類聚方広義・第二木曜会  2009・9・10


チン五苓散  猪苓湯  猪苓散

三十六頁前半

小児の、陰頭水腫、及び陰嚢赤腫、而して小便短渋する者に、奇効有り。 之を救う。渇す者は、
○「霍乱し、」頭痛発熱し、身疼痛、熱多く水を飲まんと欲す者は、五苓散之を主る。寒多く水を用いざる者は、「理中」丸之を主る。
○「仮令痩人、」臍下に悸有りて、涎沫を吐し而して癲眩すは、此れ水なり、




チン五苓散
五苓散證にして、而して発黄する者を治す。
チンコウ末 十分 
五銭 五苓散 五分 二銭五分
右二物を和し、「食に先し、」方寸匕を飲む。白湯を以って一銭を送る。日に三服す。「黄疸」病は、

↓                                               ↓

三十六頁前半解説
標註                                            類聚方
茵チンコウ=カワラヨモギ

三十六頁後半

標註                                       類聚方


淋疾にて熱痛して通ぜず、陰頭腫れ痛み、小腹膨脹して、痛みを為す者を治す。若し茎中痛みて、膿血出る者は、滑石礬甘散を兼用す。
妊婦、七八月已後、牝戸キン熱し腫れ痛み、臥起能わず、小便淋瀝する者有るは、三稜針にて、軽軽腫れ處を刺し、淤水を放出し、而して後に此の方を用いば、腫れ痛みは立ちどころに消え、小便快利す。若し一身悉く腫れ、前症を発する者には、越婢加朮湯に宜し。
陽明病、脈浮而して緊云云、
為則按ずるに、当に小便不利、或いは渇の證有るべし。

猪苓湯
小便不利、或いは淋瀝し、渇して水を飲まんと欲す者を治す。
猪苓 茯苓 阿膠 滑石 沢瀉
 各一両 六分
右五味、水四升を以って、先ず四味を煮て、二升を取り滓を去り、阿膠を内下して、かし消し盡くし、七合を服す。水一合二勺を以って、四味を煮て、六勺を取り、阿膠を内れ、消せしめ服す。日に三服す。
「陽明病、」脈浮にして緊、咽燥ぎ口苦く、腹満して喘し、発熱汗出で、悪寒せず、反って発熱し、身重し。若し発汗すれば則ち躁し、

↓                                               ↓
三十六頁後半解説
標註                                            類聚方
淋疾=小便が気持ちよく出ない病気
滑石礬甘散=滑石6 礬石(明礬)6 甘草3 の割合で粉末にして合わせる
牝戸=女性器
三稜針=三つの角を持つメス状の鍼
淤水=滞った膿汁や不活性な血液
阿膠=ニカワ
滑石
 軟滑石=含水ケイ酸アルミニウム(加水ハロサイト)
 硬滑石=天然ケイ酸マグネシウム(タルク)

 三十七頁前半
標註                                       類聚方

説は梔子湯標に詳し。





陽明病、汗出多云云は、白虎加人参湯症なり。
少陰病、下利云云は、人の或いはと疑うを以って(疑いて)、猪皮湯の誤りと為せるは、此れ皆文に就きて説と為す者のみ。諸
カイカイとして、反って譫語す。若し焼鍼を加えれば、必ずジュツタし、煩躁して眠るを得られず、若し之を下せば、則ち胃中空虚にて、客気隔を動かし、心中懊ノウして、舌上胎の者は、梔子湯之を主る。若し渇して水を飲まんと欲し、口乾き舌燥する者は、白虎加人参湯之を主る。若し脈浮にして発熱し、渇して水を飲まんと欲し、小便不利する者は、猪苓湯之を主る。
○「陽明病、汗出ること多く、而して渇す者に、猪苓湯を与うべからず。汗多く胃中燥し、猪苓湯復其の小便を利するを以っての故なり。」
○「少陰病、」下利六七日、ガイして嘔渇し、心煩し
↓                                               ↓
三十七頁前半解説
標註                                            類聚方
カイカイ=心がみだれること
ジュツタ=恐れて不安なこと
ノウ(懊悩)=なやみもだえる
梔子湯=山梔子・香(納豆)

 三十七頁後半
標註                                       類聚方

事実を施し、以って其の効を知れば、則ち又奚んぞ(いずく)疑いを容れんや。 眠るを得られず者、
為則按ずるに、当に便膿血の證有るべし。

猪苓散
渇して心下悸し、小便不利する者を治す。
猪苓 茯苓 朮 各等分。
右三味、杵きて散と為し、方寸匕を飲服す。
白湯を以って一銭を服す。日に三服す。
嘔吐して「病隔上に在り」、後に水を思う者は解す。急いで之を与う。水を思う者は、
↓                                               ↓
三十七頁後半解説
標註                                            類聚方


茵チンコウ


●キク科 カワラヨモギ

日本では花の蕾を用いますが、中国では冬に芽生えた幼葉(綿茵チン)を用います。又中国ではハマヨモギやオトコヨモギの幼葉も綿茵チンとして用いています。

効能=利胆作用・肝障害改善・抗炎症作用・解熱、利尿、抗真菌作用など

カワラヨモギの宿根部
★茵チンコウ
コウはヨモギの種類を指します。茵チンコウとは古くから続いている、多くの子孫に伝承された(因った)ヨモギという意味。
カワラヨモギは地上部は1年で枯れますが根は宿根として何年も残り続けます。その特性から名づけられました。

阿膠

山東阿膠
●阿膠

ウマ科 ロバの皮を煮て膠にしたものを言う。特に山東省で造られる山東阿膠は有名で元気をつけて血を養い、止血作用があることで有名です。日本では牛などの皮や骨から精製するゼラチンを阿膠として用います。

滑石

滑石 (手前=軟滑石 右奥=硬滑石)
●滑石

市場には軟滑石と硬滑石とが出回っています。軟滑石は含水ケイ酸アルミニウムからなる粘土鉱物で簡単に白粉となる加水ハロサイトのこと、硬滑石は含水ケイ酸マグネシウムのことでタルク(画け石)とされています。漢方では利水・通淋・清熱の作用があると言われています。膀胱炎や下利に内服され湿疹や皮膚潰瘍に用いられます。

ホーム