類聚方広義・第二木曜会  2010・12・9


小柴胡湯〜柴胡加芒硝湯

五十四頁 表
標注                                       類聚方

玉函、千金、宋板、共に黄ごん三両に作る。今之に従う。
平日項背強急し、心胸痞塞、神思悒鬱、舒暢せざる者を治す。或いは大黄を加う。
項背強急し、心下痞塞、胸中冤熱、而して眼目牙歯疼痛、或いは口舌腫痛腐爛の者は、大黄を加えば、其の効速やかなり。




柴胡の諸方は、皆能く瘧を治す。要は当に胸脇苦満の症を以って目
葛根 半斤 一銭六分 甘草 二両 四分 黄連 三両 六分 黄ゴン 二両 六分
右四味、水八升を以って、先ず葛根を煮て、二升を減じ、諸薬を内れ、煮て二升を取る。滓を去り、分温再服す。
水二合四勺を以って、煮て六勺を取る。
「太陽病、」桂枝の證、医反って之を下し、利遂に止まず、「脈促の者、表未だ解せざるなり。」喘して汗出する者、
為則按ずるに、当に項背強急、心悸の證有るべし。


小柴胡湯
胸脇苦満、往来寒熱、心下痞

↓                                               ↓

五十四頁 表 解説
標注                                            類聚方
悒鬱=(ゆううつ)うれえう・塞ぎこむ
冤熱=(えんねつ)わざわい・感染性の熱
瘧(瘧疾)=間歇熱・高熱が出たかと思うと急に平熱になることを繰り返す。
   



五十四頁 裏
標注                                            類聚方
的と為すべし。
痘瘡、貫膿収靨の間、身熱あぶるが如く、胸満して嘔渇し、瘡瘍煩躁する者を治す。又収靨の後、余熱久しく解せず、前症の如き者は、亦此の方に宜し。
時毒、頭オン、傷寒発頤等、胸脇苦満、往来寒熱、咽乾口躁の者を治す。若し煩躁譫語す者は、芒硝石膏を選加す。

初生児、時々故無く発熱胸悸し、或いは吐乳する者を、変蒸熱と称す。此の方に宜し。大便秘す者は、加芒硝湯に宜し。或いは紫円を兼用す。
硬、而して嘔の者、
柴胡 半斤 
八分 黄ゴン 人参 甘草 生姜 各三両 大棗 十二枚 各三分 半夏 半升 六分
右七味、水一斗二升を以って、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服す。日に三服す。
水二合四勺を以って、煮て一合二勺を取り、滓を去り、再煎して六勺を取る。
「後加減法、若し胸中煩して而して嘔せずば、半夏人参を去り、括ロウ実一枚を加う。若し渇す者は、半夏を去り、人参を前に合わせ四両半と成し、括ロウ根四両を加う。若し


五十四頁 裏 解説

標注                                            類聚方
痘瘡=天然痘によるおでき
貫膿=膿みを持った状態
収靨=化膿が少しおさまりへこんだ状態・えくぼ状
時毒=気候不順な時に出来る吹き出物・耳下腺炎など
オン=頭の出来物・丹毒
発頤=顎の腫れ・リンパ腺の腫れ
変蒸熱=知恵熱
    


五十五頁 表
標注                                            類聚方
傷寒愈えた後、唯耳中啾啾として安からず、或いは耳聾累月復さざる者は、此の方を長復すべし。


或いは胸中煩して嘔せず以下は、皆本方の兼治する所なり。加減法は、後人が為すなり。小青龍湯標已に之を詳しゅうす。
腹中痛む者は、黄ごんを去り、芍薬三両を加う。若し脇下痞硬せば、大棗を去り、牡蠣四両を加う。若し心下悸し、小便不利の者は、黄ごんを去り、茯苓四両を加う。若し渇せず、外に微熱有る者は、人参を去り、桂三両を加えて、温覆して微汗を取れば癒ゆ。若し咳する者は、人参大棗生姜を去り、五味子半升乾姜二両を加う。」 
「太陽病、十日以って去り、」脈浮細にして臥を嗜む者は、「外已に解するなり。設し胸満胸痛する者は、小柴胡湯を与う。脈但浮

