類聚方広義・第二木曜会 2010・9・9
葛根加半夏湯・葛根黄連黄ごん湯・小柴胡湯
痘癰を作さんと欲す。宜しく大黄を加え残毒を逐除すべし。 ○小児の遺毒欄班、及び赤遊風を治す。紫円、籠葵丸、梅肉丸等を兼用す。 ○疫痢初起、発熱悪風脈数の者は、当に先ず本方を用い温覆し発刊すべし。若し嘔する者は、加半夏湯、以って汗を取り、後に大柴胡湯、厚朴三七物湯、大小承気湯、調胃承気湯、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、大黄附子湯、各症に随って之を處し、裏熱宿毒を疏蕩す。 ○咽喉腫痛、時毒サ腮、疫眼キン熱腫痛、項背強痛、発熱悪寒、脈浮数の者を治す。桔梗、大黄、石膏を選加す。或いは応鐘散、再造散、瀉心湯、黄連解毒湯等を兼用す。 ○本方に朮附を加え、葛根加朮附湯と名づく。発班症、発する毎に悪寒発熱腹痛する者、及び風疹、血疹、掻痒甚だしき者を治す。再造散を兼用す。 ○頭瘡、疥癬、下疳、楊梅瘡、一切の瘡瘍、未膿、已膿、潰後を論ずる勿れ。凝ボウ腫痛する者は、皆当に加朮附湯を以って排毒すべし。応鐘散、伯州散、梅肉丸、七宝丸等を兼用す。或いは本方中に、キュウ窮、大黄、反鼻等を選加す。 ○便毒は、速やかに醸膿すを佳と為す。加朮附湯に宜し。当に膿成るを候がい、ハ針にて割開すべし。後或いは排膿散及湯、大黄牡丹皮湯を撰用す。伯州散を兼用し、毒の軽重に随って、五日十日、梅肉散を以って之を攻む。 ○鼻淵、脳漏、鼻オウ、鼻中息肉等、臭膿滴瀝し、或いは濁涕止まず、臭香を聞かざる者は、皆頭中鬱毒オ液の致す所なり。脳漏が尤も悪症なり。早く之を制すと為さざれば、或いは不起に至る。加朮附湯に宜し。倶に再造散を兼用す。息肉の如きは、ドウ砂散をフき、或いは瓜蔕一字に於いて鼻中に吹かば、則ち清涕多漏し、息肉旋(たちまち)消ゆ。 ○瘍疽の初起、壮熱憎寒し、脈数の者、葛根湯を以って汗を発す。後に加朮附湯に転じ、以って醸膿を促す。膿成る者は、速やかに針を入れるべし。若し心胸煩悶し、鬱熱便秘の者は、瀉心湯、或いは大柴胡湯を兼用す。 ○凡そ諸瘍腫、流注附骨疽、痘癰、臀癰等、漫腫し皮色変ぜず、其の毒深く潜み、肌肉を隔つ |
遺毒欄班=遺伝性の梅毒 下疳=陰部のただれ 楊梅瘡=梅毒性皮膚炎 便毒=梅毒による出来物 鼻淵=蓄膿 脳漏=膿みの出る蓄膿 鼻オウ=肥厚性鼻炎 鼻中息肉=鼻茸 瓜蔕=蔕の苦いマクワウリ 一字=一文字、ネギのこと 瀉心湯=三黄瀉心湯。大黄・黄連・黄ゴン 流注=寒性腫瘍(病後など股間に出来る稀膿性腫瘍) 附骨疽=骨の腐る病 痘癰=天然痘による出来物 臀癰=臀部(おしり)の出来物 |
者、膿已に成る。、則ち膿處に必ず微に皮毛枯槁を作す。若し其の割開すべき者は、此れを認めて針を入れるは、百に一を失せず。但し其の候法は至って微、面命指授に非ずんば、其の蘊奥を悉くす能わず。 ○凡そ陳痼、結毒、凝閉し動かず、沈滞して発し難き者は、葛根加朮附湯、桂枝加朮附湯、烏頭湯等を以って、之を鼓動し、之を振発す。兼ぬるに七宝丸、十幹丸等を以って、之を駆逐す。更に梅肉散を以って之を蕩滌すれば、治らざる者有りといえども、葢し希ならんや。 |
