類聚方広義・第二木曜会  2009・7・9

●三十四頁後半の五苓散から読みました。

五苓散

三十四頁後半
標註                                       類聚方
霍乱吐下の後、厥冷煩躁し、渇飲止まず、而して水薬共に吐す者有り。厳に湯水果物を禁じ、水を飲む毎に、五苓散を与う。但一貼を二三次服するを佳と為す。三貼二過ぎずして、嘔吐煩渇は必ず止む。吐渇共に止まば、則ち必ず厥復して熱発し、身体惰痛すも、仍ほ五苓散を用えば、則ちチュウチュウと汗出で、諸症脱然として愈ゆ。是れ五苓散と、小半夏湯の別なり。方極文と併せ考えるべし。
○此の方は眼患を治す。苓桂朮甘湯と、略似て、而して彼は心下悸、心下逆満、胸脇支満、上衝などの症を以って、目的と為し、此れは発熱消渇、目に
五苓散
消渇、小便不利、或いは渇して水を飲まんと欲し、水入れば則(そく)吐す者を治す。
沢瀉 一両六銖半
 二銭五分四厘 猪苓 茯苓 朮 各十八銖 一銭五分 桂枝 半両 一銭
右五味、末と為し、白飲を以って和し、方寸匕を服す。日に三服す。多く煖水を飲みて、汗出れば愈ゆ。白湯を以って一銭を服す。
「太陽病、発汗の後、大いに汗出で、胃中乾き、煩躁して眠るを得られず、水を飲まんと欲する者は、少少与えて之を飲ませ、胃気を和せしめれば則ち

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三十四頁後半解説
標註                                            類聚方
霍乱=暑気にあたり急に下利をする病気
一貼=一袋に入った一日分の薬
チュウチュウ=シュウシュウ?=止め処なく汗の出る様
涙=目やに
白飲は大塚敬節先生の説によると「おもゆ」のことで米を煮た汁とありますが、本文にある尾台先生注釈文の白湯は「さゆ」で暖かい湯の意味です。

 三十五頁前半
標註                                       類聚方

涙多く、小便不利を、目的と為す。二方倶に小便の利を以って、其の効と為すなり。応鐘散、紫円等を兼用す。
○脈浮、小便不利云々は、按ずるに、微熱消渇する者の下に、金匱には、宜しく小便を利し汗を発すべしの、六字有り。
○発汗已わり、脈浮数の下に、発熱小便不利等の證脱するに似る。
○傷寒汗出での條、説は茯苓甘草湯標に詳し。
○病陽に在り、当に汗を以って解すべし云々、是れソン灌劫激にして、以って変症を生ずなり。猶傷寒脈浮、自汗出で、小便数、心煩し微悪寒し、脚攣急する者に、誤りて桂枝湯を用い、種々の転変に致るがごときなり。今世の賎隷無知
愈ゆ。」若し脈浮、小便不利し、微熱消渇する者は、
○発汗已わり、脈浮数、煩渇する者は、
○「傷寒、」汗出で而して渇する者は、五苓散之を主る。渇せざる者は、茯苓甘草湯之を主る。
○「中風、」発熱六七日、而して煩解せず。表裏證有りて、渇し水を飲まんと欲す。水入れば則(そく)吐く者は、「名して水逆と曰う。」
○「病陽に在り、汗を以って之を解す、」反って冷水を以って之にソンし、若しくは之に潅(かん)し、其の熱は劫を被り、去るを得られず、彌(いよいよ)更に益すに煩す。肉上粟起、意(おも)うに水を飲まんと欲し、反って渇せざる者は、文蛤散を服す。若し癒えざる者は、五苓散を与う。
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三十五頁前半解説
標註                                            類聚方
応鐘散=川キュウ6:大黄3
転変=病気が進行すること
賎隷=召使、浅学の人(ここでは若輩者や医者を指すか!)
潅(かん)=頭から水をかぶること
劫を被り=おびやかされて
肉上粟起=鳥肌
文蛤=はまぐり
文蛤散=ハマグリ一味の処方

三十五頁後半

の徒、其の身已に邪熱有るに方(あた)っても、以って意と為さず、或いは雷雨を冒して而して途(みち)に上り、或いは水に入って遊泳して冷を取り、以って若の症に至る者、夏秋の間に、間(間々)亦之有りて、病情正に同じ。宜しく文蛤湯を以って、連進発汗すべし。本論に文蛤散と為すは、錯誤のみ。ソンソンに同じ。説問にに云うに、水を含んで噴すなり。灌漑なり。玉函に、彌更、須臾に作る。是なり。又按ずるに、寒実以下、意義は上文と相属さず、疑うに別章錯乱し、此こに入るなり。説は小陥胸湯標に見ゆる。
○渇し而して口躁煩を、当に渇し而して煩躁に作るべし。
「寒実結胸、」熱證無き者は、三物小陥胸湯を与う。白散も亦服すべし。
○本之を下すを以って、故に心下痞す。瀉心湯を以って、痞解せず、其の人渇して口煩躁、小便不利する者は、
○「太陽病、寸緩関浮尺弱、其の人発熱汗出で復悪寒し、嘔せず、但心下痞す者は、此れ医の之を下すを以ってなり。如(もし)其の下らざれば、病人悪寒せずして渇す者は、此れ陽明に転属するなり。」小便数の者は、大便必ずしく、更衣せざるに十日、苦しむ所無きなり。渇して水を飲まんと欲せば、少少之を与う。但法を以って

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三十五頁後半解説
標註                                            類聚方
途=路=道
文蛤散=ハマグリ一味の処方
文蛤湯=文蛤・麻黄・甘草・生姜・石膏・杏仁・大棗(大青龍湯の変方)
白散=桔梗白薬
瀉心湯=半夏瀉心湯と三黄瀉心湯の説有り(渇する場合は五苓散だが渇しない時に瀉心湯)
更衣=排便


三十六頁前半

小児の、陰頭水腫、及び陰嚢赤腫、而して小便短渋する者に、奇効有り。 之を救う。渇す者は、
○「霍乱し、」頭痛発熱し、身疼痛、熱多く水を飲まんと欲す者は、五苓散之を主る。寒多く水を用いざる者は、「理中」丸之を主る。
○「仮令痩人、」臍下に悸有りて、涎沫を吐し而して癲眩すは、此れ水なり、




茵チン五苓散
五苓散證にして、而して発黄する者を治す。
茵チンコウ末 十分 
五銭 五苓散 五分 二銭五分
右二物を和し、「食に先し、」方寸匕を飲む。白湯を以って一銭を送る。日に三服す。「黄疸」病は、

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三十六頁前半解説
標註                                            類聚方
陰頭=男性器先端だけか?
陰嚢=袋状の部分
小便短渋=すっきり小便が出ない
涎沫=泡の混じったよだれ

猪苓
○サルノコシカケ科 チョレイマイタケの乾燥した菌核。チョレイマイタケは山林中のブナ、ミズナラ、カエデ、クヌギなどの腐食した根に寄生するキノコで地上部は食べる事が出来ます。半地下の菌核を薬用とします。形がイノシシの糞に似ている事から猪苓と名づけられました。
作用は利尿作用・抗菌作用・抗腫瘍作用が認められています。清熱作用も若干有るため炎症をともなう浮腫に用いられます。

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