類聚方広義・第二木曜会 2010・7・8
越婢加半夏湯〜葛根湯
湿、痛風、身熱悪寒、走注腫起。或いは熱痛。或いは冷痛、小便不利して渇する者を治す。ズイ賓丸を兼用す。 ○痿躄症にて、腰脚麻痺し、水気有り。或いは熱痛。或いは冷痛する者を治す。 ○按ずるに、外臺の刪繁肉極論を引くに、曰く。肉極の者云云、肉の色変じ、多汗体重く怠惰、四肢挙げんと欲せず、飲食を欲せず、食すれば則ち咳し、咳すれば則ち右脇下痛みて、陰陰と肩背に引き、以って移動すべからずを、名づけて歯翌ニ曰う。 肺脹に、此の方を用う。初め服すに温服し、汗を取り一過すを佳と為す。後に南呂丸を兼用す。 ○目脱状の如くとは、 |
渇せしむなり。」 ○「裏水、」越婢加朮湯之を主る。甘草麻黄湯も亦之を主る。 ○「肉極、熱すれば則ち身体津脱し、ソウ理開きて汗大いに泄れる。 歯雷C、下焦脚弱る。」 越婢加半夏湯 越婢湯證にして嘔逆する者を治す。 越婢湯方内に於いて、半夏半升を加う。 麻黄 六分 石膏 八分 生姜 三分 甘草 二分 大棗 四分 半夏 六分 右六味、煮ること越婢湯の如くす。 |
肺脹=肺気腫・肺気張 南呂丸=黄ゴン・大黄・甘遂・青蒙石 |
衝逆して眼目痛み甚だしを謂うなり。素問至眞要大論に曰く、病頭を衝きて痛み、目脱の如く、項抜けるが如しと。霊枢経脈篇も亦同じ。 此の方は、項背強急を主治するなり。故に能く驚癇、破傷風、産後の感冒卒痙、痘瘡の初起等、角急反張し、上竄チク溺し、身体強直する者を治す。宜しく症に随い熊胆、紫円、参連湯、瀉心湯等を兼用すべし。 ○麻疹の初起、悪寒発熱し、頭項強痛し、汗無く脈浮数、或いは乾嘔下利する者を治す。若し熱熾んにて、咽喉刺激し、心胸煩悶する者は、黄連解毒湯 |
咳して上気す。「此れを肺脹と為す。」其の人喘し、目脱状の如く、脈浮大の者、 為則按ずるに、当に煩渇して嘔逆の證有るべし。 葛根湯 項背強急して、発熱悪風し、或いは喘し、或いは身疼痛する者を治す。 葛根 四両 七分 麻黄 生姜 各三両 大棗 十二枚 各五分三厘 桂枝 芍薬 甘草 各二両 三分五厘 右 七味、フ咀し、水一斗を以って、先ず麻黄葛根を煮て、 |
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五十二頁 表 解説
標注 類聚方
驚癇=ひきつけ・テンカン 産後の感冒卒痙=産褥熱 痘瘡=天然痘 上竄=白目を出して上を向く |
五十二頁 裏
標注 類聚方
を兼用す。 ○痘瘡序熱にて、驚チク腹痛、或いは嘔吐下利の者は、先ず紫円を用い、快利二三行を得て、後に此の方を用うべし。若し嘔吐止まず、直視驚チクし安からず者は、更に紫円或いは熊胆を用う。カイ有る者は、鷓胡菜湯を用うべし。若し見點斉わず、及び起脹灌膿せざる者は、桔梗黄耆等を選加し、兼ねるに伯州散を煉蜜にて膏と為し用う。或いは本方に反鼻鹿角を加うも亦佳なり。若し痘庁発す者は、速やかにハ針にて挑破して悪血をされ。否らざれば危険競起し、遂には救い難きに至るなり。若し収靨以後、余熱退かず、脈数悪寒し、一處疼痛する者は、 |
二升を減じ、沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取る。滓を去り、一升を温服す。水二合を以って、煮て六勺を取る。覆って微似汗を取る。粥を啜るを須いず。餘は桂枝法の如くす。将息及び「禁忌」す。 「太陽病。」項背強ばること儿儿、汗無く悪風す、 ○「太陽と陽明の合病は、必ず自下利す、」 ○「太陽病、」汗無くして小便反って少なし、気胸に上衝し、口禁じ語るを得られず、「剛痙を作さんと欲すは、」 為則按ずるに、合病併病の説は、疾病医事に非ざるなり。 |
