発する者、亦「労瘧」を治す。 為則按ずるに、当に胸脇苦満の證有るべし。 柴胡桂枝湯 小柴胡湯、桂枝湯、二方の證の相合う者を治す。 |
六十一頁 表 解説
標注 類聚方
疼=うずく、いたむ過重
加重=責任が重くなる
敢(かん)=思い切って行う、決断力がある
纏繞(てんじょう)=まつわりつく、自由を束縛する
悪寒し、嘔して食を欲せずして、数日を過ぎ、而して癒ゆるが如く愈えざるが如き者、間亦之有り。当に其の発熱の期に先んじて此の方を用い、重覆して汗を取るべし。 疝家にて腰腹拘急し、痛み胸脇に連なりて、寒熱休作し、心下痞硬して嘔する者を治す。 婦人、故無く憎寒壮熱し、頭痛眩運、心下支結、嘔吐悪心、身体酸ナン、或いはグン痺、鬱鬱として人に対するを悪み、或いは頻頻と欠伸する者を、俗に血の道と謂う。此の方に宜し。或いは兼ねて瀉心湯を服す。 王宇泰の曰く。支結は、支トウして結ぶを謂う。 発汗多く、亡陽し譫語云云は、 |
桂枝 黄ゴン 人参 芍薬 生姜 各一両半 大棗 六枚 各二分五厘 甘草 一両 一分八厘 半夏 二合半 五分四厘 柴胡 四両 七分二厘 右九味、水七升を以って、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。水一合四勺を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。 「傷寒、六七日、」発熱微悪寒し、支節煩疼、微しく嘔、心下支結し、「外證」未だ去らざる者、 ○「発汗多く、亡陽し譫語の者は、下すべからず。柴胡桂枝湯を与え、其の栄衛を和し、以って |
重覆=衣服を重ね着して 酸ナン=酸(けだるい・痛みがあり無力)、ナン=やわらかい グン=グン=クン=身体、及び手足の麻痺 悪(にく)み=いやがる、きらう 欠伸=あくび 支トウ=ささえる |
賦性脆薄の人、或いは斯の症見ゆる者有り。表虚裏実の譫語と、相似て而して同じからず。宜しく其の症を審らかにし以って治を施すべし。若し表虚裏実の譫語に属する者は、調胃大小承気湯を撰用すべし。 労サイ、肺痿、肺廱、瘍疽、瘰癧、痔漏、結毒、梅毒等、久しきを経ても癒えず、漸として衰憊に就き、胸満乾嘔、寒熱交差、動悸煩悶、盗汗自汗、痰嗽、乾咳、咽乾口躁、大便溏泄、小便不利、而して血色無く、精神困乏、厚薬に耐えざる者、此の |
津液を通ぜば、後に自ら癒ゆ。」 ○心腹卒中痛む者、 柴胡桂枝乾姜湯 小柴胡湯證にして、嘔せず痞せず、上衝して渇し、胸腹に動の有る者を治す。 柴胡 半斤 八分 桂枝 乾姜 黄ゴン 牡蠣 各三両 三分 括ロウ根 四両 四分 甘草 二両 二分 右七味、水一斗二升を以って、煮て六升を取る。滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服す。煮るに小柴胡湯の如くす。日に三服す。初め服すに微しく煩し、復服し汗出れば便ち癒ゆ。 |
六十二頁 表 解説
標注 類聚方
賦性=生まれつき 脆薄(ぜいはく)=もろくてうすい 労サイ=肺労=肺結核 肺痿(はいい)=肺萎縮・呼吸機能の低下 肺廱(はいよう)=肺膿瘍・咳と共に膿血を出す 瘍疽(ようそ)=悪性の腫れ物・皮下より腫れ暗黒色で硬く痛みがある 瘰癧(るいれき)=リンパ腺周囲の腫脹や硬結 痔漏(じろう)=肛門周囲炎・及び痔による膿出 結毒(けつどく)=第二期・第三期梅毒で全身に蔓延し皮膚粘膜、骨膜、内蔵に炎症が出た状態 |
方に宜し。 瘧寒多云云、所謂労瘧の此の症多し。此の方に宜し。 按ずるに、此の方甘草黄ゴンの脱するに似る。宋板に黄ゴン一両半有り。半夏二合は、疑うに二合半の誤りか。 |
「傷寒、五六日、」已に汗を発し、而して復之を下す。胸脇満し微しく結す。小便不利し、渇して嘔せず、但頭汗多く、往来寒熱、心煩する者は、此れ未だ解せずと為すなり。 ○「瘧、」寒多く微しく熱有り、或いは但寒して熱せず者、 為則按ずるに、頭汗出ず者、是れ衝逆なり。又曰く、当に胸腹に動有るの證有るべし。 柴胡加龍骨牡蠣湯 小柴胡湯證にして、而して胸腹に動有り、煩躁驚狂し、大便難、小便不利の者を治す。 |
労瘧(ろうぎゃく)=瘧疾=衣夜美(えやみ・おこり)=間歇的に高熱が出るが平温にもなる |