五十五頁 表 解説
標注                                            類聚方
耳中啾啾=耳鳴りを形容する語句



五十五頁 裏
標注                                            類聚方
傷寒、五六日云云の、此の章は小柴胡湯の正症なり。
黙は、モクに同じ。又墨と通ず。喩昌曰く、黙黙は昏昏の義にて、静黙に非ざるなり。
喜は、数の義にして、喜嘔は、しばしば嘔すなり。漢書の葢寛ジョウ伝に曰く、深刻に喜庸人の為に誦説すと、以って証すべし。又抵当湯の條に、消穀善饑の義も、亦同義なり。金匱、素霊に、多く喜善の字を用う。義は皆同じ。
○血弱気衰を謂うは、猶可なり。血弱気盡は、則ち不可なり。豈気已に盡きても、尚生存する有らんや。且つ已に気盡と云い、又
者は、麻黄湯を与う。」
○「傷寒、五六日中風、」往来寒熱、胸脇苦満、黙黙として飲食を欲せず、心煩喜嘔す。或いは胸中煩して嘔せず。或いは渇す。或いは腹中痛む。或いは脇下痞硬。或いは心下悸し、小便不利す。或いは渇せず、身に微熱あり。或いは咳す者は、
○「血弱く気盡き、?理開き、邪気因って入り、正気と相搏ち、於けるに脇下に結び、生邪分争し、」往来寒熱、休作時に有り。黙黙として飲食を欲せず、「臓腑相連なり、其の痛み必ず下る。邪高く痛み下るが、故に嘔使むなり。」

○柴胡湯を服し已わり、

五十五頁 裏 解説
標注                                            類聚方
喜=しばしば、屡々の意
庸人=やとわれている人
誦説=繰り返して説く



五十六頁 表
標注                                            類聚方
正気と相搏つと云うは、何の言の相戻か。此の章は畢竟ザン入に属し、之を節取するは、恐らく是に非ず。


傷寒、四五日、身熱悪寒し、頚項強云云は、是れ所謂太陽病の未だ解せずして、少陽に入る者なり。其の重きは脇下満し、手足温にして渇するの在るが、故に小柴胡湯を与う。是れ則ち傷寒中風、柴胡の症有りて、但一症を見(あらわ)せば、則ち是なり。必ずしも悉く具わらざる者なり。子柄は外臺に據りて、
渇する者は、「陽明に属すなり。」法を以って之を治す。
○病を得て六七日、脈遅浮弱にして悪風寒、手足温。医二三之を下すに、食す能わずして、脇下満痛し、面目及び身黄、頚項強ばり、小便難の者は、柴胡湯を与う。「後必ず下重し、本渇して水を飲み嘔する者は、柴胡湯を与うに中らざるなり。穀を食する者はエツす。」
○「傷寒、四五日、」身熱悪風し頚項強ばり、脇下満、手足温にして渇す者は、
○「傷寒陽脈渋、陰脈弦、法当に」腹中急痛すべき者は、先ず小建中湯を与え、差えざらん者は、小柴胡

五十六頁 表 解説
標注                                            類聚方
ザン入=文中に原作以外の文句がまぎれこむ エツ=シャックリ



五十六頁 裏
標注                                       類聚方
以って柴胡姜桂湯症と謂うは、誤りなり。
凡そ大小柴胡湯を用い、蒸蒸として振い、卻って発熱汗出ず者は謂う所の戦汗なり。傷寒にて累日、已に汗下を経るの後と雖も、柴胡症の尚在る者は、復柴胡湯を用うべし。必ず蒸蒸と戦慄し、大汗淋漓し、患う所脱然として解す。宜しく予め病家に告諭するに、若し振寒を発すれば、則ち重衾温覆し、以って汗を取るべしと。其の期を失すること勿れ。


傷寒、十三日云云、説は柴胡加芒硝湯標に詳らかなり。
湯を与え之を主る。
○「傷寒中風、」柴胡證有るに、但一證を見るに(見わすに)便ち是なり。必ず悉く具わらず、
○凡そ柴胡湯の病證にして、之を下す。若し柴胡證罷まざる者は、復柴胡湯を与えれば、必ず蒸蒸として振い、卻って発熱し汗出でて解す。
「太陽病、過経十餘日、反って」二三之を下し、後四五日、柴胡證仍ほ在る者、先ず小柴胡湯を与えるに、嘔止まず、心下急、鬱鬱として微煩の者、「未だ解せざると為すなり。」大柴胡湯を与え之を下せば則ち癒ゆ。
○「傷寒十三日解せず、」胸脇満して嘔、日哺所潮熱


五十六頁 裏 解説
標注                                            類聚方
重衾=重ね着 是なり=肯定の意味
蒸蒸=ふかされたように、蒸されたように
鬱鬱=気が塞がること、熱気がこもる
日哺所=夕暮れ、午後4時頃