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五十二頁 裏 解説
標注 類聚方
序熱=だんだんに熱が高くなる
鷓胡菜=海人草・マクリ
ハ針=メス
収靨=えくぼのようにくぼむ
五十三頁 表
標注 類聚方
痘癰を作さんと欲す。宜しく大黄を加え残毒を逐除すべし。 ○小児の遺毒欄班、及び赤遊風を治す。紫円、籠葵丸、梅肉丸等を兼用す。 ○疫痢初起、発熱悪風脈数の者は、当に先ず本方を用い温覆し発刊すべし。若し嘔する者は、加半夏湯、以って汗を取り、後に大柴胡湯、厚朴三七物湯、大小承気湯、調胃承気湯、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、大黄附子湯、各症に随って之を處し、裏熱宿毒を疏蕩す。 ○咽喉腫痛、時毒サ腮、疫眼キン熱腫痛、項背強痛、発熱悪寒、脈浮数の者を治す。桔梗、大黄、石膏を選加す。或いは応鐘散、再造散、瀉心湯、黄連解毒湯等を兼用す。 ○本方に朮附を加え、葛根加朮附湯と名づく。発班症、発する毎に悪寒発熱腹痛する者、及び風疹、血疹、掻痒甚だしき者を治す。再造散を兼用す。 ○頭瘡、疥癬、下疳、楊梅瘡、一切の瘡瘍、未膿、已膿、潰後を論ずる勿れ。凝ボウ腫痛する者は、皆当に加朮附湯を以って排毒すべし。応鐘散、伯州散、梅肉丸、七宝丸等を兼用す。或いは本方中に、キュウ窮、大黄、反鼻等を選加す。 ○便毒は、速やかに醸膿すを佳と為す。加朮附湯に宜し。当に膿成るを候がい、ハ針にて割開すべし。後或いは排膿散及湯、大黄牡丹皮湯を撰用す。伯州散を兼用し、毒の軽重に随って、五日十日、梅肉散を以って之を攻む。 ○鼻淵、脳漏、鼻オウ、鼻中息肉等、臭膿滴瀝し、或いは濁涕止まず、臭香を聞かざる者は、皆頭中鬱毒オ液の致す所なり。脳漏が尤も悪症なり。早く之を制すと為さざれば、或いは不起に至る。加朮附湯に宜し。倶に再造散を兼用す。息肉の如きは、ドウ砂散をフき、或いは瓜蔕一字に於いて鼻中に吹かば、則ち清涕多漏し、息肉旋(たちまち)消ゆ。 ○瘍疽の初起、壮熱憎寒し、脈数の者、葛根湯を以って汗を発す。後に加朮附湯に転じ、以って醸膿を促す。膿成る者は、速やかに針を入れるべし。若し心胸煩悶し、鬱熱便秘の者は、瀉心湯、或いは大柴胡湯を兼用す。 ○凡そ諸瘍腫、流注附骨疽、痘癰、臀癰等、漫腫し皮色変ぜず、其の毒深く潜み、を隔つ |
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五十三頁 表 解説
標注 類聚方
遺毒欄班=遺伝性の梅毒
下疳=陰部のただれ
楊梅瘡=梅毒性皮膚炎
便毒=梅毒による出来物
鼻淵=蓄膿
脳漏=膿みの出る蓄膿
鼻オウ=肥厚性鼻炎
鼻中息肉=鼻茸
瓜蔕=蔕の苦いマクワウリ
一字=一文字、ネギのこと
者、膿已に成る。、則ち膿處に必ず微に皮毛枯槁を作す。 | 葛根加半夏湯 葛根湯證にして、嘔する者を治す。 葛根湯方内に於いて、半夏半升を加う。 葛根 六分 桂枝 芍薬 甘草 各三分 麻黄 生姜 大棗 各四分五厘 半夏 九分 右八味、煮るに葛根湯の如し。 「太陽と陽明の合病、」下利せず、但嘔する者は、 葛根黄連黄?湯 項背強急して、心下痞し、心悸して下利の者を治す。 |