類聚方広義・第二木曜会  2010・4・8


小青龍湯・大青龍湯

 四十六頁後半
標註                                       類聚方




金匱、咳嗽篇に曰く、肺脹、咳して上気し、煩躁して喘し、脈浮の者は、心下に水有り。小青龍湯加石膏之を主ると。千金方に、症治同じく、而して更に脇下痛み欠盆に引くの六字有り。此の症は、宜しく南呂丸、十棗丸を兼用すべし。
為則按ずるに、当に喘或いは嘔の證有るべし。

小青龍湯
咳喘して、上衝し、頭痛、発熱、悪風、乾嘔する者を治す。
麻黄 芍薬 乾姜 甘草 桂枝 細辛 各三両 
三分 五味子 半升 五分 半夏 半升 六分
右八味、水一斗を以って、先ず麻黄を煮て、二升を減ず。上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取る。滓を去り、一升を温服す。
水二合を以って煮て六勺を取る
「加減法、若し微利する者は、麻黄を去り、蕘花

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四十六頁後半解説
欠盆は本文に缺盆、文意は同じ(下に図表示)
南呂丸=別名・滾痰丸(こんたんがん)甘遂(沈香代用)・青蒙石・大黄
十棗丸=十棗湯の丸薬か?
蕘花(じょうか)ジンチョウゲ科・芫花に近い植物の花蕾

四十七頁前半

標註                                       類聚方
或いは渇し、或いは利し、以下五症は、皆本方の兼治する所なり。故に本論には或いはと云い、若しと云わず。若しと云うは、則ち必ず加味有るなり。後人は或いはと若しの義に異なり有るを知らず、妄りに加減方を作る。小柴胡湯、真武湯、通脈四逆湯、理中丸、四逆散の如きは、皆然り。
程応旄は、噎を改め、噫に作る。
金匱に曰く、飲水流行し、於けるに四肢に帰すれば、当に汗出ずべし。而るに汗出でざれば、身体疼重す。之を溢飲と謂うと。
按ずるに、此の症は当に大青龍湯を以って
鶏子の如きを加う。若し渇する者は、半夏を去り、括ろう根三両を加う。若し噎する者は、麻黄を去り、附子一枚を加う。若し小便不利し、小腹満せば、麻黄を去り、茯苓四両を加う。若し喘する者は、麻黄を去り、杏仁半升を加う。
「傷寒、表解せず、」心下に水気有り。乾嘔発熱して咳し、或いは渇し、或いは利し、或いは噎す。或いは小便不利、小腹満す。或いは喘す者、
○「傷寒、」心下水気有り。がいして微しく喘し、発熱し渇せず、「湯を服し已わり、渇する者、此れ寒去り、解せんと欲すなり。」
○「病溢飲

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四十七頁前半解説
標註                                            類聚方
程応旄(ていおうぼう)=清の時代(1670年頃)・傷寒論後條弁の著者、吉益東洞に影響を与える
=むせぶ
=げっぷ

四十七頁後半

標註                                       類聚方

汗を発すべし。小青龍湯も亦之を主ると曰うは、誤りなり。小青龍湯症は、傷寒云云の二章、及び咳逆倚息して、臥するを得られずの章、是れなり。弁別せざるべからざるなり。二方もて一症を治するは、古義に非ず。茯苓杏仁甘草湯標に、已に之を弁ず。
倚息は、肩息と同じ。
程林の曰く、聨綿として断たざるを、涎と曰い、軽く浮きて白きを、沫と曰う。涎は、津液の化する所。沫は、水飲の成す所と。
瀉心湯は、大黄黄連瀉心湯を謂うなり。
者は、当に其の汗を発すべし、」大青龍湯之を主る。小青龍湯も亦之を主る。
○咳逆倚息し臥するを得られずは、小青龍湯之を主る。青龍湯下し已わり、多唾口燥、「寸脈沈、尺脈微、」手足厥逆し、気小腹従(よ)り胸咽に上衝し、手足痺れ其の面翕然として酔状の如し、因って復陰股に下流し、小便難く、時に冒す者は、茯苓桂枝五味甘草湯を与え、其の気衝するを治す。
○「婦人、」涎沫を吐すに、医反って之を下し、心下則ち痞す。当に先ず其の涎沫を吐するを治す。小青龍湯之を主る。涎沫止み、及