五十七頁表
標注                                       類聚方




適断の者は、経行中に病を得、而して断する者を謂う。故に曰く其の血必ず結ぶと。而るに急結コウ満等の症状有るに非ず。故に柴胡は其の熱を駆するのみ。桃核承気湯、抵当湯等の之く所と同じからざるなり。
○程チョクの曰く、子宮は、即ち血室なり。
傷寒、五六日、頭汗出での章は、ザン入なり。之を節取するは、記す者の誤りなり。
を発し、已にして微しく利す。此れ本より柴胡の證、之を下して利を得られず。今反って利する者は、知るに医の丸薬を以って之を下すは、其の治に非ざるなり。「潮熱は実なり。」先ず宜しく小柴胡湯にすべし。以って「外を」解す。後柴胡加芒硝湯を以って之を主る。
○「婦人中風、七八日続いて得るに」寒熱を、発作時に有り。経水適断の者は、「此れ熱の血室に入ると為し、其の血必ず結ぶ。故に瘧状の如く、発作時に有らしむ。」
○「傷寒、五六日、」頭汗出で、微しく悪寒し、手足冷、心下満、口は食を欲せず、大便硬く、脈細の者、「此れ陽の微結と為す。


五十七頁 表 解説
標注                                            類聚方

血室=子宮のこととされるが大塚敬節先生は肝臓に当てる 丸薬=巴豆を使った丸薬 ※大黄は寒薬だが巴豆は熱薬
外=外症のことで胸を中心におこる症状
経水=生理
血室=子宮のこととされるが大塚敬節先生は肝臓に当てる
瘧状=ヒステリー状態


五十七頁裏
標注                                       類聚方




了了たらずは、猶快然ならずと言うがごとし。

傷寒、五六日、嘔して発熱の章、若し心下満以下は、上文の他薬を以って之を下すの句を承け、以って下後転変の処置を論ずるなり。
必ず表有り。復裏も有るなり。脈沈にして亦裏有るなり。汗出で陽の微と為す。仮令純陰結せば、復外證有るを得られず、悉く入りて裏に在り。此れ半ば裏に在り半ば外に在ると為すなり。脈沈緊と雖も、少陰病と為すを得ず。然る所以の者は、陰汗有るを得ず。今頭汗出ず、故に少陰に非ざるを知るなり。」小柴胡湯を与うべし。設し了了たらざる者は、屎を得て解す。
○「傷寒、五六日、」嘔して発熱する者は、柴胡湯證具わるに、而して他薬を以って之を下し、柴胡證仍ほ在る者は、復柴胡湯を与う。此れ已に之を下すと雖も、逆と為さず。必ず

五十七頁裏 解説
標注     
                                       類聚方
了了=明らかなさま
他薬=大黄や芒硝の入った処方
転変=病気の進行
半ば裏に在り半ば外=半外半裏=?半表半裏
了了=すっきりとおわる、まとまる、明らか
屎=くそ
他薬=大黄や芒硝の入った処方


五十八頁表
標注                                       類聚方
陽明病、潮熱を発し云云と、陽明病、脇下コウ満云云の、二章は、葢し所謂少陽陽明の併病なり。此れ等の症は、反って柴胡加芒硝湯、大柴胡湯等の宜しき者有り。臨所の際に、宜しく注意すべし。
胎はタイ煤のタイと、古字通用す。正字通には、タイの字の下に、徐云うに、火煙の生じる所なりと。玉篇い云う、タイ煤は、煤塵なりと。陽明胃実の症は、舌色の多くは黒し。若し未だ黒に至らざるも、必ず煤黄色なり。此の條陽明病と称すると雖も、実は陽明少陽の併病なり。白胎の所以なり。胎は本
蒸蒸と振い、卻って発熱汗出で解す。若し心下満してコウ痛す者は、「此れ結胸と為すなり。」大陥胸湯之を主る。但満して痛まざる者は、「此れ痞と為し、」柴胡之に与うに中らず。半夏瀉心湯に宜し。
○「陽明病、」潮熱を発し、大便溏、小便自ずから可、胸脇満して去らず者、
○「陽明病、」脇下コウ満し、大便せずして嘔し、舌上白苔の者は、小柴胡湯を与うべし。上焦通ずを得て、津液下るを得る。「胃気」因って和し、身シュウ然として汗出で解すなり。
○「陽明中風、脈弦浮大にして、短気し、腹