葛根加半夏湯 葛根湯證にして、嘔する者を治す。 葛根湯方内に於いて、半夏半升を加う。 葛根 六分 桂枝 芍薬 甘草 各三分 麻黄 生姜 大棗 各四分五厘 半夏 九分 右八味、煮るに葛根湯の如し。 「太陽と陽明の合病、」下利せず、但嘔する者は、 葛根黄連黄ごん湯 項背強急して、心下痞し、心悸して下利の者を治す。 |
↓ ↓
五十三頁 裏 解説
標注 類聚方
面命指授=面と向かって指導すること 蘊奥=学問の奥義 結毒=全身梅毒 梅肉散=梅肉(塩蔵したものの黒焼き)・梔子霜・巴豆・軽粉 |
五十四頁 表
標注 類聚方
玉函、千金、宋板、共に黄ごん三両に作る。今之に従う。 平日項背強急し、心胸痞塞、神思悒鬱、舒暢せざる者を治す。或いは大黄を加う。 項背強急し、心下痞塞、胸中冤熱、而して眼目牙歯疼痛、或いは口舌腫痛腐爛の者は、大黄を加えば、其の効速やかなり。 柴胡の諸方は、皆能く瘧を治す。要は当に胸脇苦満の症を以って目 |
葛根 半斤 一銭六分 甘草 二両 四分 黄連 三両 六分 黄ごん 二両 六分 右四味、水八升を以って、先ず葛根を煮て、二升を減じ、諸薬を内れ、煮て二升を取る。滓を去り、分温再服す。水二合四勺を以って、煮て六勺を取る。 「太陽病、」桂枝の證、医反って之を下し、利遂に止まず、「脈促の者、表未だ解せざるなり。」喘して汗出する者、 為則按ずるに、当に項背強急、心悸の證有るべし。 小柴胡湯 胸脇苦満、往来寒熱、心下痞 |
↓ ↓
五十四頁 表 解説
標注 類聚方
悒鬱=(ゆううつ)うれえう・塞ぎこむ
冤熱=(えんねつ)わざわい・感染性の熱
五十四頁 裏
標注 類聚方
的と為すべし。 | 硬、而して嘔の者、 柴胡 半斤 八分 黄ごん 人参 甘草 生姜 各三両 大棗 十二枚 各三分 半夏 半升 六分 右七味、水一斗二升を以って、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服す。日に三服す。水二合四勺を以って、煮て一合二勺を取り、滓を去り、再煎して六勺を取る。 「後加減法、若し胸中煩して而して嘔せずば、半夏人参を去り、括ろう実一枚を加う。若し渇す者は、半夏を去り、人参を前に合わせ四両半と成し、括ろう根四両を加う。若し |
↓ ↓
五十四頁 裏 解説
標注 類聚方
腹中痛む者は、黄ごんを去り、芍薬三両を加う。若し脇下痞硬せば、大棗を去り、牡蠣四両を加う。若し心下悸し、小便不利の者は、黄ごんを去り、茯苓四両を加う。若し渇せず、外に微熱有る者は、人参を去り、桂三両を加えて、温覆して微汗を取れば癒ゆ。若し咳する者は、人参大棗生姜を去り、五味子半升乾姜二両を加う。」 「太陽病、十日以って去り、」脈浮細にして臥を嗜む者は、「外已に解するなり。設し胸満胸痛する者は、小柴胡湯を与う。脈但浮 |
者は、麻黄湯を与う。」 ○「傷寒、五六日中風、」往来寒熱、胸脇苦満、黙黙として飲食を欲せず、心煩喜嘔す。或いは胸中煩して嘔せず。或いは渇す。或いは腹中痛む。或いは脇下痞硬。或いは心下悸し、小便不利す。或いは渇せず、身に微熱あり。或いは咳す者は、 ○「血弱く気盡き、?理開き、邪気因って入り、正気と相搏ち、於けるに脇下に結び、生邪分争し、」往来寒熱、休作時に有り。黙黙として飲食を欲せず、「臓腑相連なり、其の痛み必ず下る。邪高く痛み下るが、故に嘔使むなり。」 ○柴胡湯を服し已わり、 |
渇する者は、「陽明に属すなり。」法を以って之を治す。 ○ |