四十七頁後半解説

標註                                            類聚方

程林=清時代、漢方の字句を解説、金匱要略直解の著者
涎(せん)=よだれ
沫(まつ)=つばき
(が)=ふせる・ねる



四十八頁前半

標註                                       類聚方


脈微弱、汗出で悪風する者、豈大青龍湯を用いる者有らんや。是れ後人の注語のみ。逆と為すなりの下に、尚論編、後條弁、さん論、皆真武湯を以って之を救うの語有り。東洞先生も亦厥逆以下を、真武湯の症なりと謂うは、特だ其の症を取るのみ。
痞を治す。瀉心湯之を主る。

大青龍湯
喘及び咳嗽し、渇して水を飲まんと欲し、上衝し、或いは身疼み、悪風し寒する者を治す。
麻黄 六両 
九分 桂枝 二両 甘草 二両 杏仁 四十個 各三分 生姜 三両 大棗 十二枚 各四分五厘 石膏 鶏子大 一銭二分
右七味、水九升を以って、先ず麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取る。滓を去り、一升を温服す。
水二合

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四十八頁前半解説
標註                                            類聚方
石膏 鶏子大=鶏の卵、卵黄の大きさほどで約20グラム

四十八頁後半

標註                                       類聚方

八勺を以って六勺を取る。微似汗を取る。「汗出ずること多き者には、温粉にて之を粉す。一服にて汗する者は、後服を停す。汗多く亡陽せば、遂に虚し、悪風煩躁して、眠を得られざるなり。」
「太陽中風、」脈浮緊、発熱悪寒し、身疼痛し、汗出でず而して(して)煩躁する者は、大青龍湯之を主る。若し脈微弱にて、汗出で悪風する者は、服すべからず。之を服せば則ち厥逆し、筋タ肉潤す。此れを逆と為すなり。
○「傷寒、」脈浮緩、身疼まず、但重く、乍ち軽き時有り、「少陰症無き」者は、大青龍湯「之を発す。」後條弁、

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四十八頁後半解説
標註                                            類聚方
温粉=米の粉という説あり
筋タ肉潤=筋肉がぴくぴく動揺し引き攣る


四十九頁前半

論、皆云うに、当に是れ小青龍湯証なるべし。今之に従う。
○「病溢飲の者は、当に其の汗を発すべし、」大青龍湯之を主る。小青龍湯も亦之を主る。
為則按ずるに、当に渇の證有るべし。葢し厥逆以下は、真武湯之の證なり。考うべし。

文蛤湯
煩躁して渇し、悪寒、喘咳、急迫の者を治す。
文蛤 五両 
七分五厘 麻黄 甘草 生姜 各三両 大棗 十二枚 各四分五厘 石膏 五両 七分五厘 杏仁 五十個 三分五厘

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四十九頁前半解説
標註                                            類聚方


欠盆の位置・鎖骨上のくぼみ(左右同じ)

●昭和50年当時の講義中、大塚敬節先生が大青龍湯條文での思い出話しをしてくれました。
昭和27年の傷寒論輪読会で東京大学の馬場和光君(橋田邦彦先生と倫理学師弟・橋田先生も同席?)が来ていて、荒木性次君に「太陽中風脈浮と傷寒脈浮」はどのように解釈するのか?と聞いたところ、荒木君が「傷寒論を読めば解る!」と答えて馬場和光君は怒って荒木君を殴ったんだ!その後、荒木君は「もう、こりごりだよ!」と言っていた。有名な話だよ。しかし荒木君も荒木君だよね!と・・・
同じ馬場姓でも馬場辰二先生は東京大学医学部を主席(金ペン)で卒業し、東大屈指の優等生とされましたが漢方を志し大塚敬節先生と親友でした。当時の吉田茂首相の主治医で首相が下痢をした時に往診し甘草瀉心湯で治した事は有名です。馬場辰二先生は大塚敬節先生創方の七物降下湯の命名者でもありました。

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