五十八頁表 解説
標注           
                                 類聚方
臨所の際=患者を診るとき 結胸=肋膜炎の症状か?
潮熱=次第に熱が上がる
溏=泥状の鳥の糞便のような
シュウ=水の流れるさま、集める、収める
短気=呼吸が息迫する


五十八頁裏
標注                                       類聚方
黒を以って義と為すが、故に一つ白の字を加うるなり。
素問五臓生成篇に云う、黒きことタイの如き者はは死す。此れ舌色を論ずる者非ずと雖も、胎の字の義を、併発すべけんや。
陽明中風、脈弦浮大の章は、ザン入なり。


本太陽病解せず云云。按ずるに、本論に若し已に吐下発汗以下を以って、分かちて別章と為すは、伝写の誤りなり。今合わせ一章と為し、以って其の旧に復す。
法を以って之を治すとは、則ち症に随って之を治すなり。壊病の下に、宜しく
都て満し、脇下及び心痛む。又之を按ずるに気通ぜず、鼻乾きて汗を得られず。臥を嗜み、一身及び面目悉く黄、小便難、潮熱有り。時時エツし、耳の前後腫れ、之を刺すに小しく差え、外解せず。病十日を過ぎ、脈続いて浮の者は、小柴胡湯を与う。脈但浮にて餘證無き者は、麻黄湯を与う。若し尿せず、腹満しエツを加うる者は、治せず。」
○「本太陽病解せず、転じて少陽に入る者、」脇下コウ満し、乾嘔して食す能わず、往来寒熱す。「尚未だ吐下せず、」脈沈緊の者は、小柴胡湯を与う。若し已に吐下、発汗、温鍼して、譫

五十八頁裏 解説
標注       
                                     類聚方
併発=併せ明らかになる
『 陽明中風、脈弦浮大の章は、ザン入なり。』とありますが大塚敬節先生はザン入ではないとします。
温鍼=灸頭鍼のような鍼を温める治療法
香川修徳編・小刻傷寒論(1725年刊)では、『本太陽病解せず、転じて少陽に入る者、脇下コウ満し、乾嘔して食す能わず、往来寒熱す。「尚未だ吐下せず、脈沈緊の者は、小柴胡湯を与う。』『若し已に吐下、発汗、温鍼して、譫語すは、柴胡湯證罷む。此れを壊病と為す。犯すに何の逆を知り、法を以って之を治す。』は二章に分かれています。




五十九頁表
標注                                       類聚方
其の脈症を観るの四字を添えるべし。譫語の二字は衍なり。
傷寒、差えて已に後云云は、千金方も、差えて後、更に頭痛壮熱煩悶する者に作る。按ずるに、差えて已に後、更に発熱する者に、三有り。死灰の再燃せんと欲する者は、小柴胡湯を与うべし。其の熱新しく外感に因って発す者は、桂麻二湯を選び以って汗を発すべし。過食宿滞に因る者は、宜しく其の症を審らかにし枳実梔子大黄湯、大柴胡湯、調胃承気湯、大承気湯等を以って、之を下すべし。
語すは、柴胡湯證罷む。此れを壊病と為す。犯すに何の逆を知り、法を以って之を治す。
○嘔して発熱の者、
○「傷寒、」差えての已後、更に発熱する者は、小柴胡湯之を主る。「脈浮の者は、汗を以って之を解す。脈沈実の者は、下すを以って之を解す。」

○諸黄、腹痛して嘔する者、
○「問いて曰く、新産婦人に三病有り。一は痙を病み、二は鬱冒を病み、三は大便難し、何の謂なりや。師曰く、新産血虚にて多く汗出で、喜(しばしば)風に中るが、故に痙を病しむ。亡血し復汗し寒多きが、故に鬱冒せしむ。津液を亡し胃燥するが、故に大便難き。産婦の鬱

五十九頁表 解説
標注  
                                          類聚方
衍=はびこる、余分な、あまり 壊病=病気の進行状況がみだれたもの、複雑な病
犯すに何の逆=どのように間違いをしたか
法を以って=順序を間違わないように法則に従って
喜=しばしば、このみて



