類聚方広義・第二木曜会  2010・10・14


小柴胡湯

五十四頁 表
標注                                       類聚方

玉函、千金、宋板、共に黄ごん三両に作る。今之に従う。
平日項背強急し、心胸痞塞、神思悒鬱、舒暢せざる者を治す。或いは大黄を加う。
項背強急し、心下痞塞、胸中冤熱、而して眼目牙歯疼痛、或いは口舌腫痛腐爛の者は、大黄を加えば、其の効速やかなり。



柴胡の諸方は、皆能く瘧を治す。要は当に胸脇苦満の症を以って目
葛根 半斤 一銭六分 甘草 二両 四分 黄連 三両 六分 黄ごん 二両 六分
右四味、水八升を以って、先ず葛根を煮て、二升を減じ、諸薬を内れ、煮て二升を取る。滓を去り、分温再服す。
水二合四勺を以って、煮て六勺を取る。
「太陽病、」桂枝の證、医反って之を下し、利遂に止まず、「脈促の者、表未だ解せざるなり。」喘して汗出する者、
為則按ずるに、当に項背強急、心悸の證有るべし。


小柴胡湯
胸脇苦満、往来寒熱、心下痞

↓                                               ↓

五十四頁 表 解説
標注                                            類聚方
悒鬱=(ゆううつ)うれえう・塞ぎこむ
冤熱=(えんねつ)わざわい・感染性の熱
   


五十四頁 裏

標注                                            類聚方
的と為すべし。
痘瘡、貫膿収靨の間、身熱あぶるが如く、胸満して嘔渇し、瘡瘍煩躁する者を治す。又収靨の後、余熱久しく解せず、前症の如き者は、亦此の方に宜し。
時毒、頭おん、傷寒発頤等、胸脇苦満、往来寒熱、咽乾口躁の者を治す。若し煩躁譫語す者は、芒硝石膏を選加す。

初生児、時々故無く発熱胸悸し、或いは吐乳する者を、変蒸熱と称す。此の方に宜し。大便秘す者は、加芒硝湯に宜し。或いは紫円を兼用す。
硬、而して嘔の者、
柴胡 半斤 
八分 黄ごん 人参 甘草 生姜 各三両 大棗 十二枚 各三分 半夏 半升 六分
右七味、水一斗二升を以って、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服す。日に三服す。
水二合四勺を以って、煮て一合二勺を取り、滓を去り、再煎して六勺を取る。
「後加減法、若し胸中煩して而して嘔せずば、半夏人参を去り、括ろう実一枚を加う。若し渇す者は、半夏を去り、人参を前に合わせ四両半と成し、括ろう根四両を加う。若し


五十四頁 裏 解説

標注                                            類聚方
    


五十五頁 表
標注                                            類聚方
傷寒愈えた後、唯耳中啾啾として安からず、或いは耳聾累月復さざる者は、此の方を長復すべし。


或いは胸中煩して嘔せず以下は、皆本方の兼治する所なり。加減法は、後人が為すなり。小青龍湯標已に之を詳しゅうす。

腹中痛む者は、黄ごんを去り、芍薬三両を加う。若し脇下痞硬せば、大棗を去り、牡蠣四両を加う。若し心下悸し、小便不利の者は、黄ごんを去り、茯苓四両を加う。若し渇せず、外に微熱有る者は、人参を去り、桂三両を加えて、温覆して微汗を取れば癒ゆ。若し咳する者は、人参大棗生姜を去り、五味子半升乾姜二両を加う。」 
「太陽病、十日以って去り、」脈浮細にして臥を嗜む者は、「外已に解するなり。設し胸満胸痛する者は、小柴胡湯を与う。脈但浮

五十五頁 表 解説
標注                                            類聚方



五十五頁 裏
標注                                            類聚方
傷寒、五六日云云の、此の章は小柴胡湯の正症なり。
黙は、モクに同じ。又墨と通ず。喩昌
者は、麻黄湯を与う。」
○「傷寒、五六日中風、」往来寒熱、胸脇苦満、黙黙として飲食を欲せず、心煩喜嘔す。或いは胸中煩して嘔せず。或いは渇す。或いは腹中痛む。或いは脇下痞硬。或いは心下悸し、小便不利す。或いは渇せず、身に微熱あり。或いは咳す者は、
○「血弱く気盡き、?理開き、邪気因って入り、正気と相搏ち、於けるに脇下に結び、生邪分争し、」往来寒熱、休作時に有り。黙黙として飲食を欲せず、「臓腑相連なり、其の痛み必ず下る。邪高く痛み下るが、故に嘔使むなり。」

