類聚方広義・第二木曜会 2010・6・10
文蛤散〜越婢加朮湯
にして、之を事実に験すれば、即ち自ずから了了たり。夫れこの方は大青龍湯と、其の出入する所、僅か一味、而して分量小異有るのみ。この方は本発散の剤なり。方後の汗出れば即ち癒ゆの語を観て、而して見るべし。兼主云云の八字の如く、注語に似ると雖も、亦以って其の方意を見るに足る。其の方意を見て、今挙げる所特だ渇飲の一症のみ。是れ渇して水を飲まんと欲し止まざる者と同じく、文蛤散の症なり。此れに由り之を観るに、吐後以下十字、其の錯簡為るや明らかなり。按ずるに、五苓散條に、列し挙ぐる所の症は、正に是れ文蛤湯の症なり。本論に文蛤散と作るは誤りなり。全章 | 右七味、水六升を以って、煮て二升を取り、一升を温服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。汗出れば即ち愈ゆ。 吐後、渇して水を得んと欲し、而して飲を貪る者、文蛤湯之を主る。「兼ねるに微風し脈緊頭痛を主る。」 為則按ずるに、当に喘の證有るべし。 文蛤散 渇して水を飲まんと欲すを止まざる者を治す。 文蛤 五両 十銭 右一味、散と為し、沸湯を以って、一銭ヒを和し服す。湯は五 |
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四十九頁 裏 解説
標注 類聚方
五十頁 表
標注 類聚方
の意を審らかにすれば、則ち其の義自ずから見ゆ。金匱本論に、倶に錯誤に属す。五苓散標に已に之を詳しゅうす。 文蛤散は、当に文蛤湯に作るべし。詳しく文蛤湯、五苓散、二條標注に弁ず。○寒実結胸、熱症の無き者は、三物白散の症なり。小陥胸湯の四字、亦服すべしの三字は、併せ刪るべし。説は五苓散標に見ゆ。 |
合を用う。沸湯五勺を以って、一銭に和し服す。 「病陽に在り。応に汗を以って之を解す。」反って冷水を以って之にふき、若し之に灌するに、其の熱劫を被りて去るを得られず。いよいよ更に益すに煩し、肉上粟起す。意するに水を飲まんと欲し、反って渇せざる者は、文蛤散を服す。若し癒えざらん者は、五苓散を与う。「寒実結胸、」 熱證無き者は、三物小陥胸湯を与う。白散も亦服すべし。 ○渇して水を飲まんと欲し、止まざる者は、 越婢湯 一身悉く腫れ、喘して渇し、自ずから汗出で、悪風する者を治す。 |
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五十頁 表 解説
標注 類聚方
三物白散=桔梗白散=桔梗・貝母・巴豆 | 肉上粟起=鳥肌 白散=桔梗白散 |
東洞先生曰く、渇せざるは、全く渇せざるの謂に非ず。大熱無きは、全く大熱無きの謂に非ずと。按ずるに、渇せずは疑うらくは渇の誤りならん。白虎湯症に曰く。大熱無く、口躁し渇すと。此れに據りて之を観るに、其の渇の症有るや明らかなり。 越婢加朮湯は、眼球膨脹熱痛し、瞼胞腫脹、及び爛瞼風、痒痛羞明、シ涙多き者を治す。応鐘散を兼用し、時に梅 |
麻黄 六両 九分 石膏 半斤 一銭二分 生姜 三両 四分五厘 大棗 十五枚 六分 甘草 二両 三分 右五味、水六升を以って、先ず麻黄を煮て、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取り、分かち温めて三服す。水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。悪風の者は、附子一枚を加う。風水には、朮四両を加う。 「風水、」悪風、一身悉く腫れ、脈浮にして渇せず、続いて自ずから汗出で、「大熱無きは、」 為則按ずるに、大青龍湯證にして、而して咳嗽衝逆無く、 |
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五十頁 裏 解説
標注 類聚方
爛瞼風=ただれ目、小児においては胎毒眼とも言う 痒痛羞明=痒く痛んで眩しいこと、 シ涙=目やにや涙 |
肉散、或いは紫円を以って之を攻む。 ○此の方に附子を加え、越婢加朮附湯と名づく。水腫し身熱悪寒し、骨節疼重、或いはガン痺し、渇して小便不利の者を治す。ズイ賓丸、仲呂丸等を兼用す。心下コウ満し、或いは腹満し、或いは塊有りて、大便通ぜざる者は、陥胸丸、大承気湯等を兼用す。又諸瘍久しきを得て、流注状と為る者、及び破傷湿と称す者を治す。又疥癬内攻し、一身洪腫、短気喘鳴、咽乾口渇、二便通ぜず、巨里の動怒涛の如き者を治す。更に反鼻を加えて、効尤も勝れり。当に仲呂丸、紫円、走馬湯などを以って之を攻むべし。又風 |
脚攣急の證有る者、之を主る。渇せずは、当に渇に作るべし。自汗出での下に、当に或いは汗無しの字有るべし。 越婢加朮湯 越婢湯證、而して小便不利する者を治す。 越婢湯方内に於いて朮四両を加う。 麻黄 六分 石膏 八分 大棗 四分 甘草 二分 生姜 三分 朮 四分 右六味、煮ること越婢湯の如くす。 「裏水」の者、一身面目黄腫、其の脈沈、小便不利、「故に水を病ましむ。仮令小便自利せば、此れ津液を亡す。故に |
流注状=経絡に沿って腫れる病気 破傷湿=@破傷風、A傷から化膿する出来物 疥癬=皮膚が痒くなる疾患 巨里=胸部前面 反鼻=マムシ |
湿、痛風、身熱悪寒、走注腫起。或いは熱痛。或いは冷痛、小便不利して渇する者を治す。ズイ賓丸を兼用す。 ○痿躄症にて、腰脚麻痺し、水気有り。或いは熱痛。或いは冷痛する者を治す。 ○按ずるに、外臺の刪繁肉極論を引くに、曰く。肉極の者云云、肉の色変じ、多汗体重く怠惰、四肢挙げんと欲せず、飲食を欲せず、食すれば則ち咳し、咳すれば則ち右脇下痛みて、陰陰と肩背に引き、以って移動すべからずを、名づけて歯翌ニ曰う。 肺脹に、此の方を用う。初め服すに温服し、汗を取り一過すを佳と為す。後に南呂丸を兼用す。 ○目脱状の如く、 |
渇せしむなり。」 ○「裏水、」越婢加朮湯之を主る。甘草麻黄湯も亦之を主る。 ○「肉極、熱すれば則ち身体津脱し、ソウ理開きて汗大いに泄れる。 歯雷C、下焦脚弱る。」 越婢加半夏湯 越婢湯證にして嘔逆する者を治す。 越婢湯方内に於いて、半夏半升を加う。 麻黄 六分 石膏 八分 生姜 三分 甘草 二分 大棗 四分 半夏 六分 右六味、煮ること越婢湯の如くす。 |
走注腫起=経絡の流れに沿って患部が腫れる ズイ賓丸 |
歯雷C(レイフウキ)=広義で関節リウマチを含む脚気、その他、ライ病の説もあり |
大塚敬節先生の経験によりますと越婢加朮湯は眼科疾患の「翼状片」によく効く!と話されたように記憶しています。