五十九頁裏
標注                                       類聚方
病解して能く食し以下、金匱は以って別章と為す。今脈経に従いて、合わせ一章と為す。
草蓐は、産牀を謂うなり。凡そ四肢苦煩熱、頭痛の者は、特だ産後の中風のみならず、男女の諸血症、久
冒は、其の脈微弱、嘔して食する能わず、大便反って堅く、但頭汗出ず。然る所以の者は、血虚して厥す。厥すれば必ず冒す。冒家は解さんと欲す。必ず大いに汗出ず。血虚は下り厥し、孤陽は上出すを以って、故に頭汗出ず。産婦喜(しばしば)汗出る所以の者は、陰を亡し血虚し、陽気独り盛んが、故に当に汗出で陰陽及ち復すべし。」大便堅く、嘔して食する能わずは、小柴胡湯之を主る。病解して能く食し、七八日更に発熱する者は、此れ胃実と為し、大承気湯之を主る。
○「婦人草ジョクに在り。自ずから発露し風を得る。」四肢苦しく煩熱し、頭痛の者は、


五十九頁裏 解説
標注
                                            類聚方
草蓐=お産をする
 産後には貧血によって血圧が下がり頭痛や目眩が起きることがある。煩熱を覚える時に使用する処方は地黄剤(十全大補湯・三物黄ゴン湯)や補中益気湯・人参湯にもみられる。
四肢苦煩熱=産褥熱のこと、ただしお産に限らず肺結核や労咳で失血し煩熱や頭痛が有る者であれば小柴胡湯が使えるとします。
  煩熱があり頭痛する熱=小柴胡湯
  煩熱があり頭痛しない熱=三物黄ゴン
  (判りにくい時には小柴胡湯に地黄を加え使った・大塚敬節)



六十頁表
標注                                       類聚方
咳、労サイ、及び諸失血の後、多く斯の症有り。宜しく二方を撰用すべし。三物黄ゴン湯標を参考すべし。


小柴胡湯を与う。頭痛まず、但煩す者は、三物黄ゴン湯之を主る。

柴胡加芒硝湯
小柴胡湯證にして、苦満し解し難き者を治す。
小柴胡湯法内に於いて、芒硝六両を加う。
柴胡 
八分 半夏 六分 人参 黄ゴン 甘草 生姜 大棗 各三分 芒硝 六分 右八味、水二合四勺を以って、七味を煮る。一合二勺を取り、滓を去り、再煎して六勺を取る。芒硝を内れ、更に火に上げ、消しせしめ服す。

六十頁表 解説
標注 
                                           類聚方
三物黄ゴン湯=地黄・黄ゴン・苦参(クララ)


六十頁裏
標注                                       類聚方
玉函、脈経は、併せ已にの字無し。按ずるに、柴胡證の下の、之を下すの二字も、衍に似る。先ず宜し以下十一字は、後人の註文なり。宜しく刪去すべし。葢し其の潮熱微利する所以の者は、所謂内実症にして、燥屎或いは臭穢の毒有る者なり。芒硝を加う所以なり。医人は宜しく病者に就きて之を験すべし。


此の方、其の小柴胡湯と異なるは、特だ嘔して渇するとのみ。宜しく小柴胡湯標と照らし運用すべし。
「傷寒、十三日解せず。」胸脇満して嘔し、日哺所潮熱を発し、已にして微しく利すは、此れ本柴胡證にして、之を下し利を得れず。今反って利する者は、知るに医の丸薬を以って之を下すは、其の治に非ざるなり。「潮熱する者は実なり。」先ず小柴胡湯に宜しく、以って「外」を解し、後に柴胡加芒硝湯を以って之を主る。
 為則按ずるに、小柴胡湯證にして、堅塊有る者、之を主る。


柴胡去半夏加括ロウ
小柴胡湯證にして、而して渇し、嘔せざる者を治す。

六十頁裏 解説
標注  
                                          類聚方
燥屎=長く腸内にある便
臭穢=臭く穢れた
日哺所=夕刻
潮熱=潮が満ちるように徐々に上がる熱
丸薬=巴豆剤
堅塊=触診でわかる腫瘍や癌に相当する疾患



芒硝
成分:天然芒硝は内陸塩湖で採集され熱湯で溶解されたものを再結晶させて生成します。上層部を芒硝、不純物のやや多い下層部のものを朴硝といい風化させたものを玄明粉と称します。瀉下効果は朴硝・芒硝・玄明粉の順に強いとされます。硫酸ナトリウムとされますが硫酸マグネシウムではないかとの説もあります。両者とも腸壁から水分を吸収し通便作用があります。また消炎作用もあります。

天然芒硝=馬牙消=含水硫酸ナトリウム


硫酸マグネシウム(局方品)

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