○柴胡湯を服し已わり、

五十五頁 裏 解説
標注                                            類聚方




五十六頁 表
標注                                            類聚方
渇する者は、「陽明に属すなり。」法を以って之を治す。
病を得て六七日、脈遅浮弱にして悪風寒、手足温。医二三之を下すに、食す能わずして、脇下満痛し、面目及び身黄、頚項強ばり、小便難の者は、柴胡湯を与う。「後必ず下重し、本渇して水を飲み嘔する者は、柴胡湯を与うに中らざるなり。穀を食する者はエツす。」
○「傷寒、四五日、」身熱悪風し頚項強ばり、脇下満、手足温にして渇す者は、
○「傷寒陽脈渋、陰脈弦、法当に」腹中急痛すべき者は、先ず小建中湯を与え、差えざらん者は、小柴胡

五十六頁 表 解説
標注                                            類聚方
エツ=シャックリ



五十六頁 裏
標注                                       類聚方

湯を与え之を主る。
○「傷寒中風、」柴胡證有るに、但一證を見るに(見わすに)便ち是なり。必ず悉く具わらず、
○凡そ柴胡湯の病證にして、之を下す。若し柴胡證罷まざる者は、復柴胡湯を与えれば、必ず蒸蒸として振い、卻って発熱し汗出でて解す。
「太陽病、過経十餘日、反って」二三之を下し、後四五日、柴胡證仍ほ在る者、先ず小柴胡湯を与えるに、嘔止まず、心下急、鬱鬱として微煩の者、「未だ解せざると為すなり。」大柴胡湯を与え之を下せば則ち癒ゆ。
○「傷寒十三日解せず、」胸脇満して嘔、日哺所潮熱


五十六頁 裏 解説
標注                                            類聚方
是なり=肯定の意味
蒸蒸=ふかされたように、蒸されたように
鬱鬱=気が塞がること、熱気がこもる
日哺所=夕暮れ、午後4時頃


五十七頁表
標注                                       類聚方

を発し、已にして微しく利す。此れ本より柴胡の證、之を下して利を得られず。今反って利する者は、知るに医の丸薬を以って之を下すは、其の治に非ざるなり。「潮熱は実なり。」先ず宜しく小柴胡湯にすべし。以って「外を」解す。後柴胡加芒硝湯を以って之を主る。
○「婦人中風、七八日続いて得るに」寒熱を、発作時に有り。経水適断の者は、「此れ熱の血室に入ると為し、其の血必ず結ぶ。故に瘧状の如く、発作時に有らしむ。」
○「傷寒、五六日、」頭汗出で、微しく悪寒し、手足冷、心下満、口は食を欲せず、大便硬く、脈細の者、「此れ陽の微結と為す。


五十七頁 表 解説
標注                                            類聚方

丸薬=巴豆を使った丸薬 ※大黄は寒薬だが巴豆は熱薬
外=外症のことで胸を中心におこる症状
経水=生理
血室=子宮のこととされるが大塚敬節先生は肝臓に当てる
瘧状=ヒステリー状態


五十七頁裏
標注                                       類聚方

必ず表有り。復裏も有るなり。脈沈にして亦裏有るなり。汗出で陽の微と為す。仮令純陰結せば、復外證有るを得られず、悉く入りて裏に在り。此れ半ば裏に在り半ば外に在ると為すなり。脈沈緊と雖も、少陰病と為すを得ず。然る所以の者は、陰汗有るを得ず。今頭汗出ず、故に少陰に非ざるを知るなり。」小柴胡湯を与うべし。設し了了たらざる者は、屎を得て解す。
○「傷寒、五六日、」嘔して発熱する者は、柴胡湯證具わるに、而して他薬を以って之を下し、柴胡證仍ほ在る者は、復柴胡湯を与う。此れ已に之を下すと雖も、逆と為さず。必ず

五十七頁裏 解説
標注                                            類聚方
半ば裏に在り半ば外=半外半裏=?半表半裏
了了=すっきりとおわる、まとまる
屎=くそ
他薬=柴胡剤以外の


五十八頁表
標注                                       類聚方
蒸蒸と振い、卻って発熱汗出で解す。若し心下満してコウ痛す者は、「此れ結胸と為すなり。」大陥胸湯之を主る。但満して痛まざる者は、「此れ痞と為し、」柴胡之に与うに中らず。半夏瀉心湯に宜し。
○「陽明病、」潮熱を発し、大便溏、小便自ずから可、胸脇満して去らず者、
○「陽明病、」脇下コウ満し、大便せずして嘔し、舌上白苔の者は、小柴胡湯を与うべし。上焦通ずを得て、津液下るを得る。「胃気」因って和し、身シュウ然として汗出で解すなり。
○「陽明中風、脈弦浮大にして、短気し、腹

五十八頁表 解説
標注                                            類聚方
結胸=肋膜炎の症状か?
潮熱=次第に熱が上がる
溏=泥状の鳥の糞便のような
シュウ=水の流れるさま、集める、収める
短気=呼吸が息迫する


五十八頁裏
標注                                       類聚方
都て満し、脇下及び心痛む。又之を按ずるに気通ぜず、鼻乾きて汗を得られず。臥を嗜み、一身及び面目悉く黄、小便難、潮熱有り。時時エツし、耳の前後腫れ、之を刺すに小しく差え、外解せず。病十日を過ぎ、脈続いて浮の者は、小柴胡湯を与う。脈但浮にて餘證無き者は、麻黄湯を与う。若し尿せず、腹満しエツを加うる者は、治せず。」
○「本太陽病解せず、転じて少陽に入る者、」脇下コウ満し、乾嘔して食す能わず、往来寒熱す。「尚未だ吐下せず、」脈沈緊の者は、小柴胡湯を与う。若し已に吐下、発汗、温鍼して、譫

五十八頁裏 解説
標注                                            類聚方
温鍼=灸頭鍼のような鍼を温める治療法



五十九頁表
標注                                       類聚方
語すは、柴胡湯證罷む。此れを壊病と為す。犯すに何の逆を知り、法を以って之を治す。
○嘔して発熱の者、
○「傷寒、」差えての已後、更に発熱する者は、小柴胡湯之を主る。「脈浮の者は、汗を以って之を解す。脈沈実の者は、下すを以って之を解す。」

○諸黄、腹痛して嘔する者、
○「問いて曰く、新産婦人に三病有り。一は痙を病み、二は鬱冒を病み、三は大便難し、何の謂なりや。師曰く、新産血虚にて多く汗出で、喜(しばしば)風に中るが、故に痙を病しむ。亡血し復汗し寒多きが、故に鬱冒せしむ。津液を亡くし胃燥すが、故に大便難き。産婦の鬱

五十九頁表 解説
標注                                            類聚方
壊病=病気の進行状況がみだれたもの、複雑な病
犯すに何の逆=どのように間違いをしたか
法を以って=順序を間違わないように法則に従って



五十九頁裏
標注                                       類聚方
冒は、其の脈微弱、嘔して食する能わず、大便反って堅く、但頭汗出ず。然る所以の者は、血虚して厥す。厥すれば必ず冒す。冒家は解さんと欲す。必ず大いに汗出ず。血虚は下り厥し、孤陽は上出すを以って、故に頭汗出ず。産婦喜汗出る所以の者は、陰を亡し血虚し、陽気独り盛んが、故に当に汗出で陰陽及ち復すべし。」大便堅く、嘔して食する能わずは、小柴胡湯之を主る。病解して能く食し、七八日更に発熱する者は、此れ胃実と為し、大承気湯之を主る。
○「婦人草じょくに在り。自ずから発露し風を得る。」四肢苦しく煩熱し、頭痛の者は、

五十九頁裏 解説
標注                                            類聚方


六十頁表
標注                                       類聚方
小柴胡湯を与う。頭痛まず、但煩す者は、三物黄ごん湯之を主る。

柴胡加芒硝湯

六十頁表 解説
標注                                            類聚方


シュウについて(漢語大字典・三巻より引用)


五十八頁裏・「耳の前後腫れ」の部分は胆経の経路部分に当ると考えられます。


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